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魔人ふたたび

少し強い魔人登場です

今度は空中戦です

 「今回の報酬額は、かなり高額になりますが、ギルド口座をご利用になりませんか?」女性職員が質問した。

 「ギルド口座?お金を預けられる、ということか?」

 「はい。預けたお金は、どこの冒険者ギルドでも引き出せます。金額が多い場合特典が付く場合もございます。」

 「便利かも知れないが、今はまだいい。儲けを分配した後、買い物とかもするかも知れない。また後で考える。」

 「わかりました。では今回の買い取り代金をお支払いいたします。」

 差し出されたトレイには、白金貨20枚、金貨171枚、銀貨9枚、黄銅貨2枚、銅貨10枚がのっていた。予想を上回る金額だった。盗賊の隠れ家をつぶした後に手に入れた金額よりさらに多い。今回は8人で分けるので、1人頭で計算すると、前回より少ないが、1年以上遊んで暮らせそうな金額であることは間違いない。

 硬貨もこれだけの量になると、かなり重い。特に金貨が多くて重いが、ギルドにもあまり白金貨がない、という事情があるらしい。

 前から思っていたことだが、大きな金額を持ち歩くのも不安なので、後でもう一度ギルドに来てある程度まとまった額を預けてしまおう。


 お金の分配は後で家に帰ってからすることにし、ヒューと二人でおおよそ半分ずつ持って、ギルドを出た。このあと、エドリンのギルド長に会いに行くと話すと、ヒュー達も会ってみたいというので、一緒に行くことにした。


 アダーの店に着くと、店のドアは開いているが、店内に誰もいない。

 「アダーさん。こんにちはー。どなたか居ませんかー。」声をかけても誰も出てこないので、奥を覗いてみた。やはり誰もいない。椅子が倒れていたりして、様子がおかしい。しかし、魔法では家の中に誰か居ることが感知出来る。

 「アダーさん。リンドさん。レディクです。」もう一度声をかけてみるが、誰も出てこない。寝ているか、隠れているのか?

 「誰にゃ?!」猫耳戦士が、物陰にいる誰かに剣を突きつけている。

 「いやっ!」女の子の悲鳴が上がった。

 隠れていたのは、この前来た時に店番をしていた、獣人族の女の子だった。怯えて泣いている女の子を、なんとかなだめて話を聞いた。


 「昨日の夜、少し遅い時間にドアを叩く音がして、アダーさん、初めは警戒していて、私には奥に隠れているように、言ったんです。でも、やって来たのは、知り合いの、領主館の人達で、私も顔を見たことがある人がいました。アダーさんはその人達を中に入れて、話をしていました。そうしたら・・そうしたら突然。アダーさんが殴られて。・・後ろから殴られたんです。リンドさんも。縛られて。連れて行かれちゃって・・。」

 女の子が再び泣き出してしまったので。落ち着くまでしばらく待った。

 その後、アダーが殴られる前に「おまえ、様子が変だぞ、本当にボルジンか?」と、苦笑しながら言っていたこと。ボルジンという人は、リンドが連絡が付かなくなったと、心配している人の1人だったこと。一昨日の夜、リンドが「やはり、領主館があやしい。ニズロン子爵が黒幕の可能性もある。ボルジンは殺されているかも知れない。」と、話していたことを聞いた。

 女の子はラプルという名前で、両親が亡くなった後、冒険者時代の両親の仲間で、親友だったアダーに面倒を見てもらっているそうだった。


 リンドとアダーが、どこに連れて行かれたかが気になるので、領主館の中を魔法で探って見ることにする。

 ラプルはいったん、うちに連れて行ってもらうことにした。アベリア、レスリー、ローズの3人に頼もうとしたが、ローズは是非とも私に同行したいというので、連れて行くことにする。

 「レディクさんはすごい力を持った方だとお聞きしました。お願いします。アダーさんを助けてください。」別れ際にラプルが、思い詰めた顔つきで言う。

 「レディク様は魔人をも屠る、偉大な魔法使い。レディク様に勝てる者など誰もいない。レディク様に任せておけば安心。」なぜかローズが答えた。ラプルが本気にしたらどうするんだ。


