遺跡
遺跡に行きました
ゴーレムとか狩ります
やっと冒険者っぽくなりました
遺跡へ続く道は、アスターの北門から、ほぼまっすぐ北へ延びている。道と言っても、時々通る馬車の轍後が残っただけのものだ。
遺跡までは馬車で3-4時間の距離で、それほど遠くない。白い石造りの大きな構造物の集まりなので、北門からしばらく進み、低い丘陵をいくつか越えると、遠目にもはっきりわかるようになる。
2時間ほどまっすぐ進んだ後、東寄りに進路を変え、遺跡の東側に回り込むように進んだ。そろそろ日が沈む頃に野営地に着いた。
ヒュー達のおすすめの野営地は、遺跡の外縁部から400メートルほど離れたところにある、小さな池のそばだった。北側の傾斜地からのわき水が、池に流れ込んで、池からはさらに小さな川が、東側の川の方に伸びている。
このあたりから北に向かっては、緩やかな登り傾斜が続き、東側は川に向かって少しずつ下る地形だ。北東方向の少し遠いところに灰の森が見える。西側の少し北寄りに遺跡があり、その向こう側、遠くには、山々の連なりが見えた。グリム山地という名前らしい。
ヒューのスキルがあるので、念のため、子供達以外をヒューのパーティーメンバーに、加えてもらうことにする。子供達も加えられたら良かったのだが、パーティー編成は冒険者登録証に付加されている機能なので、やむを得ない。
夕食を食べて、その日は寝ることにした。
翌朝、夜明け前に目覚め、朝食を食べた。アベリアは長く行商生活をしていただけあり、キャンプ地でも器用に料理をこなす。
「アベリア姉さんはすごいにゃー。お嫁に欲しいにゃー。」猫耳戦士は今日も、幸せそうだ。
「ジニさん。その台詞は、女の子としてダメだと思うわ。」クロエが笑いながら、突っ込みを入れていた。
事前の打ち合わせ通り、朝の最初の2時間は、薬草を採取した。全員あまり離れずに行動する。子供達も一緒だ。
水魔法による遠隔感知と、鑑定ワンドの組み合わせを試してみると、予想を上回る実用性で、薬草の群生地が次々と見つかる。朝の2時間だけで、山のような収穫があった。
「薬草が見つかりすぎて疲れるなんて、初めてですー。」レスリーは特にがんばって走り回っていたので、疲れたようだ。
薬草採取が終わると、ゴーレム狩りだ。全員で遺跡外縁部近くに移動した。
遺跡の一番外側には石柱が等間隔に並んでいて、その内側には通路状の場所があり、さらに内側には石壁が続いていた。ゴーレムは通路の部分を徘徊しており。石柱の内側に人間が入ると、攻撃してくるそうだ。
ダリルとジニは外縁部の外側を移動しながら、ゴーレムを探しているようだ。一方、ヒューとクロエは木を見上げている。とりあえず我々は、見学することにした。
「一匹見つけたにゃ。」
「クロエ。その木なんてどうだ。」ヒューが背の高い木を指さしている。
「うん。良さそう。登るわ。」クロエは木に登り始めた。
「来るぞー。」ダリルがクロエを見上げて言う。
「近くには居ない。いいわよー。」クロエが木の上から、遺跡のなかを見回ながら言う。なるほど、クロエは見張り役か。
「行くにゃー。」ジニが、接近してきたゴーレムめがけて突っ込んでいく。ジニは剣を持っていない。代わりに、両手に金属製のナックルをはめていた。
ゴーレムもジニを認識したらしく、歩調を早めた。両者が接近すると、ゴーレムが腕を振り上げ、振り下ろす。ジニがゴーレムの腕を回避したので、振り下ろされた腕は地面を叩き、「ズンッ」と重い音を立てる。ジニは、振り下ろされたゴーレムの腕を足場に、飛び上がってゴーレムの頭部を殴る。「ガンッ」と大きな音がして、細かいかけらが飛び散ったが、音ほど大きなダメージはないようだ。ジニはそのままゴーレムを飛び越え、ゴーレムの背中側に飛び降りる。ゴーレムは振り下ろした腕を持ち上げ、ジニを追って振り返る。
その時ダリルが、大きなハンマーを持ってゴーレムに走り寄り、ゴーレムの膝の裏側にハンマーを叩きつけた。「ゴンッ」という音が響き、ゴーレムがよろめいた。ダリルはもう一度同じ場所にハンマーを叩きつける。ゴーレムも不安定な体制ながら、ダリルめがけて腕を振る。「ゴガッ」音を立てて、ハンマーがゴーレムの足を砕いた。ゴーレムが倒れると、即座に、ダリルがゴーレムの頭にハンマーを打ち下ろした。
「ガーゴイルッ!来たわ!」クロエが叫んだ。
ジニとダリルが外縁の石柱の外に走り出た、2-3秒後に石壁の上を、翼の生えた悪魔の石像のような物が飛び越えてきた。これがガーゴイルか。
