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3話 前編

【声劇用台本】

【上演時間 各話約15分~20分】

『里中ハルの不思議なジョウキョウ日記』第3話前編

作:伴野久兵衛


■登場人物

里中ハル(サトナカ ハル):田舎から上京してきた純朴な女の子

高津リョウ(タカツ リョウ):何かの理由で、女性の体に入ってしまった引きこもり青年

アズリエル:天界からやってきた天使。チャラい、軽い、そしてウザい



■パート0

ナレ 「初めに、声劇をお聞きになるリスナーの皆様に、お願いがございます。

    本作には『固有名詞っぽいモノ』が度々出て参りますが、それらは全て、

    現在・過去を問わず、実在の人物・企業・団体・その他の存在とは    一切関係が御座いません。

    仮に何か思い当たる節を感じても、それはリスナーの皆様の『思い違い』で御座います。

    本作とは一切の関係は御座いませんので、

    他のリスナー・演者・放送主へお確かめになる行為は慎まれるよう、強くお願い申し上げます。」


ナレ 「ここまでのあらすじ。

    大学入学のため上京した里中ハルは、気が付いたら女性の体になっていた高津リョウと出会う。

    困惑する二人の前に天使アズリエルが現れ、事の起こりを説明する。

    ハルの隣人だった豊島ナナミは、アズリエルの放ったホームランボールが当たり、魂が砕け飛び散ってしまった。

    そして、今ナナミの体には自殺志願者だったリョウの魂が入っている。

    これからアズリエルはナナミの魂を回収するため、

    しばらくリョウは豊島ナナミとして生活することを告げられる」


ハル 「4月6日。

    今日は入学式。いよいよ大学生活のスタート。

    なんの授業とるか、サークルどうするか、バイト始めたいなぁとか、楽しみなことがいっぱい。

    入学式の後オリエンテーションを受けて、早々に帰宅する。

    リョウさんは相変わらず液晶タブレットとにらめっこ。

    アズにゃんさんは居なかった。せっかくお土産にドーナツ、買ってきたのになぁ」


■パート1

ハル 「リョウさん?」

リョウ「……」

ハル 「リョウさーん?」

リョウ「……」

ハル 「リョーさーんっ!!」

リョウ「はいっ?はい!」

ハル 「ドーナツ買って来たんで食べません?」

リョウ「え?あ、いただきます」

ハル 「じゃあ、コーヒー淹れて下さい」

リョウ「え…?俺が?」

ハル 「うん。私、リョウさんの淹れたコーヒー好きなんですよ~」

リョウ「えっ!ほんとに?」

ハル 「ホントですよ!ね?お願いしますっ!」

リョウ「インスタントコーヒーなんて、誰が淹れても一緒だと思うけど…まぁ、良いか」


ハル 「またタブレット見てたんですか?」

リョウ「うん。ナナミさんのデータ、少しでも頭に入れとこうと思って」

ハル 「あんまり無理しない方が良いですよ。

    リョウさんの、自然な振る舞いって言うのかな。

    そういう部分があっても問題ないって、思うんですけどね」

リョウ「それは思うけど…

    でも自然とナナミさんらしい考えや振る舞いが出来るようにならないとさ。

    元が男だから、喋り方とか素だとねぇ」

ハル 「なんかリョウさん、役者さんみたいですね」

リョウ「え?」

ハル 「ほら!役者さんが、インタビューとかで言うじゃないですか?

    『役になりきるために、普段からどうやって動くかって考えてます』みたいの」

リョウ「あ、確かに。でもそんな感じかなぁ」

ハル 「なんか面白そうですねぇ」

リョウ「とんでもない!あの膨大なデータ見てると、頭クラクラしてくるもん」

ハル 「あのデータ、凄いですよねぇ!

