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借家

町で落ち着いて活動するために、家を借ります

 3人と今後の予定について話す。

 「さて。今後の予定だが。私の希望を言うと、しばらくこの町に滞在したいと思っている。やりたいことは4つくらいだ。第1に、しばらく冒険者ギルドの資料室で、情報収集、勉強をしたい。興味を感じた本が多かったので、2週間くらいは勉強の時間をとりたいな。第2に新しい魔法の習得と練習をしたい。やってみないと、どのくらいおぼえられるかわからないけど、いくつかの系統の初級魔法を試してみたいと思っている。練習の時間は1週間くらいと見ている。それから、第3に、冒険者としての生活を試してみたい。今はまだ、しばらく困らないだけのお金があるけど、収入を得る方法は考えておかないとね。1-2週間くらいは、ギルドで依頼をこなして報酬を得る生活を続けて、どのくらいの収入が得られるか、どんな仕事が向いているか試してみたいと思う。で、ここまでの予定をこなすと、最低1月はアスターに滞在することになる、場合によっては2月以上になるかも知れない。ここまでは良いかな?」一応、3人に確認する。

 「はい、わかりました。」3人ともうなずく。

 「そこで、教えて欲しいんだが。長期の滞在になると宿屋に泊まるより、家を借りた方が安上がりになると予想しているが、この考えは正しいだろうか?それから、家を借りるためには、どこに行けばよいか知っているか?」

 「家を借りたことはありませんが、宿に泊まるよりは安くなると思います。家の販売や貸し出しは、専門にやっている商人があると思いますが、商業ギルドでも斡旋してくれると思います。」アベリアが答えた。

 「わかった。ではこの後、商業ギルドに行って聞いてみよう。それと、さっきの話の続きだが、私のやりたいことの4つめは、君達の今後の身の振り方を考えることだ。正直、3人とも美人だから、嫁さんにしたいという男がいくらでもいそうだし。それほど心配いらないかもと、思わないでもないが、自活のためのスキルは身につけておくべきだろう。ローズは魔道具の作成、レスリーは薬草採取やポーション作成の仕事をしたら良いのではないかと思う。しばらく勉強を続けてみて欲しい。アベリアについては、まだ良い考えが浮かばないが、実は商店経営とかが向いていそうな気もする。もう少し考えてみたい。いずれにしても、3人ともしばらくは生業がない状態だと思うので、私の雇い人ということにしたい。家を借りるなら、掃除や食事の支度などの家事で人手が必要だし。当分の間、賃金は週に銀貨5枚くらいを考えているが、どうだろうか?」

 「そんな、とんでもないです。」とアベリア。

 「多すぎ。」とローズ。

 「助けていただいて、その上食べさせていただいているのにー。」とレスリー。

 「えーっ、・・じゃあ4枚では?」

 「銅貨10枚くらいで十分。」ローズがとんでもないことを言い出す。

 「ローズ。子供のお小遣いじゃあないんだから。銅貨はないだろう。あんまり少ないと、勉強の時にメモをとるための紙を買うにも困らないか?」

 「むう。では黄銅貨2枚で。」

 「ローズ。せめて銀貨にしようよ。銀貨3枚くらいで。」

 「仕方ないですね。銀貨2枚にしましょう。これ以上はまかりませんよ。」

 「アベリアさん、『まからない』って・・・。仕方ないな、じゃあ銀貨2枚で。」

 「アベリアさん。多くないですか?」レスリーがなおも食い下がる。

 「使い方は個人の自由ですから、大丈夫です。」アベリアがほほえむ。

 「アベリア頭いい。」ローズも納得したようだが、なにか悪い顔してないか?


 商業ギルドに移動し、アベリアが商業ギルドの会員証を提示して、家を借りたいがギルドで斡旋を頼めるかどうか問い合わせた。窓口の職員が、「担当者を呼びますのでお待ちください。」と言って席を外す。しばらく待つと別の職員が現れた。

 「お待たせいたしました。貸家をお探しとか。どのような家をお探しでしょう。ご予算等お聞きできますか?」

 「2ヶ月ほどこの町に滞在する予定ですので、4-5人で暮らせる広さの家を探しています。出来れば家具が付いていた方がいいです。寝室と別に魔道具作成などの作業用の部屋も欲しいので、部屋は多めがいいです。あとは、馬と馬車が置ける場所も欲しいですね。予算は決めていません。家の値段はよくわかりませんので、見てから判断したいです。」

