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特認冒険者

ギルドの試験を受けに行きますが

結局一般冒険者の登録証はもらわないことになりました

 さて次は試験だ。

 受付の女性職員に、一般冒険者の試験を受けたいと申し出る。職員の指示に従い、再度冒険者登録証を提出する。女性職員が奥に行き、代わりに、昨日も見た年配職員が現れた。

 「昨日いらした方達ですね、お待ちしておりました。試験を受けにおいでいただきまして、ありがとうございます。初めにご説明させていただきます。一般冒険者試験には、武器による戦闘技能の試験、魔法による戦闘技能の試験、回復魔法の技能の試験、以上の3種類がございます。通常はどれか1種類の試験を選択して受けていただきます。」

 「通常は1種類、ということは、2種類以上受けることもあるのか。」

 「はい。複数の技能をお持ちの場合は、個々の技能が若干低くても、総合的な能力が考慮されて、合格と判定される場合がございます。また、高い魔法適性をお持ちの方には、武器による戦闘を希望される方でも、ギルドの方からお願いして、魔法の試験も受けていただく場合がございます。ちなみに、今回おいでいただいた4名様の中で、レディク様とローズ様は、高い魔法適性をお持ちのようですので、ぜひ、魔法による戦闘技能の試験を、受けていただきたいのですが、いかがでしょうか。」

 「ローズは魔法適性高かったのか。確かに他の2人より魔力は多めだし、魔力制御もうまいな。でも、普通の魔法の練習はしてないし、無理だろう。」

 「ギルドでは適性をお持ちで、魔法の使用経験の少ない方に、無料で魔法の研修を行っております。」

 「魔法の研修か。そう言えば前に、そんな話を聞いたな。どんなことを教えてくれるんだ?」

 「スクロールの使用法の説明。魔力の枯渇と、回復時間についての説明。その後、標的に攻撃魔法を当てる実習も行います。」

 「それだけ?」

 「えっ?はい。そうです。」

 「そうかあ。たいした研修じゃ無さそうだな。ローズにはそのうちに、他の魔法も練習させようと思っていたし、今回はパスで良いか。」

 「さようでございますか。では、レディク様が魔法による戦闘技能の試験を、アベリア様、レスリー様、ローズ様は回復魔法の技能の試験を受けられる、ということでよろしいでしょうか?」

 「あと、レスリーには武器の戦闘の試験も受けさせたいけど、良いかな?」

 「かしこまりました。では少々お待ちください。」年配職員が奥に行った。


 1-2分待つと、受付の左手の方にあるドアが開き、年配職員が別の女性職員を連れて現れた。

 「こちらの方達です。」年配職員は女性職員に我々を手振りで示すと、自分は戻っていった。

 「こちらにどうぞ。」という女性職員の案内に従い、我々は別室に移動した。


 案内された先は、縦横5メートルくらいの小部屋で、小さなテーブルが一つだけ置いてある。テーブルの上には魔道具らしい物が置いてあった。四角い台座の上にのった、高さ50センチくらいの白い円筒形のものだ。

 「回復魔法の技能の試験は、この魔道具を使って行います。この魔道具にヒールを掛けると、魔法の効果に応じて色が変わります。弱いヒールでは青、もう少し強いヒールでは緑、さらに強いヒールではオレンジですね。では、お一人ずつ、冒険者登録証を魔道具にかざしてから、ヒールを掛けてください。」

 女性職員の説明の後、まずアベリアがヒールを掛ける。魔道具が緑色の光を発した。面白い魔道具だ。どうやら、擬似的に傷ついた肉体のような反応を示す機能が組み込まれているようだ。

 レスリーとローズもヒールを掛けると、やはり魔道具は緑色に光った。今は3人とも同じくらいの能力らしい。

 「私もやってみて良いかな?」興味をひかれたので、聞いてみる。

 「レディク様ですね。ええ。かまいませんが。」

 最初は弱めの魔力を注ぎ込み、次第に魔力を強めていく。魔道具は最初は青く光り、それから緑、オレンジと色を変えていった。重症患者を治せるくらいの魔力を注ぐと、オレンジになるのか。

 「無発声で、段階的な魔力コントロールも可能とは、すばらしい技量をお持ちですね。」おっと、力を見せすぎたか。でも、びっくりするほどではないようだから、大丈夫かな。


 職員の案内で、別の場所に移動した。今度は部屋と言うよりも屋外に屋根を張り、両側面に壁を付けたような場所だ。足下は土で、正面には壁が無い。屋根の下から出れば完全に屋外で、15メートルほど向こうにあるのは、ギルドの敷地を囲む壁らしかった。壁の手前には弓で狙う的のような物が置いてある。屋根に覆われた範囲はかなり広く、幅25メートル、奥行き15メートルくらいありそうだ。