    身長、体重、視力に、脚のサイズ、3サイズとか…

    私、3サイズなんか測ったこともないですよ」

リョウ「体だけじゃなくて、クセとか趣味とか、それに周りの人の呼び方なんかまで載ってるんだよ」

ハル 「呼び方?」

リョウ「一人称は『あたし』。

    父親は『お父さん』、母親は『お母さん』とか、お兄さんが『おにぃ』とか」

ハル 「うっわー!私…それ知られるの、ちょっと恥ずかしいなぁ」

リョウ「だよねぇ」

ハル 「え?だよねぇって、なんで知ってるんですか?」

リョウ「え?何?何を?」

ハル 「え?」

リョウ「え?」

ハル 「あっ…私、ひょっとして墓穴掘りました?」

リョウ「あー…掘りかけた…んじゃない?まぁ、だいたい想像つくけど」

ハル 「えっと…その、スイマセン。良い歳して『パパ』と『ママ』なんです」

リョウ「いや、女の子だし、良いんじゃないかと思うけど」

ハル 「あの、人前では『父・母』だすからね!

    その、せいぜいたまに『お父さん・お母さん』って呼んじゃうくらいですよ?」

リョウ「うん。いや、分かってるよ」

ハル 「でも、笑ってる!」

リョウ「笑ってないよ!」

ハル 「笑ってますよ!絶対、バカにしてるー!」

リョウ「してないってば!」

ハル 「もー!リョウさん嫌いっ!もう一緒に買い物行きませんからね?」

リョウ「え!それは困る!じゃあ、ドーナツ最後の食べて良いから!」

ハル 「んー…じゃあ、許します」

リョウ「あー…助かります」


ハル 「って、これ、アズにゃんさんの分だった!」

リョウ「え?」

ハル 「いや、その、1個くらいは残しといてあげようかなって…」

リョウ「えぇぇぇ!」

ハル 「一口かじっちゃったけど、ダメかな?もう無理かな?」

リョウ「なんとか隠せ…なさそうだなぁ」

ハル 「歯形…ついてますもんねぇ」

リョウ「うーん…よしっ!食べてしまうか。そして何も無かったことにしよう」

ハル 「そう…ですね。うん、食べちゃいましょう!」


■パート2

ハル 「4月24日。

    今日も3人で夕飯を食べる。

    リョウさんの料理の腕はサッパリだし、アズにゃんさんは面倒くさがりだし、作るのはいつも私の役目。

    でも、3人で食べるご飯は楽しいし、食費も節約できるから、私としては嬉しかったりする。

    みんなでご飯を食べながら、その日の出来事を話し合ってると、

    ちょっとした嫌なコトでも、全部たいしたコトじゃないって思えるから不思議だ。」


アズ 「ただいまぁ!」

ハル 「おかえりなさーい」

アズ 「おかえりなさーい…だけ?」

ハル 「えっ?なんですか?」

アズ 「そこは『おかえりなさい。ご飯にする?お風呂にする?それともア・タ・シ?』って流れでしょ?」

ハル 「え?えぇっ!?」

アズ 「はい、もう一回!俺、ドア開けるトコからやるから…」

リョウ「【咳払い】えーっと!さっさと中に入ってくれない?後ろ、詰まってるんだけど!」

ハル 「あっ!リョウさんも、おかえりなさい」

アズ 「なーんだ、帰ってきちゃったのか。せっかく良いトコだったのに」

リョウ「へぇへぇ。わるーございましたね。っつーか、ココ俺の部屋っ!!」


アズ 「んっ!うんまーい!うまいよ、このポテサラ!」(モグモグしながら)

