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予言

やっと少し伏線回収

こんなにかかる予定ではなかった気がするが

 気がつくと、多くの人間の注目を集めていた。町の上空でドンパチやっていたのだから、当然か。魔人が怖いのか、誰も近づいては来ない。

 見回すと、領主館の入り口に、リンドとアダーがいた。無事だったようだ。歩み寄ろうとして、足が氷に固定されたままであることに気がつく。簡単には外れない。仕方ないので飛んで行くと、リンドも含めて、前方にいる人の腰が引けている。何人か逃げ出した。あ、マスクをかぶったままだった。


 「リンドさん。」声をかけて手を振る。

 「その声は、聞き覚えが・・。」

 「ご無事で良かったです。アダーさんも。」マスクを少しだけ外して、顔を見せ、すぐにまたマスクを掛けた。

 「レディク殿か。なぜマスクを?」

 「顔を覚えられたくなかったので。魔人の仲間に見られたり、魔人を倒した者として名を知られたりすると、魔人に命を狙われかねませんから。魔人は他にも居るらしいです。」

 「そういうことか。わかった。きみのことは、一部の者以外には、知らせないようにしよう。」

 「よろしくお願いします。ここにいた人たちのほとんどは、魔人の魔道具で操られていただけだと思います。魔道具はさっき破壊しました。あとは、操られていた間の記憶が残っていれば、調査は容易だと思いますが。」操られていた人に、話を聞いて見ようと、周囲を見回す。間近に立っていた警備兵と目があった。この警備兵は、さっき魔道具を壊した後、倒れていたはずだ。

 「あなたは、操られていた間の記憶がありますか。」警備兵に聞いてみる。

 「は・はいっ。勇者様。記憶はございます。不甲斐なくも数日の間、魔人の言うなりに働き、何の疑問も感じておりませんでした。」ここでも勇者認定か。目立ちすぎたな。

 「私はこれ以上目立ちたくないので、そろそろ引き上げます。アダーさん、ラプルちゃんが怯えていましたので、私の家に連れて行っています。なるべく早く会って、安心させてあげてください。」

 「わかった。ありがとう。」

 「アダー、すまんがもう少しの間、手を貸してくれ、1時間以内に済ませるから。一段落したら、もう少しレディク殿の話を聞きたい。こちらから出向くので、家の場所を教えてくれないか。」リンドに家の場所を説明した後で、撤退した


 塀を跳び越えて、人気のない場所を探す。少し離れた、寂れた町の一角まで飛び、マスクを外して、氷を消す。固定用のベルトを外すのに、少し手間取った。誰にも見られていないことを確認し、足早に移動した。

 服装も見られたと思うので、歩きながら自分の服装を確認する。冒険者が着る、ありふれた革の服だ、「今空を飛んでいたやつだ」とか、見破られることは無いと思う。


 「おかえりなさい。レディク様。」

 「ただいま。ローズ。毛布を取ってくれないか。」

 ローズたちが待つ馬車に戻ると、早々に毛布を体に巻いてしまうことにした。ここまですれば、正体がばれることはあるまい。


 「これまで、勇者様とは気づかず、ご無礼をいたしました。お願いがあります。勇者様。」クロエが跪いている。ヒューも跪いている。ローズが跪く2人と私を見比べた後、うれしそうに跪いた。なぜまねをする?

 あわてて、全員立たせる。誰にも見られていないだろうな。

 「今後勇者様と呼んだり、跪いたりしたら、縁を切る。」と少し怒っておいたら、ローズが泣きそうだったので、ローズは別だとなだめた。


 家に帰って、ラプルにアダーの無事を伝えた。ローズがラプルに『偉大なるレディク様と魔人の戦い』とかいう講釈を始めたので、「あまり話を広めないように」と言って、やめさせた。念のためラプルにも、秘密にする約束をしてもらう。


クロエの話を聞いた。

 クロエは元々田舎の村の猟師の娘で、一生村を出ることもないだろうと思っていた。ヒューもクロエの幼なじみだった。ところが、3ヶ月ほど前に、クロエが熱を出して寝込んだ時に、夢の中で女神の声を聞いた。クロエの病気は完全に治ることはなく、村にとどまれば、1年以内に死ぬことを告げられた。また、数年後には、この村を含む地域の多くの人が、同じ病にかかり、半数以上の人が死ぬことを告げられた。

