ウォータージェット
なかなか遺跡に出発しません
お話のリズムが今ひとつ良くない気がします
猫耳戦士の台詞を考えるのは楽しいです
冒険者ギルドから200メートルほど東門側に進み、酒場の横から裏通りに入って、眼鏡を掛けた犬の看板を探す。あった。見つけたのは、店頭に籠やほうきが並ぶ、雑貨屋だった。間口は狭いが、奥行きは結構広い店だ。入り口から少し入ったところに、カウンターがあり、その前で二人の男が話をしていた。店主となじみの客だろうか。入り口から入ると店主らしい男が「いらっしゃい」と、声をかけた。
「こんにちは。あなたがアダーさんですか?リンドさんの紹介で来たのですが。」紹介状を取りだして見せる。
「ほお、リンドから。ああ、アダーは俺だ。」紹介状を受け取った。
「また、ろくでもない用件かも知れないぞ。」もう1人の男がにやにや笑っている。この男もリンドの知り合いのようだ。
アダーは「ふん」とか「ほう」とか言いながら、紹介状を読み進めていた。途中で一度こちらを見て「ほほう」というと、再び紹介状に目を落とす。もう1人の男も横から紹介状の中身を覗いていた。アダーが紹介状を読み終わり、折りたたもうとすると、もう1人の男がそれを奪い取る。アダーは仕方ないなという感じで肩をすくめ、こちらを向いた。
「こいつはロカナンと言う名でな、昔はリンドと、こいつと、俺と、同じパーティーで冒険者暮らしをしてたのさ。灰の森の盗賊が討伐された話は、リンドからの手紙で知らされていた。まさか、あんたみたいな若い冒険者がやったとは、たいしたものだな。それで、何か困り事か?出来ることがあったら、力になるぞ。」
「実は、リンドさんと連絡を取りたいのですが、灰の森でリンドさんと別れる時に、少ししたらアスターに来ると、言っていたのを思い出しました。リンドさんがアスターに来る時には、必ずこちらに立ち寄るというお話でしたから、アダーさんならリンドさんが何時アスターに来られるかご存じかと思いまして。」
「ああ、確かにこっちに来るぞ。明日の昼頃になるらしい。」
「やはりそうですか。最初は、手紙を出そうとしたのですが、アダーさんの話を思い出して良かったです。」
「リンドに連絡を取りたいというのは、灰の森の盗賊がらみの話なのか?」
「そうです。リンドさんから、盗賊とゴブリンの関係について、話はありましたか?」
「ああ。ゴブリンと盗賊は無関係で、盗賊退治にゴブリンが協力してくれたとか、ゴブリンの村に詫びに行ったとか、知らされて居る。」
「エドリンの町ではその件が公表されたのですが、こちらでは公表されていませんね。」
「ああ、その件か。俺も少し気になっていた。」
「それと、冒険者ギルドで見た、灰の森の調査依頼も気になっています。」
「調査?何の調査だ?」
「調査内容も、依頼者も、非公開でした。」
「そりゃ怪しいな。今の時期に。確かに怪しい。」アダーが考え込んでいる。
「明日の1時頃に、こちらに伺えば、リンドさんに会えるでしょうか?」
「ああ、大丈夫だろう。リンドにも伝えておく。」
「よろしくお願いします。」
雑貨屋を出た後は、ヒールスクロール、ヒールワンド、ビームなどのスクロール、ポーション用の容器、毛布とタオルと食器、食材を買って帰った。
帰りながら、アベリアに、メリーの学校について調べられたか聞いてみる。無料の学校があったので、学校に話を聞きに行き、入学の条件は特にないことを確認出来たそうだ。短い期間でも、通わせた方が良いと、勧められたらしい。絵本も1冊貸してもらったそうだ。
家に帰ると庭で、レスリーとジニが戦っていた。木剣を使った練習試合だ。剣技のことはよくわからないが、ジニの動きは素早く、鋭く、かなりの技量ではないかと、想像された。座っている時には気がつかなかったが、おしりで猫のしっぽが揺れている。
レスリーの方は、それほど素早くはなかったが、構えや足運び、盾と剣の動かし方もなかなか様になっており、安定感がある。それなりにジニの相手が出来ているように見えた。
「レスリー。悪くないじゃないか。様になってるぞ。」
「レスリーは基本が出来てるにゃ。反応もいいし、7級なんてもったいないにゃ。さっさと試験を受けるにゃ。」
「猫耳戦士はずいぶん動きが鋭いように見えるが、6級であんなに動けるのは普通なのか?」ヒューに聞いてみた。
「ジニは冒険者歴こそ短いですが、元々傭兵ですから、かなりの腕です。3級くらいの冒険者に匹敵すると思います。うちのパーティーでは一番強いです。ダリルも元兵士で強いですが、ジニは剣の技だけではなく、少し特殊ですが魔法も使えます。」ほほう、猫耳魔法剣士か。
家に入り、ヒュー達を客間に案内する。
「立派なお宅ですね。」ヒューがソファに腰掛けながら言う。
「借家だけどな。この町にはそれほど、長く滞在する予定ではないので。でも悪くはない。庭が広いところも、気に入っている。」