 領主館から200メートルほど離れた場所から、館内を探って見た。監禁しているのなら地下牢とか、そんな感じの場所かと思ったので、まず地下方面を調べる。おや、ドアに鉄格子のような構造付きの部屋がある。中に人間が居る。これか?と思ったら、同じような部屋がたくさんある。人間もたくさんいる。親しい人間なら、魔力の感じから識別出来るが、リンドくらいだとまだ難しい。所持品を奪われているらしく、鑑定を使っても、参考になる情報が見つからない。この中にリンドとアダーが居るのだろうか。

 念のため、何人か鑑定を続ける。剣を持っている人間が居た。間違えて看守を鑑定したらしい。ん?今おかしな情報が表示されていた気がする。もう一度鑑定してみる。

 『人間。精神被操作状態 装備品;鉄の剣・・・

 精神被操作状態?操られていると言うことか?


 「人間の精神を操る魔法とか、道具とか、何かあるのか?」皆に聞いてみる。質問の意図を、計りかねたのだろうか、皆首をひねっていたが、

 「魔法はないと思う。歴史上の有名な魔人に、精神を操る魔道具を使う者が居た。たしか、傀儡師の手という名前の魔道具。」ローズが答えた。

 「魔人の魔道具?」嫌な予感がする。

 領主館の敷地内全域を、いそいで魔法で探っていく。作りがしっかりしていて、隙間が狭く、奥の方の部屋ではまだ、十分水蒸気が浸透していない部分がある。幸い、過ごしやすい気候のためか、少し窓が開いている部屋が多い。今調べられる範囲は、建物全体の8割くらいか。怪しい人間がいないか、特殊なアイテムらしい物や、魔力の流れがないか探してみる。

 建物の上の方の部屋の中に、魔力を帯びた物が見つかった。これはワンドか?鑑定すると、『闇の傀儡師の手。品質:?』という情報が得られた。

 さてどうするか。魔人のアイテムがあるなら。魔人も居そうな気がする。前回の魔人はまだ若くて、はっきり言って雑魚だったが、今回もそうとは限らない。正直魔人と戦闘とか、気が進まない。しかし、こんな魔道具を放置して、いつの間にか知り合いが、操られていたりすると困る。捕らえられたリンドが操られたら、私の名前や顔も、魔人に知られるかも知れない。少なくとも、この魔道具は壊して、リンドとアダーは救出しておくべきか。


 「あの建物の中に、闇の傀儡師の手、という名前の魔道具が見つかった。魔人か、あるいは、それに近い強力な敵がいると、見た方がいいだろう。私は魔道具を破壊しに行く。敵が範囲魔法で攻撃してくる可能性があるので、領主館には近づかないようにしてくれ。」そう言って、私は1人で領主館に向かった。

 ヒュー達4人は、変な顔をして首をひねっているが、無理もないだろう。

 「わかりました。ご武運を。」ローズだけは違った。目がきらきらしているな。


 領主館の敷地を囲む壁の近く、人目に付かない場所で、領主館の井戸の水、池の水、周辺にある3つの井戸の水が、操作可能な状態であることを確認する。両足の下に氷を出し。体を浮かせる。前回の反省から、細いワイヤーで編んだベルトで足を氷に固定した。飛び上がる前に、顔を覚えられないように、マスクをかぶる事を思いつく。木製のマスクを作った。


 素早く壁を飛び越え、植え込みの陰に入る。今のところ、誰にも見つかっていないようだ。建物を見上げ、魔道具のある部屋の位置を確認する。4階建ての建物の3階の正面側、中央付近の部屋。窓から入るのは簡単そうだが、周囲から丸見えだ。しかし、内部の構造、人の分布を調べると、どこから入ろうとしても、人に見られることは確実か。それなら、窓を破って魔道具を壊し、すぐに逃げた方がいいかもしれない。


 決心を固め、窓に向かって飛ぶ。窓に到達する直前に、氷球で窓を破り、一気に飛び込んだ。そこは、執務室のような場所で、窓を背にして重厚な木製の机がある。机の上にワンドが置かれていた。

 木製の70センチほどのワンドだった。一方の端が、やせ細った手が掴み掛かろうとしているかのような、不気味な形をしていた。全体がつやのない黒で、触ることもためらわれるような、汚れた危険な気配が感じられた。