「ガーゴイルとは戦わないのか?」ヒューに聞いてみる。
「硬い上に素早いので、倒せません。」
「ここから攻撃するとどうなる?」
「外まで襲ってきますね。」
「中で戦っていて、外に逃げ出した場合は、追いかけてこないのか?」
「来ないです。」
「では中に入って攻撃して、すぐに外に出る、という行動を繰り返すことも出来るのか。」
「そういう戦い方もあります。効果的だとは聞いています。」
話している間に、ガーゴイルは再び石壁を飛び越えて、向こう側に戻っていった。
「もう大丈夫。」クロエが言うと、ダリルが中に入り、ゴーレムの足をつかんで引きずって戻ってきた。ダリルの兜の額部分に傷が付いていた。兜の下にも怪我をしているようだ。そして、ヒューの額にも、同じ場所に怪我がある。ゴーレムの腕が結構強く当たって、ヒューのスキルが発動したらしい。
「ダリル、鈍ってるにゃ。あんな攻撃食らっちゃダメにゃ。」
「むう。面目ない。油断していた。」
「倒せたのだし、問題ないですよ。」ヒューがフォローしている。
アベリアとレスリーに治療をさせた。2人はまだローズに比べて魔力が少ないので、怪我の治療は主に二人に任せ、練習させる。
ダリルがノミと金槌を取りだして、ゴーレムの胸の部分に穴を開け始める。ゴーレムの岩の素材は石灰岩らしく、あまり硬くないようだ。胸の中には空洞があり、そこに二つのクリスタル状の物があった。白と青だ。白い方は魔石に見える。
「青い方が心核か?」
「そうです。常時依頼の対象です。」
「ゴーレム狩り。次は私にやらせてもらえるか。」
「えっ?、ああ、はい。」ヒューは、当惑した顔で答えた。私の力については、疑っているのだろう。
次のゴーレムが見つかると、私は無造作に石柱の内側に入って、ゴーレムに接近した。
「あのっ、まだ・・」クロエが止めようとする。
「大丈夫だから、心配するな。」石壁の向こう側に、ガーゴイルが居ることも感知している。不意打ちを受けることはない。
こちらに気づいて接近してくるゴーレムの胸部に、ウォータージェットで穴を開ける。ゴーレムが動くので、ややいびつな円形になったが、ゴーレムの胸から岩の板がはずれ、魔石と心核も転がり出た。ゴーレムがゆっくり倒れていく。
石壁を飛び越えて現れたガーゴイルには、新しく身につけた土魔法を試してみる。
「ストーンショット。」直径50センチくらいの岩が撃ち出された。ガーゴイルは避けようとしたが、翼にあたり、片方の翼が砕けた。岩はそのまま飛んで石壁に当たり、石壁に大穴を開ける。ガーゴイルも、石壁に叩きつけられたが、まだ動けるようだ。起き上がって歩いてくる。もう一度土魔法を、今度は言葉を口に出さず、威力を弱めて発動しようと念ずる。直径20センチくらいの岩が飛んで、ガーゴイルの頭部を砕いた。成功だ。
もう一体のガーゴイルが、石壁を越えようとしていることを感知する。ストーンショットの要領はわかったので、後は水魔法でいいだろう。水魔法の方がスピードも命中精度も魔力効率も上だ。現れたガーゴイルを引きつけてから、氷球を3つ同時に撃ち出し、頭部と両翼を同時に砕いた。ガーゴイルは落下して動かなくなった。
振り返るとヒュー達4人は、口を開けた状態で凍り付いたように固まっている。
「ガーゴイルからも、心核のような素材は取れるのか?」ヒューに質問する。
「心核があります。ゴーレムより大きくて高級な素材です。依頼は出ていませんが、高値で売れると思います。」ヒューが無事解凍されたようだ。
ダリルをまねて、ガーゴイルの足を引っ張って運ぼうとしたが、動かない。かなり大きい石のかたまりだから、当然か。ダリルの力はたいした物だ。手で運ぶのはあきらめ、氷の板に乗せて運ぶ。
「おお。すごいにゃ。飛んでるにゃ。」猫耳戦士がいきなり、ガーゴイルに飛び乗って、はしゃいでいる。その発想はなかったな。今度自分で氷に乗って、飛べるかどうか試してみよう。
「ガーゴイルの心核がどの辺にあるか、わかるか?」ダリルに質問する。
「わからん。調べてみよう。」ダリルが答え、慎重にノミで探り堀りする。ゴーレムより低い、腹に近い場所から、心核と魔石が現れた。ゴーレムの物よりかなり大きかった。
「ゴーレムがもっと、集まっている場所はないのか?」