「カーペットふかふか。」クロエがうれしそうに言う。
「一昨日はまだベッドが足りなかったので、アベリア達はこの部屋で寝た。クッションや毛布を持ち込んで。君達にもこの部屋を使ってもらおうと思っている。」
「こんな立派な部屋、お借りしてよろしいんでしょうか。」
「さっき言ったように、余分なベッドがない。他におすすめ出来る部屋が無いのだ。2部屋使いたければ、上にもう1室空き部屋があるが。」
「この部屋をお借り出来るなら十分です。」
「後で、クッションと毛布を持ってこよう。ところで、合同パーティーの件。さっきの話の続きだが。」
「はい。何か条件があるとか。」ヒューが居住まいを正す。
「条件というのは、我々に関する情報を、他の人間に漏らさないで欲しい、ということだ。わざわざ場所を変えたのも、我々の話を他の人間に、聞かれたくなかったからだ。」
「それはいったい何故ですか。」
「これから話すことは、我々が合同パーティーを行うことにならなくても、他言無用にして欲しいのだが、約束してもらえるか?」
「約束しましょう。」ヒューがうなずく。
ヒュー達に、真実に一部嘘を織り交ぜた話をした。
街道に出没していた盗賊団を討伐したこと。灰の森のゴブリン達とは友達で、盗賊団討伐の際には、協力して戦っていること。ローズ、レスリー、アベリア、メリー、タイの5人を、盗賊団の隠れ家から助け出したこと。町の責任ある地位の人間に、盗賊団への協力者が居たこと。エドリンでは、町にいた盗賊団への協力者を一掃できたが、アスターでは失敗しているらしいこと。
盗賊団の首領の死体を、エドリンの冒険者ギルド長に見せたところ、単なる田舎盗賊ではなく、はるかに危険で巨大な犯罪組織の幹部であったこと。私が盗賊団の首領を殺したことが知られると、狙われる可能性があること。私が使う魔法は強力で、独特なものであること。盗賊団の隠れ家には、私が魔法を使った痕跡が残っていること。
「にわかには信じがたい話ですが。」
「この話は、エドリンの町の冒険者ギルド長や、警備隊長も知っていることだ。しかし、別に信じてもらわなくてもいい。我々の情報を、漏らさないことを約束してくれれば、問題ない。」
「そういうことなら。お約束しましょう。」
「よろしく頼む。あとひとつ、言い残したが。明日の昼頃、エドリンの冒険者ギルド長がアスターに来るので、会って話をすることにした。そのため、我々の出発は午後2時か3時頃になりそうだ。君達だけ先に出発で、現地で合流しても良いが、どうするかね?」
「現地までの道案内もあった方が良いでしょう。一緒に出発しましょう。」
その後、現地での滞在期間、必要なものなど相談した。
クロエが水浴びをしたいというので、風呂に案内した。大きな風呂に驚いていたが、喜んでも居たようだった。
夕食は、質・量ともに好評だった。夕食中に、ヒューがナイフで怪我をした。けっこうざっくり切っているので、少し驚いたが、当人は「いつものことです」と言って、平然としている。ヒールを掛けるときれいに治った。ヒューは怪我をしていた左手ではなく、右手や足を調べている。何カ所かあった、治りきっていなかった怪我も、全部治ったらしい。
夕食後、寝る前に女達3人にヒールを覚えさせ、少し練習させた。怪我をした人間は居ないが、お互いにヒールを掛けさせると、ちゃんと発動する。自分でも試してみたが、怪我をしている場合に比べて、少ないながら、魔力を消費する。
初めて魔法を使うアベリアは、やはり魔力量が少なく、3回ヒールを発動すると、ほぼ魔力が無くなってしまったので、私の魔力を入れて回復してやる。アベリアも変な声を上げていたが、うれしそうだ。
「きもちいいのか?」よくわからなかったので聞いてみる。
「いえ。あの。レディク様のものを、力強く入れていただいていると思うと、うれしくて。」アベリアは色っぽく上気した顔で答えた。
ローズとレスリーも、して欲しいというので、3人ともたっぷりと、魔力強化をしてやる。魔力強化中、3人とも色っぽいあえぎ声を上げるので、興奮してしまい、魔力でないものも、たっぷりと入れてやった。
翌朝は夜明け頃に起きた。何か物音がするので、庭に出てみると、ヒューとクロエが剣と弓の練習をしていた。
「おはよう。朝から熱心だな。」
「おはようございます。朝の練習は欠かさないように、気をつけているんです。」
「ダリルとジニは練習しないのか。」
「まだ寝ていると思います。彼らの練習はたいてい午後以降ですね。」
「なるほど。あと15分ほどで朝食の準備が出来るから、食堂に来てくれ。」
朝食を食べながら、朝のうち我々は、魔道具とポーションの作成と、魔法の練習をして過ごすことを告げる。ヒューが雑用とか、手伝えることがないかと、聞いてきたので、特に何もする必要はないが、庭の草むしりをしておいてくれるとうれしい、と言っておいた。
