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強化魔法

強化魔法を習得します

意外な効果が

 昼過ぎからは、ローズ、レスリー、アベリアに、魔道具作成、ポーション作成、回復魔法の練習をさせながら、強化魔法の研究をする。強化魔法の魔術構築式はだいたい分かった気がするのだが、発動のイメージが今ひとつうまくつかめなくて悩んでいると、ヒューが怪我をした。ヒューは毎日怪我をして、回復魔法の練習台になってくれるので便利だ。

 慎重にヒールを掛け、発動のイメージを頭に刻み込む。次に、イメージが新鮮なうちに、自分自身に強化魔法を掛けてみる。発動したようだ。しかし、特に変化がないような気がする。気分は良くも悪くもない。力が湧いて来るような感じはないし、体が光ったりもしない。まあ、光っても困るけど。

 しかし、魔法は今も発動中のはずだ。魔力もわずかながら、消費し続けている。肉体は強化されているのだろうか。強化されているとして、何が、どのくらい?効果が判定出来なくて困る、という事態は予想していなかった。

 とりあえず、力が強くなっていると仮定して、調べてみることにする。鉄棒を作り、鉄棒の両端に氷の固まりを付けた。重量挙げのバーベルのような物だ。氷の固まりの大きさを変えて、『強化魔法(仮)』が発動している状態で、ぎりぎり持ち上げられる重量にする。次に『強化魔法(仮)』の発動をやめ、氷バーベルが持ち上げられるかどうかを確認する。持ち上がらない。確かに力が強くなっている。

 どのくらい力が強くなっているか、調べたいが、秤がないと難しいか。あ、ジャンプ力なら、比較は簡単かもしれない。

 立ち幅跳びをする。数回跳んで、おおよその平均距離に印を付けておく、メジャーもないので正確に計ることは出来ないが、今はこのくらいで十分だろう。次に『強化魔法』を発動して跳ぶ。やはり飛距離が伸びている。3回跳んでから、距離を比較する。目分量だが、2割くらい飛距離が伸びているようだ。氷の重さを推測するよりは、比較しやすい。

 2割というのは、微妙な数字だな。初めはそう思った。しかし、戦闘中に敵の身体能力が、いきなり2割上がることを想像してみて、考えを変える。結構すごい効果かも知れない。それに、たぶん、この数字はまだ、上限じゃない。

 さらに数回『強化魔法』の発動・解除を繰り返し、魔力操作に慣れたところで、強化に使用する魔力の量を上げる。ジャンプ力を比較してみる。飛距離の伸びが3割くらいになった。もっと上げてみよう。さらに魔力量を増やし、飛距離が4割ほど伸びたことを確認し、さらに魔力量を増やす。

 飛距離が5割程伸びたところで、体に違和感を感じた。これは、骨や筋肉の痛みか?はっきり分からないが、力やスピードの増加に、強度が追いつかなくなっている感じか?体がアンバランスな状態になっているのかも知れない。強化を解いて、ヒールを掛けた。

 力の強化は3割くらいを上限に、して置いた方が良さそうだ。そもそも、私が強化に関心を持った目的は、防御力アップだ。力を強くしたかったわけではない。体の強度だけを、上げることは出来ないだろうか?再び『強化魔法』の発動・解除を繰り返し、強度だけを上げる方法を検討する。どうやら無理そうだ。『強化魔法』の魔術構築式の、発動の仕組みもよく分かっていない。

 強度だけを強化するのは無理そうなので、体の表面だけを強化する方法を検討してみた。やってみると、体の表面だけに『強化魔法』を掛けるのは、特に問題無さそうだった、表面だけなら強めの強化でも、すぐに違和感を感じることはない、さすがに魔力を注ぎすぎると、皮膚が硬くなるのか、動きにくくなるので、何度か繰り返し、違和感を感じないレベルの魔力量を感覚的に覚える。さらに、体全体の強化と同時に、表面だけ強めに強化する練習をした。魔法を発動した状態で、体を動かし、特に違和感がないことを確認する。

 魔法の発動はうまく行った気がするが、防御アップの効果を判定する方法を思いつかない。試しに立木を殴ってみた感じでは、あまり痛くないし、効果は出ていると思うので、しばらくは魔法の発動の練習だけを繰り返すことにする。