ハル 「ホントですか?」

アズ 「うん!このくらいジャガイモが残ってる方が、俺は好きだなー」

リョウ「ポテサラにソースそんなぶっかけて、味も何もあるかよ?」

ハル 「別に良いんですよ。味の好みは、それぞれだから」

アズ 「そもそも俺は、食感の話をしてるんだけどね?」

リョウ「うっ…」


アズ 「で、リョウくん。バイトどーよ?慣れた?」

リョウ「んー。まぁまぁ…かな?」

ハル 「この間、お店の前、通った時に見ましたよー」

リョウ「うそっ!?恥ずかしいんだけど」

アズ 「ちゃんと働いてた?」

ハル 「大丈夫ですよ。忙しそうに頑張ってましたから」

アズ 「ふーん…ねぇ、●タヤって社割ないの?新作のDVD、安く借りれない?」

リョウ「どーせAVだろ?そもそもこの姿で、そんなもん借りれるか!」

アズ 「ちっ!使えねーなぁ」

リョウ「はっ!?誰が使えねーだと?この変態堕天使が!」

アズ 「変態は認めるが、堕は認めんっ!」

ハル 「え、変態は認めちゃうんだ…」

リョウ「地上で毎日ノホホンと暮らしてる天使なんか、どう見たって堕天使だろうが!?」

アズ 「こら待て!誰がノホホンだって!?」

リョウ「カケラ集めとか言って、毎日東京見物してるだけじゃねーか!?」

ハル 「まぁまぁ、2人とも落ち着いて。ね?」

リョウ「あいつが使えねーとか言うから…」

アズ 「俺の苦労も知らねーくせに…」

ハル 「2人ともっ!いい加減にしなさいっ!!」


ハル 「所で、カケラはどのくらい集まったんですか?」

アズ 「半分弱…かな。見る?」

ハル 「見たいです。魂ってどんなモノか、かなり気になるし…」

アズ 「良いよ。ちょっと待っててねー」

リョウ「うわっ!そんな無造作に…」

ハル 「スーツのポケットに入れてるんだ…」

アズ 「だって、ちょうどいい入れ物が無いからさぁ」

ハル 「じゃあ、何か入れ物あげますよ。えっと、この箱なんかどうです?」

アズ 「もうちょい小さい方が良いな。うーんっと…あ、これ使っちゃダメ?」

ハル 「えっ?それですか?」

アズ 「うん、このくらいだと持ち運べるし」

ハル 「よく洗えば平気…だと思いますけど」

アズ 「サンキュー!じゃあ、さっそく洗ってくるわ」

リョウ「なぁ?良いのか、あれで?」

ハル 「ナナミさん、知ったら凹むでしょうねぇ」

リョウ「だよなぁ…」

ハル 「自分の魂、保管されてたのが…」

リョウ「塩辛の入ってたビンだもんなぁ」


リョウ「へぇー!魂って、こんななんだ!」

ハル 「なんか、大きいビー玉みたいですね」

リョウ「でもちょっと光ってるね」

アズ 「それはね、魂が生きてるって証拠」

ハル 「へぇ…」

リョウ「このカケラって、くっつくの?」

アズ 「くっつくよ!これで」

リョウ「待て、それって!」

ハル 「アロン●ルファ!?」

アズ 「ま、それっぽいものかな? 魂の補修専用の接着剤」


■パート3

リョウ「で、東京観光はどーなの?」

アズ 「だから観光じゃねーから!」

ハル 「やっぱり大変なんですか?」

アズ 「まぁ、大変って言やぁ…大変?」

ハル 「でも魂って、どうやって見つけるんですか?」

アズ 「それはね、コレで!」

リョウ「ドラゴンレーダー!?」

アズ 「みたいなもんかな。

    さっき見たように、魂って特殊な光と言うか、パワーを発してるんだけど。

    そのパワーをコイツが拾って、地図の上に表示してくれるわけ」

ハル 「じゃあ、それを追いかけて行けば見つかるんだ」

リョウ「それなら楽勝じゃん」

アズ 「いやいや。場所が分かったって簡単に取れる場所に、毎回あるとは限らんのよ」

リョウ「って言うと?」

