ダンジョン
ダンジョンに行きます
まだ序盤です
昼食を食べた後で冒険者ギルドに行き、ダンジョンでこなせる冒険者依頼を受けた。今回はメインの依頼2つの他に、ついでに出来そうな軽い依頼3つを受けておく。
ガーゴイルの心核と魔石も売却した。
ギルドを出て、少し買い物をして時間を調整した後、防具工房に行って防具を受け取った。
その後は再び買い物に行き、保存食などをたっぷり買い込む。
家に帰ってからは、ローズとレスリーに、魔道具作成、ポーション作成の練習をさせた。しばらく、他の魔法の練習ばかりさせていたが、魔力操作と感知の練習をさせたことは、プラスになったようで、かなり腕が上がっていた。難易度の高い魔道具やポーションに挑戦出来そうだ。
アベリアには、キュアーの魔法を覚えさせ、練習させた。子供が二人いるので、急に病気になった時、役に立つだろう。
ダンジョンに持っていく荷物を確認した後、風呂に入り、夕食を食べて寝た。
翌朝。
少し肌寒い中、外に出て軽い運動をする。10月も後半なので、今日のように曇って風がある日には、肌寒い。
朝食の後、荷物を馬車に積み込んだ。アベリアは今回は留守番だ。
北門を出て少し北に進んだ後、西に折れた道をたどる。遺跡への道と同様、管理された道ではないが、こちらの方が人通りが多い。途中2組の、徒歩の冒険者パーティーを追い越した。轍の跡も多く、道幅もやや広かったが、場所によってはやや荒れた道だ。
北門からしばらく続く草地を進み、小さめの森を通り抜けた後は、まばらな林の中の緩い上り坂を登った。坂を登り切ると、短い下り坂の先に、小さな集落があり、その奥の岩肌に洞窟が口を開いていた。北門から2時間ほどの距離だ。
集落と言っても、農民などの住居はない。宿屋や商店、酒場などだ。洞窟入り口の近くには、冒険者ギルドの出張所もある。つまり、すべてが、冒険者相手のサービスを提供する事業者の建物だった。
ギルド出張所の裏手には、柵に囲まれた広いスペースがあり、馬小屋が建っていた。ダンジョンに入っている間、冒険者の馬車などを預かってくれる施設だ。ここに馬車を預け、荷物を背負って出張所入り口に向かう。
ギルド出張所に探索予定を提出しておく。予定の提出は任意だが、提出しておくと、事故などで帰還困難になった時に、ギルドから捜索隊が派遣されるそうだ。たいていの冒険者は提出するらしい。
さあ、いよいよダンジョンだ。ちょっと楽しみでどきどきしている。
入り口から短いスロープを下り、最初の広間に出ると、その先は真っ暗だった。いや、よく見ると、天井などにかすかな光が見える。光っているのは魔石だそうだ。
たいていのダンジョンでは、壁や床や天井に自然に育つ魔石の光が、唯一の光源になる。しかし、入り口付近では、初心者冒険者が、小さな魔石まで採集してしまうため、真っ暗になるらしい。奥に行っても、明るく光る大きな魔石は採集されるため、ダンジョンの中は基本的に暗いそうだ。
魔法で明かりを作って奥に進んだ。強い光源1つより、弱い光源を複数作った方が、眩しくなくて見やすいだろうと思ったので、6個の光源で周囲を照らした。
ダリルが地図を持って先頭に立った。このダンジョンは、35層まで地図が作られているそうだ。
しばらく進むと、前方に小動物が居る。
「ジャイアントラットだな。」ダリルが言う。
「雑魚だにゃ。」と猫耳戦士。
犬かと思ったらネズミだったのか。
ジャイアントラットは、こちらに向かって来たが、小さな水球を「ペシッ」と鼻面に当てると「チューッ」と鳴いて、逃げていった。
さらに進むと、2層に降りる階段に着いてしまった。1層は狭くてネズミ一匹しかいなかった。
2層も暗かったが、少し魔石の光が増えたようだ。
しばらく進むと、コウモリが現れた。
「バンパイアバットだな。」
「雑魚だにゃ。」
見た目が雑魚っぽいと思ったが、やはり雑魚か。
小さな水球を「ペシッ」と鼻面に当てると「キューッ」と鳴いて、逃げていった。