 我々が到着すると、左手の壁際のベンチに座っていた中年の男が立ち上がった。

 「武器による戦闘技能の試験を受けるのは、どなたかな?」

 「私ですー。」男の声に、レスリーが遠慮がちに答えた。

 「そこにある、練習用の武器の中から、どれでも好きな物を選んでくれ。」

 レスリーが練習用の剣と盾を選ぶと、男も剣と盾を手にして進み出た。

 「準備が出来たら始めよう。好きな時にかかってこい。」


 レスリーは、初めにためらいがちに踏み込み、剣を振るう。強くはじかれ、逆に剣を突き入れられるが、レスリーも盾でかわす。ゆっくりとした動きから始まって、次第に剣の動きが速くなっていく。男の動きが次第に速くなるばかりでなく、変化に富んだ技を見せ始める、盾で受けるばかりでなく、剣による巻き上げや、払い落としと同時に繰り出される盾による打撃、蹴り、連続突き。レスリーは次第に防戦一方になるが、かろうじて踏みとどまっている。5分くらいは打ち合っていただろうか。しかし、最後は、男の盾攻撃からの連続技が受けきれず、喉元に剣を突きつけられた。


 「まいりました。」レスリーが言うと、男も構えを解いた。

 「まあまあだな。5級くらいの実力はあるだろう。もう少し覇気があれば、もっと良いが。」男が言った。どうやら合格のようだ。


 「終わったかね。」ローブを着た男が、我々の後ろに立っていた。レスリーの試験中に、ドアから出てきて、終わるのを待っていたのだ。

 「では、次は魔法による戦闘技能の試験だな。試験を受けるのは誰かね?」

 「私だ。」

 「得意な魔法の系統は?」答えた私に、男はさらに質問した。

 「水だな。」

 「では、ウォーターショットだな。あの的を狙って、ウォーターショットを撃ちたまえ。ウォーターショットと声を出して。魔法を発動するのだ。」

 私はローブの男と、的の後ろの壁を見比べた。撃つのは良いが壁が壊れるだろう。隣の家まで壊れそうな気がするぞ。この男、私が研修を終わったばかりの初心者だと勘違いしていないか?

 一瞬だけ、言われたとおりに、ウォーターショットを撃ってみようか、という考えを弄んでみたが、こんなところで問題を起こして、注目を集めるのも馬鹿馬鹿しいのでやめておく。

 「壁が壊れるぞ。」一応、指摘してみる。

 「何を馬鹿なことを。その壁は十分な強化が施されている。そう簡単には壊れん。くだらん心配を・・」


 「確かに壊れるだろうな。これは、危ないところだったか。」リンドともう1人の男が、扉を開けて出てくるところだった。

 「ギルド長。」ローブの男が見ているのは、リンドと一緒に現れた男だ。アスターの冒険者ギルド長らしい。

 「ちょうど、こちらのギルド長と、相談することがあって来ていたんだ。レディク。君のことについての話もあってね。」

 「ああ、そう言えば、私の方からも、話したいことがあった。」新聞のことを思い出す。

 「上で話さないか?」

 「まだ試験が終わっていないが。」

 「そもそも、君に試験が必要とは思えないが。」リンドが笑って言うので、付いて行くことにした。


 「君は特認冒険者という名前を、聞いたことがあるか?」応接室に通されて、腰を下ろし、アスターのギルド長の紹介を受けた後、リンドが質問してきた。

 「いや。初めて聞く名前だ。上級の冒険者の名前か?」

 「国やギルドが、機密を要求される仕事や、長期にわたる仕事を、冒険者に依頼することがある。そのような場合には、機密を守るため、または冒険者が依頼を完遂しやすいように、便宜を図るため、特認冒険者登録証という特別な登録証を発行することがあるんだ。」

 「公的依頼を受けて、仕事をしていることを示す、登録証ということか。」

 「そういうことだ。基本的には、特定の仕事に従事している間だけ、一時的に発行される登録証で。これを所持している冒険者は、国やギルドから、様々な便宜を受けられる。」

 「なるほど。どういうものかは、だいたいわかったと思う。それで?」

 「特認冒険者登録証には、他の登録証とは大きく異なる特徴がある。登録証に表示する項目を、発行時に設定出来るのだ。」

 「表示を設定?」

 「冒険者登録証は、冒険者の身分を証明するものとして、様々な場所で使用される。冒険者ギルドの受付で提示を求められるし、町を出入りする時や、公的機関で身分証明を求められた時にも、提示するかも知れない。つまり、たくさんの人間が、内容を目にする可能性が高い。この事はわかるな?」

 「ああ。」

 「君の冒険者登録証を見せてもらえるか?」求めに応じ、登録証をリンドに渡した。

 「私が町の出入りを監視する門衛で、君の提示する冒険者登録証の内容を、見たとしよう。そうすると、『魔法適正 水魔法:推定SSS』とか、『年齢不明』とか、『出身地不明』などの記載内容に、気がつくかも知れない。気がついたら当然驚くだろうな。すごい魔法使いだと思うか、不審者だと思うか、人によって反応は違うだろうが、変わった内容の登録証を持つ者として、注目を集めることは間違いない。」