アズ 「お台場の橋の真ん中だったり、業平橋にある電波塔の先っぽだったり、パレスのお堀の底だったり?」

ハル 「それ、どうやって取るんですか?」

アズ 「他の動物に乗り移って…かな?」

ハル 「乗り移る!?」

アズ 「意識と言うか、魂を乗っ取る感じ?」

リョウ「なんか悪霊が憑依するみたいだな。そんなコト出来るのかよ?」

アズ 「悪霊って失礼な!まぁ、短時間なら出来るよ。15分くらい?」

ハル 「それで、何の動物に乗り移ったんですか?」

アズ 「お台場の橋はユリカモメでしょ。電波塔はハシブトカラス。お堀はニシキゴイかな」

リョウ「なんか楽しそうじゃん」

ハル 「ですよね?私も鳥になって空を飛んでみたいなぁ」

アズ 「冗談じゃない!

    ユリカモメはDQNなガキにロケット花火向けられるし、

    カラスは近所のオバチャンに追い掛けられるし、

    コイなんか外国人が裸の丸出しで飛び込んできたんだぞ?」

ハル 「うわぁ…大変だぁ」

リョウ「都会の動物って、壮絶に生きてるんだなぁ」


ハル 「そう言えば、カケラが他人の家とか、ビルの中とかにあったら?」

アズ 「その位なら、無断でヒョイヒョイ入るけどねぇ」

リョウ「入るのかよ!あっ、姿を消すとか、薄い壁くらいすり抜けれるんだっけ?」

アズ 「そうそう!聞いて!聞いてよ!

    今日なんか、女子高の更衣室の中にあってさー!

    姿消して取りに行ったんだけど、ちょうど体育の時間の前でね!

    もう、女子高生の生着替え始まっちゃって大変!!バーッチリ見ちゃった!

    最近の女子高生って、エッチな下着つけてるねぇ」

ハル 「変っ態!」

リョウ「お前、地獄に落ちろ…」


アズ 「あっ、でもね?ほら、その、それは仕方のない事情ってヤツで…」

ハル 「変態が何か言ってますよ」

リョウ「変態の言葉は、俺らに通じないのにね」

アズ 「ちょ!そんな扱い?」

ハル 「変態のくせに、人並みに扱って欲しいっぽいですけど」

リョウ「そもそもその変態、人じゃないから。適当にあしらっておけば?」

ハル 「そうですね。 変態さん、ご飯終わったなら、とっとと帰って貰えませんか?」

アズ 「ぬぉぉぉぉん!!すみばせんっ!僕が悪かったので許じてぐだざいっ!」

ハル 「だそうですけど。どうします?」

リョウ「どうしよっかなぁ?」

アズ 「明日の夕飯、僕がオゴリまずがらっ!お願いじまず!」

ハル 「オゴリ!?ホントに!?」

リョウ「言ったね?」

アズ 「あの…。なるべく、安いもので…」

ハル 「わーい!何が良いかなぁ?リョウさん、何食べたいですか?」

リョウ「最近、焼肉食べてないなぁ・・・あっ、寿司も食べたいなぁー」

ハル 「お寿司!お寿司、良いですね!!」

アズ 「えっ?す、寿司っ?」

リョウ「もちろん、カッパとか蔵みたく回るのは却下ね」

ハル 「回らないお寿司ですか!!良いですね!ウニ食べたいです!」

リョウ「俺はトロ食いたいな。 良いよね?さっきオゴるって言ったもんね?」

ハル 「そうですね。オゴってくれなきゃ許しませんよ?」

リョウ「今更、さっきの取り消すなんて・・・言わないよなぁ?」

ハル 「そんなコト、偉大な天使さんが言えるわけないじゃないですか!」

リョウ「だよなぁ! そんなコトしたら、『嘘吐き変態堕天使』だもんなぁ」

アズ 「はぁ… 分かりました!分かりましたよ!」

ハル 「やったー!!」

リョウ「よっしゃー!寿司だー!!」



ナレ「後編に続く」



3話前編 了


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