その後コウモリ1匹、ネズミ1匹が現れたが、鼻面に水を当てて追い払った。まもなく階段に付いたので3層に降りた。
3層に降りるとすぐに、緑色のプヨプヨした物が居た。
「グリーンスライムだな。」
「雑魚だにゃ。」
「ほう。これがスライムか。」
近寄ってよく見ようとすると、触手のような物を伸ばしてきたので、避けた。
「なるほど。こうやって攻撃してくるのか。」
さらに近寄り、しゃがんで指先で突いてみる。
「あ。触ると火傷するにゃ。」
そう言われてみれば、指先がひりひりする。酸かな?指先を水で洗う。少し赤くなっているようだ。大したことはないな、と思っていたら、ローズがヒールを掛けてきた。
「レディク様。知らない物に触っちゃダメですー。毒があったら、どうするんですか。」レスリーに怒られた。確かに、そう言われて見れば、危ないか。
しかし、この体はどういう仕組みになっているのだろう。石をのせたらどうなるかな?小さめの石をいくつも拾って、スライムの上に並べてみる。時々触手攻撃をしてくるが、簡単に避けられるので、気にしない。石は、振り落とされた物もあるが、スライムの中に、入り込んでしまった物もあった。入っても最後には、出てくるようだが。
水も掛けてみた。水は吸収するようだ。さらに水を掛ける。おや、少し大きくなったかな。どんどん、水を掛けると、どんどん大きくなる。面白い。しかし、3倍くらいまで膨らんだ後で、ドロッと溶けて流れてしまった。
「水を掛けすぎると、溶けちゃうのか。」
「そんなことする人、居ないにゃ。」猫耳戦士があきれている。
先に進むと、今度は骨が居た。
「スケルトンだな。」
「雑魚だにゃ。」
「ほう。これがスケルトンか。」観察しようとする。
「時間がもったいないから、さっさと行くにゃ。」猫耳戦士が、鞘ごと剣を振り回して、バラバラにしてしまった。
少し進むと、向こうの方から二人連れの冒険者が走ってくる。手を振っているようだ。手を振り返してみた。
「た・・たっ・・」何かしゃべろうとしているが、要領を得ない。それに、なんだかうるさくて聞き取りづらい。と思ったら、二人の背後にネズミが2匹と、コウモリが2匹、じゃれついていた。キーキー、チューチューとうるさいので追い払った。
「あ・・あり・・」二人連れは、息を切らして座り込んでしまった。
「運動不足だな。」引っかかれたらしく、軽い怪我をしていたので、ヒールを掛けて先に進んだ。
「今の冒険者、もしかして、コウモリとネズミから逃げていたのかな?」ヒューの意見を聞いてみる。
「木の棒しか持っていなかったです。興味本位でダンジョンに潜った、素人冒険者なら、コウモリ一匹でも手に余るかも知れません。」
「木の棒でも、殴って追い払えるだろう。」
「明かりも持っていませんでした。暗い中でコウモリを殴るのは、けっこう難しいものです。」
「もしかして、やったことがあるのか?」
「ええ。まあ・・初めてダンジョンに入ってみた時に。」ヒューが苦笑いしていた。
少し進むと階段があり、4層に降りた。しばらく進むと、アリがいた。体長が1メートル近くあり、噛みつかれたら痛そうだ。
「ジャイアントアントだな。」
「雑魚だにゃ。」
軽く水を当てる程度では逃げていかなかった。氷を当てようかと思ったが、その前にダリルが頭を切り落としていた。しかし、斧を振るった後、ダリルが固まったように動かなくなった。
「良い切れ味だ。」数秒固まった後に、満足げに言った。余韻に浸っていたらしい。
「次は私がやるにゃ。」猫耳戦士もそろそろ、新しい武器を試したいようだ。
その後しばらくの間、アリと、5層に降りてからはサソリも、二人で交互に攻撃し、武器の使い心地をためしていた。虫型モンスターはほどよい硬さがあって、試し切りによいのだそうだ。
5層にはゴーレムも居た。遺跡のゴーレムに比べてずいぶん小さかったが、大柄な人間くらいの大きさはある。
「マッドゴーレムだな。」