 クロエが、不幸な運命を避ける方法はないのかたずねると、クロエが女神の手助けをしてくれれば、避けられるかも知れないと言う。ただし、容易な道ではなく、長くかかり、危険もあるとも告げられた。長く、苦しく、危険な道であっても、他に道がないならば、自分のためにも、人々のためにも、その道を進むので、お導きくださいと、クロエが願うと、女神は以下のように告げたそうだ。

 「では、あなたに加護を授けましょう。今はまだ大きな力を持ちませんが、あなたの道を示すでしょう。ダースに行きなさい。その地で新たな仲間に出会うでしょう。いにしえの神の住まう、白い遺跡に行きなさい。『偉大なる予言グレートプレディクション』に告げられた者に出会うでしょう。その者は強大な魔力を持つ者。出会えばわかるでしょう。霧をまとい、空を翔る者。岩を穿ち、魔を滅ぼす力ある者です。その者に従い、その者を助けなさい。その者が奪われた物を取り戻す時、不幸な運命は避けられるでしょう。」


 『偉大なる予言グレートプレディクション』!そうか、気になっていた言葉は、プレディクションだったのか。実は私が今名乗っている名前も、この言葉の一部か。つまり私は、自分の名前も覚えていなかったのか。少しすっきりすると同時に落ち込んだ。

 それにしても、女神のご託宣って、普通もっと、わかりにくいものじゃないのか。私でさえ、これは私のことだろうなと、つい思っちゃう、ピンポイントなキーワードが入りまくってるぞ。ローズとレスリー、アベリアさんまでうれしそうにメモ取ってるし、否定しようがないか。


 「つまり、クロエのお願いというのは、私と一緒にいたい、と言うことで良いのかな?」

 「はい。レディク様に従者としてお仕えすることを、お許しください。」

 「いや、私は貴族とか、騎士とかじゃあないし。従者とかいらないから。パーティーメンバーで良いんじゃないのかな?」

 「はい?え?いいのでしょうか。」

 「じゃあ、今まで同様、パーティーメンバーと言うことで、よろしく。」

 「はい。えっと。よろしくお願いいたします。」

 「ところで、ダリルとジニはどうするんだ?」

 「いやー。クックックッ。なにしろ『霧をまとい、空を翔る者』だからな、こんな面白そうなパーティー、他にないし、付いて行かなかったら絶対後悔するぜ。」しばらくその台詞が、ネタにされそうな予感がするな。

 「『岩を穿ち、魔を滅ぼす者』にゃ。さすがヤリチン魔王にゃ、魔人なんか目じゃないにゃ。アベリア姉さんのご飯もおいしいし、最高だにゃ。」

 ダリルも猫耳戦士も楽しそうだし良いか。


 そのあと、お金の分配の話もした。うちの3人の女は相変わらずお金を受け取らない方針のようなので、こちらはまた後で考えることにする。ヒューたち4人も遠慮がちだったのを説得した。取得金額の半分弱をパーティー共有資金としてプールし、1人当たり金貨18枚を分配した。十分高額だったようで、それなりに物欲がある、ダリルも喜んでいた。


 昼食を食べていると、リンドとアダーがやってきた。ニズロン子爵まで一緒にいる。応接室は今、ヒューたちが寝るのに使っていて、散らかっているので。一緒に昼食はどうかと、誘ってみる。朝から何も食べていなかったそうだ。一緒に食べながら話をした。

 ニズロン子爵は30歳前後のまじめそうな男だった。貴族らしく、身なりが良いだけでなく、物腰に気品がある。しかし、偉ぶったところが無く、好感が持てた。


 「レディク様。このたびのレディク様のお働き、感謝に堪えません。おかげをもちまして、アスターは救われました。いや、エルロン王国全土や近隣諸国までも及ぶ災厄が、回避されました。ありがとうございました。」ニズロン子爵が、敬語で話しかけてくるので狼狽する。