 「条件に合う物件がいくつかございます。手近なところからご案内いたしましょうか。」

 手近ということは、町の中心部に近いだろうから、高そうなところではないかと危惧したとおり。最初に案内されたところは、お屋敷が建ち並ぶ区画の中にある豪邸だった。

 「この家は、外観から見ても我々には贅沢すぎるようですね。」

 「さようでございますか。それでは、もう少し小さめの建物をご案内いたしましょう。町の中心からの距離は多少離れても問題ありませんでしょうか。」

 「町の中に建っているのなら、遠くても、治安の悪い場所でもない限り問題ないです。ちなみにこの家だと家賃はどのくらい?」

 「週に金貨2枚と銀貨10枚になります。」

 「ほう。」借りられないほど高くはないな。まあ贅沢はやめておこう。


 次に見た建物は、外観・内装・家具ともに趣味のいい建物で、ややこぢんまりしているが部屋数は十分だった。町の中心からの距離もさして離れていない。家賃も週に銀貨11枚で手頃だった。しかし、惜しむらくは庭が狭い。魔法の練習をするには、もう少しスペースが欲しい。もう少し庭の広い家があったら見たい、と希望を出してみた。

 次に案内された建物は、町の中心からかなり離れていたが、冒険者向けの宿屋や商店が立ち並ぶ北門側の『冒険者街』にはむしろ近く、買い物の不便は無さそうだった。このあたりは10年ほど前に、町の北側を拡張して作られた区画だそうだ。庭が広いところが特徴で、奥にある厩を兼ねた納屋も大きい。大きな木が何本か植えられている。家は1階にホール、応接室、食堂、厨房、洗濯室、浴室があり、2階は主に寝室で6部屋あった。その他に地下室と屋根裏部屋もある。広さは十分で、家の中もきれいだ。欠点は、しばらく住む人がいなかったようで、庭が荒れていることと、ベッドや浴槽などの家具が少し足りないことだった。欠点はあるが、全体的には非常に気に入った事を伝え、家賃を聞いてみる。

 「週に銀貨8枚になります。」

 「ずいぶん安いな。」

 「ご指摘のように庭が荒れています。住む人のないままにすると家の方も荒れてしまうでしょう。少し安くしても、しばらく誰かに住んで欲しかったという事情があるようです。」

 「その値段なら、少しぐらい家具を買い足しても問題ないか。ここを借りることにしましょう。すぐに住み始められますか?」

 「ありがとうございます。今日からでも問題ありません。」

 「しかし、ベッドが足りないし、今日は宿に泊まって明日からにするか。」

 「1日くらいベッドなしでも問題ありません。旅の間はいつも毛布だけで寝ていましたし。」アベリアが異論を唱える。

 「そうですよ、せっかく家が決まったのですから、ここで泊まりたいです。」レスリーも賛同する。

 「じゃあ、そうするか。」

 一度商業ギルドに戻り、契約を交わして鍵を受け取った。今夜から新しい家で寝泊まりすることになった。


 夕食の支度等のための買い物が必要だが、スクロールも買いたいので、アベリアとレスリーに銀貨30枚ほど渡して買い物に行ってもらい、ローズを連れて魔道具店に行った。

 魔道具店はこぢんまりした商店で、店に入ると杖と、何かの道具が置かれていた。品揃えは悪いようで、十数種類の商品しかないように見える。カウンターにいる店員に各系統の初心者用のスクロールがあるかどうか聞いてみる。

 「取りそろえてございますが、どの系統のスクロールがご入り用でしょうか。」

 「風と土と光と火を」

 「失礼ですが、お客様の適性をお聞きしても?」

 「適性は水だな。」

 「水魔法をすでにそれなりに習得されている場合、風、土、光は習得できる可能性がありますが、火魔法の習得は難しいかと思います。習得できなくともご返品は受け付けませんがよろしいですか?」

 「ああ、なるほど。かまいません。」

 「では、こちらが風魔法ウィンドのスクロール。土魔法ストーンのスクロール。光魔法ライトのスクロール。火魔法トーチのスクロールです。価格はトーチのみ銀貨1枚と黄銅貨1枚。他は銀貨1枚です。」

 銀貨4枚と黄銅貨1枚を支払い、スクロールを手に入れた。

 ローズが「魔石も必要」と言うので、小魔石5つを銀貨1枚で買って帰った。


 今日からの『我が家』に帰ると、まだアベリアとレスリーは帰っていなかった。そろそろ外は暗くなり始める時刻で、家の中はかなり暗かった。ローズが「明かりを付けます。」と言って、食堂から持ってきた椅子の上に登って何かをいじっていると、部屋が明るくなった。ランプの明かりよりかなり明るい。マジックライトという魔道具だそうだ。裕福な家では一般的な照明器具として使われているらしい。この家にもたくさんのマジックライトがあったが、魔石が切れていたため、買ってきた魔石を使ったようだ。