 両端を氷で固定した後、5本のウォータージェットで、6つのかけらに切断した。切断の瞬間、ひどく甲高い、嫌な音がした。


 建物の同じ階の少し離れた場所で、扉を乱暴に開く音がする。この気配は、覚えがある。やはり魔人がいた。奥の部屋から飛び出してきた生き物を、魔法で探ると、前回と同様、体内の水が操作可能な状態にならない。

 すぐに窓から飛び出し、3階の窓からでは目視出来ない位置に移動する。向こうはこちらの位置を、検知出来るだろうか。探るような魔力の流れは感じられないが、こちらが使っている魔力の流れを、認識している可能性はある。

 そういえば、門や庭に衛兵が居たはず。思い出して見回すと、意識を失って倒れているようだ。魔道具を壊したためか。

 魔人が魔道具の置いてあった部屋に入る。

 「ぬおおっ!おのれーっ。」怒りの声が聞こえた。

 次の瞬間、魔人が窓から飛び出した。直後に、何かが高速で飛来する。反射的に避けようとしたが、間に合わず、肩に衝撃を感じた。急いで移動しながら、体の周りに氷の盾を作る。


 魔人が飛んでいる。反撃の氷球を飛ばしながら、回避運動を続ける。こちらが飛べるのだから、向こうも飛べるかも知れないと、予想しておくべきだった。魔人が、体の周囲に岩の盾を作って氷球を防ぐ。今飛ばしてきたのも岩か?肩に軽い怪我をしたようだ。ふと、気がつく、私がいた位置の背後、建物の壁に穴が開いている。おそらくヒューのスキルで、軽い怪我ですんだのだ。スキルがなければ、死んでいたかも知れない。ぞっとする。

 集中しろ。自分に言い聞かせる。互いに岩と氷の攻撃を応酬しながら。弧を描くように飛び続ける。前回の魔人とは、比べものにならない強さだ。狙われにくいように、周囲に霧を発生させる。私が相手の力量を探り、戦術を練っているのと同様に、向こうも、こちらの力量を探っているだろう。敵の上下や背後から、同時に氷球を撃ち込んでみるが、すべて防がれる。

 「無駄だ。魔法の発動に注意していれば、容易に防ぐことが出来る。俺様の防御を破れないおまえに、勝ち目はない。」魔人がにやりと笑った。

 確かに相手の方が、防御はうまい気がする、岩の盾の強度が高く、展開も早い。飛ぶのもうまい。私より慣れているのだろう。他の人間が見ていれば、私よりもずっと危なげなく戦っているように見えるかも知れない。

 しかし、戦い方が単調だ、さっきから攻撃に使う岩の大きさ、形状、材質、速度がほとんど同じ気がする。攻撃の狙いも甘い。初めに一発食らってしまったが、それ以後は、ダメージを受けていない。氷の盾で防いでいる岩が6割程度で、他は狙いを外している。実は、あまり戦いに慣れていないのか?それとも、本気を出していないのか?

 魔人の防御も、一見強固には見えるが、岩の盾大きさと枚数が、初めから変わらないようだ。パターン化した動きで防御しているのかも知れない。

 長さ3メートルほどの氷の槍を数本、かなり強めの力で、敵の周囲から同時に撃ち込んでみた。ほとんど防がれたが、ダメージを与えることは出来たようだ。軽い怪我を負っている。敵の表情から余裕が無くなった。

 「貴様。なんだその力の強さは、女神の加護を受けた者か?まさか、勇者か?」

 「勇者だと?そんな者は知らん。女神の加護とは何だ?」

 敵の飛ばして来る岩が大きくなり、威力があがった。本気を出してきたか。氷の盾を少し厚くする。しかし命中率が落ちたようだ。大きな岩が町に落下して、建物を破壊し、あちこちで悲鳴が上がる。視界の隅に、崩れ落ちる建物の瓦礫で傷つく親子連れが映る。子供が大怪我を負ったようだ。素早くヒールを発動する。

 このままでは大量の死者が出そうだ。氷の盾を2層にして、外側の盾の展開範囲を広げる。霧を消し、移動速度も落とす。これで、外れる岩が無くなるだろう。

 「貴様、記憶がないのか?」

 「おまえ、私のことを何か知っているのか?」まさか、こいつらの仲間が何かしたのか?

