Trade.6
『恋愛トレード』が始まってからというもの、私は「彼氏」であるリントと過ごすことが多くなった。
リントは話しやすい。
姉と妹がいるからか、女の子の話題にもそこそこついていける。
見た目は不良に見えるけど、授業もきちんときいているみたい。
わからないところを訊くと丁寧に教えてくれる。
「オレ、ユイちゃんのこと誤解してたかも」
ある日の帰り道、リントは照れたように私に告げた。
「ユイちゃん、すごくクールで、ちょっとキツい子なんだろなって思ってたんだ。
オソロシク美人だし、なんつーか、ファンも多いじゃん?
遠くから見て満足するタイプの女の子だなって思ってた」
「よく言われる」
私は苦笑した。
パーマが全然かからない、真っ直ぐの黒髪に、いくら日光の下に出ても焼けない生白い肌。
眼は大きいけれど釣り上がり気味で、生意気な印象を与えるらしい。
そんな私はお父さん似。
昔は、お母さん似で優しい顔の弟がうらやましかった。
「でもさ、話してくうちに、わかったよ。
ユイちゃんは無口でもクールでもなんでもない。
感情を表に出すのがニガテなだけなんだなって。
ホントは可愛いもの好きだしね」
「えっ?」
「手ぇ出して」
わけもわからず、言われるままに、手を差し出した私。
「はい。好きなんだろ、それ」
リントは私の耳元で囁いて。
そして私に何かを握らせた。
「今日バイトなんだ。
ここ曲がる。気をつけて帰ってね、じゃあね!」
突風のように去ってしまったリント。
「何だろ……?」
そっと手をひらくと、そこには。
「ら、ラビラビリボンちゃんの限定キーケースっ!!」
ラビラビリボン。
小さいときからお気に入りの、ウサギのキャラクターだ。
昔は集めたグッズを使ってたんだけど、私の見た目にそぐわないって言われ続けたので、諦めて家に飾っていた。
だから、私がラビラビリボンのファンだってことは家族以外はミナトくんしか知らないはず。
「あ」
思い出した。
この前、学校の帰りに一緒にショッピングモールに寄ったとき、文房具売り場にラビラビリボンのグッズがならんでいた。
私は何も言わなかったけど、何度も何度も見つめていたんだ。あとで買いにこようと思って。
その姿を見られていたに違いない。
「すごい観察眼……」
しかも、限定グッズ。
手に入りにくいものだから、すごく嬉しい。
にしても、ふつうに渡してくれればいいのに。
別れ際のリントの様子を思い出す。
耳、赤くなってた。
意外に照れ屋さん。
その日の発見に、私はふふっと笑った。