 食堂の椅子に腰掛けて、スクロールを取り出す。さて、いよいよだ。わくわくする。

はじめは、ライトがいいかな。簡単らしいし。

「スクロールを使うのは初めてだけど、魔力を流せばいいんだよな。」ローズに確認する。

「初めて?・・あ、記憶がないのでした。魔力をスクロールに満たすと、スクロールが光り、魔術構築式が頭の中に転写されます。うまく行くと魔法の名前を口にした時、魔術構築式が頭の中に浮かび、魔法が発動しやすくなります。」

 「なるほど。やってみよう。」スクロールに魔力を満たすように念じる。スクロールが一瞬だけ強い光を出して、何かが頭に入ったことを感じた。

 「ライト」と声を出し、魔力が光に変わることをイメージする。強力な光が発生した。サーチライトで照らされているようだ。まぶしくて何も見えない。ライトを消した。

 「驚いた。ライトってこんなに強力な魔法だったのか。目つぶしに使えそうだ。」

 「そんなわけありません。初心者の使うライトは今照明に使っているマジックライトより暗い程度。レディク様の魔力は強すぎです。」ローズが異議を唱える。でもなんだかうれしそうだ。

 もう一度ライトを使ってみる。やっぱりまぶしい。弱くできないのか?付けたり消したりを繰り返した後、しばし考える。水魔法の場合は・・。そういえば、すっかり忘れていたが、ウォーターショットという言葉を口に出して魔法を発動したことがある。はじめの頃だけだが。言葉を口にすると、発動は楽だが威力のコントロールが難しいので、すぐにやめてしまったのだ。ということは。

 言葉を出さずにライトを発動しようとしてみる。ライトが発動した時にどのように魔力が流れていったかをイメージしながら、しばらく試し続ける。お、出来そうな気がする、もう少しで。発動した。あいかわらずまぶしいのですぐに消して、今度魔力を弱めて発動しようとする。まだまぶしい。もっと弱めないと。小さな水球を出すくらいの魔力で。だいぶましになったが、まだまぶしい。水一滴くらいのイメージか?よし!今度はうまく行った。これなら照明に使える。数回ライトを出したり消したりして加減をおぼえる。次は4つのライトを同時に出してみる。複数でも問題無さそうだ。

 しかし、この明かりは少し黄色っぽいか。もう少し白っぽい明かりの方が好みだが。色調が変えられないか試してみる。少し難しかったが10回ほど試すと色調も変えられるようになった。あれ?色が変えられると言うことは、単色の光も出せるのか?波長が変えられるなら、赤外線とか紫外線とか、もしかしてX線とかマイクロ波とかも出せるのか?・・X線はやばいな。これ全方位に光が出てるし。とりあえず単色光を試してみよう。純粋な赤い光のみを発するライト。今度は2回目で成功した。青い光、緑の光、オレンジ色の光も出してみる。楽しくなってきた。もしかしてイルミネーションのような物も出せるかも。魔力はごく弱く、弱めの光にして、4色の光を各10個ずつ出し、空中でくるくる回しながら明滅させてみる。うまく行った。なかなかきれいだ。ローズも口を開けて眺めている。気に入ったかな?

 「わっ、わっ、何ですかこれ?!」レスリーの声。

 「まあ、すごくきれいです。」アベリアも帰ってきたようだ。

 「レディク様が、魔道の技の研究をされていました。光の初級魔法を学ばれて、わずか30分ほど。超高度なオリジナル魔術を開発されました。レディク様が、1週間研究を続けられれば、世界を滅ぼすような究極魔法も開発されるかも。」ローズがおかしな事を言い出す。

 「何を言い出すんだ。世界を滅ぼしたりしないから。」

 「もちろんです。レディク様はお優しいお方。きっと慈悲深い支配者として、世界の民を導いてくださるに違いありません。」アベリアまでおかしい。

 「魔王じゃないから。世界征服とかしないから。」

 「レディク様なら魔王でもいいですー。私気にしません。」レスリーまで。

 「私が気にするよ。」3人の私に関する認識が、ますますおかしくなってしまったようだ。


 夕食を食べ、アベリアが木製の桶をいくつか買ってきたので、夕食の後でお湯をため、体を拭いた。寝る前に、毎晩続けている水魔法の練習をしたが、精神的な疲労を感じたので軽めに切り上げる。

 ベッドが二つしかないので、どうするか相談すると、応接室のカーペットが毛足が長くて柔らかいというので見に行く。すでに子供達が寝転がって遊んでいる。そこに、レスリーが大きなクッションをいくつも運んで来た。物置部屋にあったらしい。さらに毛布も持って来た。

 「けっこう快適そうだな。」

 「でしょー。レディク様も、みんなで一緒に寝ませんかー。」レスリーが言う。

 「えっ、・・いや、私はやめておこう。」野営中ならともかく、美女三人といっしょに寝るとか、私にはまだ難易度が高い。



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