「えっ?、・・あります。危険なので、我々は近づかないつもりでしたが。もう少し北に進むと、遺跡を東西に横切る大きな通路があります。『大通り』とか呼ばれている場所ですが、そこでは常に目の届く範囲に、5体以上のゴーレムとガーゴイルがいるらしいです。一度に複数のゴーレムとガーゴイルが襲ってくるので、近づくのも危険と言われています。」ヒューが少し躊躇した後で答えた。
「5体くらいなら手頃な数だな。そこに行こうか。」
「手頃ですか・・」
北に進みながら、さらに、ゴーレム3体、ガーゴイル1体を倒した。私が続けて倒そうとすると、猫耳戦士が「私にもやらせるにゃ。」と、文句を言ってきたので、交互に戦うことにした。
『大通り』に到着した。確かに大きい。道幅が80メートルくらいありそうだ。石のような素材で舗装されているが、かなり硬い素材らしく、遺跡の他の部分に比べてあまり痛んでいない。道の両端と中央に、装飾的な構造物がある他は平らで、所々に文様が描かれた道が、遺跡の中央の大きな建物までまっすぐ延びている。この遺跡は直径4キロくらいあるらしいので、2キロ近い距離が見通せているはずだ。
その道に、多数のゴーレムとガーゴイルが居る、はるか遠くには、それ以外のものも居るようだが、よく見えない。ゴーレムとガーゴイルは30体くらいいるが、遠くのゴーレムは数百メートル離れている、足の遅いゴーレムが、こちらに向かってきても、余裕で逃げられる。特に危険とは思えない。100メートル以内にいるゴーレムとガーゴイルは、6体ほどだ。
大通りに踏み込む。大通り部分では、外縁の石柱が無いので、大通りの舗装が遺跡の範囲を示す目印だ。足を踏み入れるとすぐに、2体のゴーレムがこちらを認識して、向かってきた、さらにもう一体のゴーレムがつられるように動き始め、少し遅れて2体のガーゴイルも、こちらに向かって来た。仲間が戦闘状態に入ったことを、検知しているらしい動きだ。
近づいてもらった方が、アイテム回収が楽なので、少し引きつけていると、猫耳戦士が先に飛び出した。ダリルも少し遅れて後を追う。猫耳戦士の動きは相変わらず素早く、2体のゴーレムの攻撃をかすらせもしない。とはいえ、さすがに3体以上は大変だろう。
動きの速いガーゴイル2体は、先に氷で翼を片方砕いておく。これでのろのろとしか動けない。後から接近してきたゴーレムは、ウォータージェットで胸を切り開き、心核を抜いて倒した。
ダリルが一体のゴーレムの足を砕き、頭も砕いた。猫耳戦士は、もう一体のゴーレムの足に連撃をたたき込む。10発くらい殴ったところで、ついにゴーレムの膝が砕けた。
ガーゴイルの1体の胸を切り開き、心核を取りだしている間に、猫耳戦士がもう一体のガーゴイルの背後に回り込み、背中から殴り始めた。ガーゴイルは足が弱いので、歩くのが遅いだけでなく、振り向くのも遅いようだ。猫耳戦士は、何発か殴った後、背中に開いた穴から、心核を抜き取ってしまった。
「面白い方法だな。飛べないガーゴイルなら、背中から心核を抜けるのか。翼を砕いた後の処理は、ゴーレムより楽そうだし、あそこにまとまっているガーゴイルを、先に片付けないか?」150メートルほど向こうに、6体ほどまとまっているガーゴイルを指さして、猫耳戦士の意見を聞いてみる。
「やるにゃあ。」
「やってみよう。」ダリルも乗り気のようだ。
「軽く攻撃して引きつけた後、適当にばらけた位置に落とすから、後を頼む。」
10センチほどの氷球で、ガーゴイルの1体の、頭部を攻撃した。感知と魔力制御が上達しているため、このくらいの距離なら外さない。当たり所が良かったらしく、頭が3割ほど砕けた。6体のガーゴイルが、こちらに向かってくる。少し遅れて、ガーゴイルもう1体と、ゴーレム1体も向かって来た。50メートルくらいまで接近したところで、遅めの氷球を飛ばす。ガーゴイル達が氷球を避けて、左右に分散する。いい感じにばらけたので、翼を砕いて落としていく。
ジニとダリルが、それぞれ手近のガーゴイルに走り寄って背後に回る。ダリルは大ハンマーではなく、金槌とノミを持っている。ダリルがガーゴイルの背中で素早く金槌をふるう、さすがに慣れているだけあって速い、あっという間に心核を抜き取ってしまった。
遅れてきたガーゴイルの翼も砕く。ゴーレムも近づいたところで、胸を切り開いて心核を抜いてしまう。
「クックッ、ハッハッ。金槌とノミで、ガーゴイルと戦う日が来るとは、思わなかったぞ。」ダリルは笑いながら金槌を振るっていた。
「飛べないガーゴイルは、ただの豚にゃ。」豚ではないと思うが、まあ雑魚だな。
もう一群れのガーゴイルを狩り、その後は、野営地に戻って昼食にした。