 「ニズロン様。私は一介の冒険者です、敬称など不要です。」

 「何をおっしゃいます。国難を救った偉大な英雄に、相応の敬意を払わぬことなど、考えられません。レディク様こそ、私に対する敬語など、ご無用に願います。」

 「あー、私としましては、領主様に敬語で話しかけられるなど、ご勘弁いただきたいのですが。無用な注目を集めてしまいますし。・・お互いに、敬語抜きと言うことではどうだろう?」

 「わかりまし・・いや、わかった。私のことはローランと呼んでくれ。」おや、なんだか喜んでいるようだ。

 「わかった。ローラン。よろしく頼む。」

 「それなら、われわれも、敬語抜きにしてもらわないとな。」リンドも混ぜてほしいようだ。


 ローランの話によると、操られた後正気に戻った人たちから、話を聞けるため、情報は順調に集まるのだが、影響の範囲が広すぎるため、事態の収拾には長い時間がかかる見込みらしい。アスターの主要な人物・組織と、ニーサやダースなどの近郊都市にも影響が及んでいるという。殺された人や怪我人も多い。滞っていた公的業務を復旧させるだけでも、大変な状況だそうだ。

 今はまだ、大まかな全貌の把握と、急ぎの手配を行っている段階で、今日中に、重要な部分だけでも見通しを付けて、王都への使者も送っておきたいという話だった。


 「ところで、ここに来たのは、お礼と報告が主目的だが、お願いしたいこともある。ある程度落ち着いたら、国王に直接ご報告に行くつもりだが、その時に同行して欲しいのだ。」

 「一介の冒険者が国王に拝謁とか、目立ちまくりじゃないか。ごめん被りたい。私が行かないと、報告出来ないということはないだろう。」

 「同行して欲しい理由がある。国王陛下は英邁な方であるが、ご幼少の頃から冒険譚などがたいそうお好きなのだ。魔人が倒されたことをご報告すれば、倒した者を王宮にお連れせよと、命じられることだろう。私が1人で王宮に行けば、ご不興を買うことは間違いない。それに、行かなければ、陛下が自らこちらにおいでになると思うぞ。」

 「えっ?!王様がこっちに?」

 「陛下は行動的な方なのだ。」

 「・・ローランが倒したことにしといたら?」

 「陛下は私のことをよくご存じだ。私にそのような才がないことも。それに、陛下の臣として、そのような偽りを申し上げることは出来ない。もちろん、レディクの希望も考慮するつもりだ。謁見は王宮ではなく別邸で、ごく少数の者のみの同席で、という条件でどうだろうか。」

 「うーん。そこまで考えてくれるというのであれば。しかし、そんな条件では、それこそ王様の不興を買ったりしないのか?」

 「むしろ、陛下は喜ばれるかも知れない。お忍びでお出かけが、お好きな方だ。」

 「そう言う王様なのか。」

 「王様は気さくな人柄もあって、特に王都シリンでは人気が高いぞ。シリンに行くといろんな噂話が聞ける。酒場で王様の噂を肴に飲んでいたら、隣に王様が座っていて一杯おごってくれたとか、市場で悪徳役人が袖の下を要求していたら、後ろに王様が立っていて、悪徳役人を捕まえて行ったとか。」リンドが教えてくれる。

 「ははは。神出鬼没だな。」

 「まだ、しばらく先のことになるが、日程が決まったら、連絡するので、よろしく頼む。」

 「わかった。」

 「では、私はそろそろ次の仕事に行かないと。昼ご飯ありがとう。」ローランが席を立つ。

 「次は治療院か。怪我人の搬送はかなり進んでいると思うが、ヒーラーの確保はすぐには難しそうだな。」リンドも立ち上がった。

 「怪我人のことは、私も気になっていた。ヒーラーが足りないなら、手伝おうか?アベリア、レスリー、ローズの3人は、まだ弱いながらヒールを使えるし。私も使える。」

 「強力でなくても、ヒーラー4人は、すごく助かる。是非お願いしたい。」

 「また、注目を浴びてしまうかな、マスクを被っていくか。あとは、フード付きのローブでも買っていくか。」

 「なるほど、変装用か。どうせなら立派な物を・・そうだ、良い物があるぞ。変装用の服を持ってくる。治療院のそばで落ち合おう。」ローランが1人で行ってしまったので、リンドの案内で治療院に向かった。


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