「雑魚だにゃ。」
「こいつは切らないのか?」一応聞いてみた。
「土だから刃が痛む。それに刃物など必要ない。」
ダリルがゴーレムの足を蹴ると、ゴーレムはあっさり倒れて壊れてしまった。倒れたゴーレムの中から、ダリルが魔石を掘り出して見せた。2センチもない、小さな魔石だ。それでも、このあたりの階層で取れる魔石の中では大きいので、下級冒険者はもっぱら、5層付近でゴーレムの魔石を集めて稼いでいるらしい。そういえば、5層に入ってから、少し冒険者が多いような気がする。
6層でも冒険者を何組か見かけた。ゴーレムは刈り尽くされているらしく、見かけなかった。
7層ではふらふら歩いている人がいると思ったら、モンスターだった。
「グールだな。」
「臭いから逃げるにゃ。」
足が遅くて臭いグールとは、誰も戦わないらしい。
8層には目新しいモンスターが居なかった。足早に通り過ぎた。9層に入ると、冒険者の装備が目に見えて変わった。棒しか持っていない冒険者は見かけなくなり、ほとんどの冒険者が防具も身につけている。このあたりまで来ると、危険度が高くなるので、初心者冒険者は近づかないらしい。
9層を進み続けると、オオカミが居た。地上で見かけたオオカミより小さいが。外見はよく似ている。
「ダンジョンウルフだな。」
「ごはんだにゃ。」
やっぱり美味しいらしい。そろそろ昼ご飯時か。
猫耳戦士が首を切り落としたオオカミを持って、10層への階段付近へ移動し、昼食にした。トーチの火であぶり焼きしたオオカミ肉と、持参した保存食を食べた。
10層からは、ダンジョンの様子が大きく変わった。9層までは、大きい広間がいくつかあって、その間を短いトンネルがつないでいるだけだった。10層からは、数メートルから十数メートルの広さの小部屋がたくさんあり、小部屋の間をつなぐ通路も、長く折れ曲がっていることがあった。地図がなければ迷いそうな構造だ。
一部の小部屋では、天井が非常に高く、誰にも回収されない魔石が、明るい光を放っていた。奇妙な植物が生えていたり、池があったりもした。
魔法で遠隔攻撃をしてくるモンスターも現れた。遠くの方から石を飛ばしてくる。当たっても大したことは無さそうだが、氷の盾で防ぐ。
「インプだな。」
「鬱陶しい雑魚だにゃ。」
インプは、剣で攻撃しようとすると、逃げ回り、遠くから攻撃を繰り返すらしい。それは確かに鬱陶しい。氷の矢尻で殺そうとして、思いとどまる。ローズに魔法攻撃で撃ち落とさせる。手頃な練習台なので、インプを見つけ次第、攻撃するように指示した。
10層からは、折れ曲がったコースを通るので、通り抜けるにも余分に時間がかかった。インプを撃ち落とすほか、オオカミも予備の食料として少し狩りながら進んだ。11層も10層と変わりなかった。
12層に入ると、またスケルトンが現れたが、今度は武器を持っていた。
「スケルトンウォリアーだな。」
「雑魚だにゃ。」
上層のスケルトンより、動きが少し速いし、武器を持っているが、やはり雑魚らしい。ダリルが斧の側面で殴ると、崩れ落ちた。脆いが固いので、刃の部分で攻撃すると、刃が痛むそうだ。
氷の棍棒に木製の柄を付けた武器をレスリーに渡し、スケルトンウォリアーと戦わせてみた。レスリーはいとも簡単に、骨を叩きつぶした。少し弱すぎるか。などと考えていたら、猫耳戦士が驚いている。
「レスリーのスピードとパワーが、いつの間にかものすごく上がってるにゃ。」
「ああ。少し特訓したからな。」
「どんな特訓にゃ?」猫耳戦士が真剣な表情で食いついてくる。
「魔法だろう。『少し特訓』程度で、こんなに身体能力が上がるわけがない。」ダリルは冷静だ。
あまり練習台にはならないようなので、スケルトンウォリアーが向かって来たら、氷の固まりではじき飛ばすことにした。武器は売れるというので回収する。オオカミは4匹狩り、これ以上はいらないと思ったので、寄ってきたら鼻面に水球をぶつけて追い払うことにした。




