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恋愛トレード  作者: yuri
9/14

Trade.9



「……長い回想終わり」

「あ、食べ終わった?」


リントが私に声をかける。

気がつくと、ミナトくんとミユも二回目のジェットコースターから帰って来ていた。

私がアイスを食べ終わるのを、待っててくれたみたい。


「あ、ごめんなさい」

「んーん、いーよいーよ!

ぼおーっとバニラアイス舐めてるユイも可愛かったよおー!」


いつもの三倍はテンションの高いミユ。

今日はいつもの制服姿ではなく、ピンクのミニワンピを着ていた。

女の私から見てもすごく可愛い。


「さーて、そろそろ行きますかっ」

「どこに?」


首をかしげると、リントがいたずらっぽく答えた。


「お化け屋敷。ホンモノ、出るって噂」



「いやあああああ!!」

「ぎゃあああああ!!」

「こわいよおおお!うわーん!こっち来ないでえええ!!!」


お化け屋敷に響き渡る声。

以上の叫びは、すべて須藤みゆきさん(15)のものである。


「こっちまできこえてくるよ、間隔結構あけて入ったのにさ」

「あの調子じゃ腰抜かしてヘタッてるかもね」


こちら、リント&ユイ ペア。

お化け屋敷に二手に別れて入ったのだけれど、先に入ったミナトくん&ミユ ペアのおかげで、というか泣き叫ぶミユのおかげで、お化けのひそむ位置が大体わかってしまう。

うん、全く怖くない。

とはいえ真っ暗だし、渡されたライトはひとつだけだから、私たちはピッタリくっついて手を繋いでいた。


こんなにリントと距離が近いのは、さすがに初めてだ。


お互いの息づかいを感じる。

話さなければ、心臓のドキドキまで伝わってしまいそうだ。


リントは、いい人。

たまにミユが羨ましくなるくらいだ。

優しくて、気をつかってくれて。

……あれ、私、誰と比べているんだろう。


「そろそろ、外出れるんじゃない?」


いつの間にか静かに黙っていたリントが立ち止まり、前の方を指差した。

確かに、かすかに光が見える。


「ほんとだ、やったね!あんまり怖くなか…」


すこし顔を仰向けて、リントの顔を見ようとした、そのときだった。


私の言葉をさえぎるようにして、

私の頭の後ろに手を回して。


リントが、

私に、

キスをした。



「うわあああんユイいいいい!!」


お化け屋敷を出ると、私めがけてミユが抱きついてきた。

せっかくのメイクも台無しだけど、ミユの泣き顔は赤ちゃんみたいに可愛かった。


「こっちまで声、きこえたんだけどー」

「すごい声だったよな」


リントとミナトくんが笑いながら話しているのを背に、私はミユが泣き止むまでその頭を撫で続けた。



帰りの電車のなか。

無意識に唇に手をやっていた。

あれから私は平常心を保つのに必死で。

どうして?なんで?

『恋人トレード』は遊びなのに?

リントはなんで私にキスをしたの?


唇が触れ合った瞬間、

「違う」と思った。


まとう香りが、違った。

味も違う。

あんなに苦いキスは初めてだった。

舌の痺れは、いつまでも残っている気がした。


結局私はその日、最後まで誰の顔もマトモに見れなかった。


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