 ローズ、レスリー、アベリアが、ドアの中からこちらの様子を窺っている。そういえば、練習をさせている途中だった。

 いきなり外に出て、重量挙げを始めたり、立ち幅跳びをしたり、立木を殴ったり。かなり怪しい振る舞いだったかも知れない。

 「魔法の実験?」ローズが聞いてくる。

 「ああ。新しい魔法の練習と実験だ。効果がわかりにくい魔法でね。」

 「力やジャンプ力が上がる魔法なんですねー。レディク様3-4メートル跳んでいました。すごいですー。」レスリーにとっては、全然わかりにくくなかったようだ。


 「おなかがすいたにゃー。」玄関先で話しているところに、猫耳戦士とダリルが帰ってきた。ご飯も食べずに今まで話を続けていたのか。


 一緒に食堂に移動して、2人は食事を始め、我々もお茶を飲んで休憩する。猫耳戦士は今日も幸せそうだ。


 ダリルの食事がおおよそ終わった頃に、馬車について相談した。新しく1台作ってみようと思っていること、おおよそどんな構造にするか。相談しながら紙に絵を描いて、細かい部分も決めていく。構造を決めた後で、氷で模型を作る。使いにくかったり、無理があったりしないか、検討し、何度か修正した。

 設計が固まったところで、ベアリングを試作してみる。だいたいの構造は知っていたが、作ってみるとやはりうまくいかないもので、3回失敗した。4回目に使えそうな物が出来たので、フレームに車輪を取り付けて動作テストした。フレームは鉄パイプ製。車輪は一見木製だが、内部に一部ゴムを使っている。フレーム側にも板バネのサスペンションを取り付けた。動かしてみて、不具合がないかどうか確認する。見たところ問題無さそうだ。

 フレームの上に床板を張り、座席を取り付け、側板も取り付けた。馬車としての体裁が整ったところで、日が暮れてきたので、仕上げは翌日にする。


 夕食時に、明日の夜から2-3日出かけて、魔法の練習をしたい、と話した。魔人と戦った時に、魔人に比べて飛ぶのが下手だと感じたので、少し時間を掛けて練習したかった。町の近くでは練習出来ないので、遠出をする必要がある。空を飛ぶ練習以外に、町の近くでは使いにくい魔法の練習もしたかった。遺跡の近くの休憩所に行くつもりだ。

 ローズ、レスリー、クロエ、ヒューが一緒に行くと言い出す。初めは全部断ろうと思ったが、ローズとレスリーにはダンジョンに挑戦する前に、魔法の練習をさせた方が良いかと思いつき、二人は連れて行くことにする。移動時間短縮のために、空を飛んで行くつもりなので、大勢は無理だと言って、クロエとヒューは断った。夜に出発するのも、目立たないように空を飛ぶためだ。持っていく荷物も最小限に抑え、食料はある程度、現地調達するつもりであることも説明する。

 しかし、クロエが食料を持って、先に馬車で出発すると言う。そうすれば、現地での食料調達に、時間を取られなくなるので、練習時間も多く取れるはず、と主張する。確かに一理ある主張だし、断る理由もないので、同意した。

 装備が整ったら、ダンジョンに行くつもりなので、ダリルと猫耳戦士には、依頼情報を調べておくなど、準備をお願いした。

 夕食後のデザートに、アイスクリームを出した。皆驚いていた。

 「恐ろしい魔法だにゃ。ヤリチン魔王は、この魔法で世界中の女を餌付けして、手込めにするつもりに違いないにゃ。」猫耳戦士がパクパクアイスクリームを食べ、さらにもっと欲しそうな顔でこちらを見ている。餌付けされる気満々なのか?

 子供もいることだし、慣れないものを大量に食べさせて、おなかを壊してもいけないので、量は控えめにして置いた。


 夜の運動中に、少しだけ自分に強化魔法を掛けてみたが、特に目立った効果は感じられなかった。ところが、そう思っていたのは、私だけだった。

 「今夜のレディク様、すごかったです。」アベリアはぐったりしているが、満足そうだ。

 「レディク様。・・今日実験した魔法・・使ってた。・・すごい・・魔法。」ローズは息も絶え絶えな様子だが、うれしそうだ。

 「こんなにいやらしい魔法だなんて、気がつかなかったですー。」レスリーには、いやらしい魔法認定されてしまった。


 翌日は朝から、馬車の仕上げをした。鉄とプラスチックで、幌のフレームを作り、上から幌をかぶせる。幌の素材は化学繊維だが、普通の布によく似た質感だ。幌の下には空気を入れたプラスチックフィルムを入れ、雨漏りを防ぐと同時に、断熱性を高めている。その下にはさらに、布の幌を張った。