「こんな良い暮らしを続けたら堕落しちゃうにゃ。きっと堕落させる罠だにゃ。恐ろしいにゃ。みんなヤリチン魔王の罠にはまってるにゃ。」ジニが、好き勝手なことを言いながら、うれしそうにご飯を食べている。
「ジニさん。こちらの堕落の誘惑もいかがですか。」アベリアが笑顔で、おいしそうに焼けたマスのソテーを勧める。
「欲しいにゃ。誘惑に勝てにゃいにゃ。おいしいにゃ。」うれしそうに受け取ってかぶりついた。
朝食後。今日は、ローズの魔道具作成の練習、レスリーのポーション作成の練習、アベリアのヒールの練習を同時に行った。ローズとレスリーは着実に上達している。ローズは上品質のマジックライトを作ることに成功した。
怪我人が居ないので、ヒールの効果はわからないが、アベリアも魔力操作は上達してきたようだ。3人とも魔力が増加している。1時間半ほど続けると、薬草のストックが無くなってしまい、精神的な疲労も溜まってきたようなので、練習を終えることにした。
魔道具の材料もだいぶ使って減ったので、一休みしてお茶を飲みながら、ローズと相談する。次に作る魔道具は、魔道具屋の在庫なども、教えてもらってから決めた方が良いだろう、という結論になった。出来た魔道具とポーションの売却、買い物などもかねて、アベリアとローズに出かけてもらった。
午前の残りの時間は、自分の魔法の練習と実験をしよう。買っておいた、ビームのスクロールを使う。ライトを使ってみた経験から、光魔法ならあまり危険なことは、起こらないと想像している。一応、念のため、外に出る。
外に出ると、庭の雑草はきれいになくなっていた。ヒュー達は休憩中のようだ。ヒュー達に草むしりの礼を言う。納屋に入って薪を一本取り、納屋の裏に回る。万が一、怪しい現象が起こって、ヒュー達に見られたりするのも嫌なので、一応の用心だ。
薪を地面において、少し離れ、薪を目標に魔法を発動した。
「ビーム」
昼の光を遙かに上回る、強烈な光が薪を照らす。魔法の発動を止めると、黒っぽく変色した薪から煙が上がっている。目つぶしと言うより、ビーム兵器っぽい。
声を出さずに、魔法を発動する練習をする。今回は簡単だった。光を抑えてスポット照明程度にする練習もする。昼間なので照明の明るさがわかりにくいが、だいたいでいいだろう。次に、照明の範囲を、広くしたり狭くしたりする練習をする。これは少し時間がかかる。光の色を変えることも試す。これは、前回の経験が生きて、簡単だった。光を一点に絞り、赤より長い波長、赤外線で強めに照射することも念じてみる。薪が燃え始めた。うまく行ったようだ。赤外線ビーム攻撃の完成だ。ビームで鉄を切断することも出来るかも知れない。
そこで、ふと、思い出した。水でも物を切断することが出来たはず。ウォータージェットカッターとか、そんな名前の機械があった気がする。水魔法が一番威力が高いようだし、水を使った方がいいかもしれない。たしか、1ミリくらいの細い水流を、ものすごいスピードでぶつければ良いはず。ものすごいスピードってどのくらいだ?よくわからないが音速は超えている気がする。マッハ5とか、そのくらいか?集中してイメージする。1ミリの細い、超音速の水流が、薪を貫通して切断していく様子を。
強めの魔力を使って魔法を発動した。
「ジャッ」と、結構大きく鋭い音がする。高速で物をぶつけているから当然か。薪はすっぱり切断されていた。首くらい簡単に切れそうだ。ガンダリに見せたら「新しい首切り魔法か」とか言いそうだな。
昼食後にアダーの店に行った。店には獣人族の女の子が居るだけだったが、「アダーさんは居ないか?」と聞くと、店の奥に案内してくれた。店の奥には居住スペースがあり、アダー、リンド、ロカナンの3人がテーブルを囲んでいた。
リンドはやはり、アスターの町で起こっている不可解な動きを調べるために、やって来たそうだった。
今回の事件に関するアスターの町での対策は、当初はアスターの町の行政職員や警備隊で行っており、うまく運んでいるように見えたらしい。ところが、5日ほど前から、調査と対策の進捗について、エドリンとやり取りしていた人のうち、半数近くと連絡が取れなくなったという。
エドリン側では、アスターの領主など、地位の高い人間の犯罪への関与、または、大規模で情報収集能力の高い犯罪組織の存在を疑っているそうだ。地位の高い人間が関与していると、最悪の場合、町同士の争いに発展しかねないため、エドリン側としても慎重に調査せざるを得ない、と言う。短期間での解決は望み薄な状態らしい。
ゴブリンの村にはすでに連絡を入れており。エドリンの警備隊から、ゴブリンの村と盗賊の隠れ家周辺の警備に、人員を送っているそうだった。
アスターに滞在し続けることは危険か、と質問すると、すぐに危険はないと思うが、解決が長引きそうなら、他の町に移った方が良いだろう、と言う返事だった。
仕事で5日ほど遺跡の方に行く事を伝えておいた。
家に戻り、馬車2台で、遺跡に向けて出発した。