 魔人が大きめの魔力を操るのを感じると、2メートル近い大きさの岩が出現し、飛んでくる。今ある盾だけでは防ぎきれない。しかし、敵の魔力の発動が遅かったので、何とかなりそうだ。3メートル程度の氷球を撃ち出して迎撃する。岩と氷が激突して、轟音を立てて砕け散った。間近で発した轟音で、全身がびりびり震える。耳が聞こえない。自分自身にヒールを掛けた。

 「カラドギリムに記憶を奪われた者だな。生き残ったか。それにしても、恐るべき力。やはり加護持ちだな。」

 「カラドギリム?おまえの仲間の魔人か。なぜ記憶を奪う?」

 「記憶を奪って、荒野に放置すれば、ほとんどの者は死ぬからな。」

 「なぜそんな面倒なことを・・」

 一度に十数個の岩を撃ち出してきたが、小さい。盾ではじけるので無視する。同時に、魔人が距離を開けようとしている。

 長さ10センチくらいの、小さな氷の槍、と言うよりも針を数百本、魔人の周囲から同時に撃ち込む。ほとんどが防がれたが、数十本が当たり。魔人の体に浅く突き刺さった。盾の防御が固いだけでなく、肉体も強化しているらしい。しかし、それなりのダメージは与えたようだ。

 「この程度でオレ様を倒すことはできんぞ。」

 「前に戦った魔人も同じことを言っていたな。」

 「やはり、貴様の仕業か。」

 氷の針では倒せないだろうと、予想していた。今の攻撃は、足止めと確認のため。本命の攻撃は次の二つだ。

 魔人の頭が赤熱し、燃え上がった。上空300メートルに作った、直径200メートルの高密度水蒸気レンズが、太陽の光を一点に集め、一気に加熱する。水蒸気は初めから、周囲400メートル程度の範囲に展開している。わずかな魔力でレンズを作ることが出来るため、魔人も攻撃を感知出来なかった。今何が起こっているかも、わかっていないだろう。

 魔人は悲鳴を上げながらも上方に岩の盾を隙間無く展開する。側面の岩の盾の隙間が広がった。魔人の防御法では隙間が出来るのだ。大きな隙間ではないから、たいした攻撃は出来ないと思っているのか。

 岩の盾の隙間から、4本のウォータージェットを魔人の体に撃ち込む。岩をも切り裂くウォータージェットの水流が、魔人の体を切り刻んだ。


 地に落ちた魔人の体に近づくと、魔人はまだ生きていた。片腕と、両足が切断され、腹と胸も大きく切り裂かれているのに、恐るべき生命力だ。

 「しぶといな。」

 「おまえの強大な魔力を感じた時点で、・・逃げるべきだった。」魔人が、弱ってはいるが、意外にしっかりした声を発した。

 「おまえ達は、戦いが好きなのかと思っていたが、そうでもないのか。」

 「我らの第一の任は・・魔王様の覇道を支えること。・・今はまだ・・戦うべき時ではない。」

 「不自由なことだな。魔王はまだ生まれていないのだろう。他の生き方は出来ないのか?」

 「我らは・・そのために・・生み出された存在だ。」

 「私を直接殺さず、記憶を奪った理由は何だ?」

 「貴様が知らぬのなら、・・教える・・つもりはない。」魔人がにやりと笑った。

 「おまえは、私の方が魔力が多いから負けたと、思っているかも知れないが、それだけではないぞ。おまえ、あんまり魔法の練習していなかっただろう?生まれて何年目だ?25年くらいか?」

 「なんだ・・と。・・33年・だ。」

 「私が魔法を使い始めてから、まだ1月と少しだぞ。誰にも、魔法の使い方を教えてもらったことはない。でも、私の方がずっと、魔法攻撃の命中率も、バリエーションも豊富だったな。」

 「恐ろ・・しいや・つ。・・そうか、・・おまえ・・が・・プレディ・・・」

 プレディ?その言葉。夢の中で聞いたぞ。魔人が言葉を続けるのを待ったが、続きを聞くことは出来なかった。魔人が持っていたわずかな魔力が消失し、体内の水が操作可能に、変わっていくことを感じた。



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