 座席には、取り外し可能なクッションを作って取り付ける。馬に取り付ける引き具は、構造を調べていなかったので、今使っている物を参考に作った。

 ぐるっと周囲を回って、出来上がりを見る。特におかしな場所は無さそうだ。馬をつないで、周囲を走らせてみた。すごく乗り心地がいい。動きもなめらかだ。

 しばらく皆に使ってもらい、問題がないか確認してもらうように話した。


 新しい馬車が出来たので、痛んでいる馬車の修理に取りかかることにする。氷の台座で馬車を持ち上げ、下から覗いて子細に検討した。

 車輪は前回壊れて、応急修理したところで、当然交換するが、車軸や軸受けも痛みが激しい。馬車本体の台座部分も痛んでいてゆがみが発生している。

 「俺なら、あきらめて新品を買うな。でも、レディクが作るものほど、乗り心地の良い馬車は売っていないと思うぞ。」ダリルが苦笑しながら言う。調べるだけ時間の無駄だったか。

 故障した馬車を直すのではなく、使えそうな部品や素材を取るだけにし、設計から新しい馬車を作ることになった。2台目なので要領はわかっているが、1台目より大型の馬車なので、足回りはしっかりと作らないといけない。ベアリングを大きく。車輪や板バネも大きく設計した。午前中は点検と設計で終わってしまった。


 昼食後、クロエとヒューが遺跡に出発するのを見送る。

 馬車の設計の細部を修正した後。フレームから作り始めた。足回りまで作ったところで、動かして動作を調べる。サスペンションが柔らかすぎなので修正した。何度か動作確認と修正を繰り返す。足回りは、納得のいく出来になったようだ。

 床下の収納スペースから、木製部分を作り始める。床面は断熱のため、木の板の間にプラスチックの層を挟んだ3層構造にする。御者台と側板を作る。

 そろそろ夕方だ。幌などの上部構造は、また後で作ることにした。


 夕食後に、荷物などの準備を確認し、レスリーとローズを連れて外に出た。既に空は暗くなっており、今夜は月も出ていない。念のため、周囲の広い範囲に霧を発生させる。マスクもしておいた。

 足下に氷の板を発生させ、レスリーとローズも上に乗せる。周囲を、胸より少し低いくらいの高さの、氷の板で囲む。細長い氷の箱に、乗っているような状態になった。レスリーとローズに手袋をはめて、捕まっているように指示した。

 初めはゆっくりと、次第に加速して、氷の箱を上昇させる。100メートルくらいまで上昇したところで、上昇速度を落としながら、北に向かって移動し始める。高度200メートルで、上昇をやめ、水平方向のスピードを上げた。高速で移動しながら、広範囲の水蒸気を維持するのは難しいので、水蒸気の展開範囲を周囲20メートル程度に抑える。同時に、前方の水蒸気密度を高くして、正面から当たる風を弱めた。

 町を離れてしまうと、眼下には闇が広がるばかりで、地面がどこにあるかもわからなくなった。しかし前方、かなり遠いところに、ぼんやりと白く光る物がある。遺跡の一部の構造物が、光を発しているのだ。これがなかったら、夜間の飛行中に、遺跡の場所を見つけるのは、かなり難しかっただろう。

 レスリーとローズは、飛び始めた時には押し殺した悲鳴を上げていたが、ある程度高度が上がると、「あそこにギルドの明かりが」とか「あれは北門前の酒場」とか、興奮した様子でやり取りしていた。町の明かりが遠くなると、二人とも黙って遺跡の明かりを見つめているようだった。

 地上の様子が分からないので、どのくらいのスピードが出ているのかも、よく分からなかったが、遺跡に近づく早さから見て、100キロ近く出ていたかも知れない。20分ほど飛び続けると、遺跡がかなり近くなり、遺跡の東にたき火の明かりが見えた。ヒューとクロエがたき火をしているのだ。コースを変えて、たき火を目指し、さらに少しの間飛び続けた。

 ヒューもクロエも、我々が降下していく事に、全く気がついておらず、すぐそばの草地に氷の箱が着地した重い音に、かなり驚いていた。

 夕ご飯は軽く済ませたと言うことだったが、持参したアベリア製のお弁当には喜んでいた。

 休憩所のロックを解除して中に入り、その日は風呂に入った後、すぐに寝た。



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