 「今まで気にしていなかったが、確かに、その通りだ。ようやく分かってきた、つまり、特認冒険者登録証では、記載内容を変更したり、非表示にしたり、することが出来るのか?」

 「変更することは出来ないが、非表示にすることは出来る。」

 「そうすると私は、公的な依頼を受けて、特認冒険者登録証を発行してもらうべきだ、ということか。」

 「いや、アスターとエドリンの冒険者ギルド長、およびアスターの領主からの依頼、と言う名目で、君達のパーティーに特認冒険者登録証を、発行する準備は出来ている。君にお願いしたいことは、今のところは、国王陛下に会いに行ってもらうことと、所在が分かるようにしてもらうことだけだ。」

 「へっ?それは、・・そういうのは冒険者依頼とは、いえないと思うが?」

 「魔人は普通、1人で千人以上の軍隊を上回る力を持っている、と言われている。記録に残る魔人の中には、数万の軍隊を壊滅させた者もある。魔人とはそれほど恐ろしい存在だ。それを君は既に二人も倒している。一人目は弱かったという話だが、二人目の魔人の強さは、町の多くの人間が目にしている。私もこの目で見た。あれは千人くらいの軍隊で、どうにか出来る魔人でははなかった。それを君は正面からねじ伏せたんだ。それだけの力を持った英雄に、容易に連絡を付けることが出来るなら、それだけでもエルロン王国にとって、価値がある。」

 「んー。そういうものか。確かにあの魔人を、普通の軍隊で何とかするのは、難しいことは分かる。空を飛び回る上に、防御力が高いから、ダメージを与えるのは大変だろうな。でも、戦ってみた感触では、魔力の大きさの割に攻撃が下手だった。主に人を操ることを任務としていたのだろう。他の魔人はもっと強いかも知れない。今の私では勝てないような、強力な攻撃魔法を操る魔人も、居そうな気がする。あまり期待されても困るが。」

 「もちろん。魔人との戦いを、すべて君に任せようという話ではない。やがて訪れる、魔王との戦いでは、すべての国の、すべての兵士の力が必要とされるだろう。しかし、その戦いに備えるためにも、実際に魔人と戦った君の経験は貴重だ。今の時代に、そんな経験を持つ人間族の者は、他にいないのだから。それに、・・」ここまで話して、リンドは、ためらうように言葉を切った。それから、再び、静かに話し始める。

 「私は何か予感のようなものを感じるのだよ。君は必ずまた、魔人と戦うに違いないと。」

 「実は私も、そんな気はしている。私のことは、予言に書かれているのかも知れないし。」

 「予言?」

 「リンドに聞きたかったことの一つは、それなんだが。『偉大なる予言』って、知っているか?」

 「読んだことはないが、聞いたことはある。神の残された予言とされている。魔王との戦いについての、予言が記されているそうだ。それにレディクの名前が載っているのか?」

 「私も詳しいことは知らないのだが、パーティーメンバーのクロエという女の子が、女神の託宣に従って、アスターに来たという話なんだ。」

 「女神の託宣?」

 「はい。」ローズが返事をした。

 「その託宣にはこのように言葉があったそうです。『偉大なる予言グレートプレディクション』に告げられた者に出会うでしょう。その者は強大な魔力を持つ者。出会えばわかるでしょう。霧をまとい、空を翔る者。岩を穿ち、魔を滅ぼす力ある者です。その者に従い、その者を助けなさい。その者が奪われた物を取り戻す時、不幸な運命は避けられるでしょう。」ローズは完全に暗記しているらしい。

 「確かに私は、魔法で霧を出したり、空を飛んだり、岩を切って穴を開けたりしているから、偶然の一致とは思えないんだ。それで、予言に何が書いてあるのか読んでみたくてね。王都の図書館に行けば読めるだろうか?」

 「原典は無理だが、書き写した物はあると思う。しかし、そう言う話はヘルミ博士聞いてみた方が良さそうだな。」

 「一度エドリンに行くか。」

 「ヘルミ博士なら、何日かすればアスターに来ると思うぞ。魔人の持っていた魔道具のことを、手紙で知らせておいたからな。博士が来られたら知らせよう。」

 「ああ、頼む。」


 その後、新聞社の依頼の件を相談すると、アスターのギルド長が、渋い顔で「予想しておくべきだった」と言い。「何とかしよう」と約束してくれた。


 特認冒険者登録の件は、メリットが大きいので、ありがたくお願いした。新しく発行された登録証は銀色で、年齢、出身地、魔法適性が非表示になっていた他、ランクが3級に上がっていた。

 「本来は1級でも良いのだが。2級以上の高ランクの冒険者は、数が少ないので特認冒険者より注目されやすい。」ということで、3級になったようだ。

 アベリア、レスリー、ローズの登録証も、同じパーティーで、一人だけ特認冒険者ではおかしいという理由で、青ではなく、銀色になった。表示はされていないが、一般冒険者であることは、登録証に記録されているそうだ。ヒュー達4人の登録証も、次回ギルドに来た時に交換すると言われた。



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