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恋愛トレード  作者: yuri
5/14

Trade.5


「それで、何部にするんだ?」


マキ先生がふと顔をあげた。


あ。

何にも考えてなかった。


肝心の、部活動の内容を決めていなかった。


「週1でダベるだけの部活がいーでーす」


はいはーい、と手を挙げたのはリント。


「ちょっとリント!

でもまあ、あたしもバイトあるし。

そんなにガッツリは参加できないから、ゆる〜い感じがいいかも」


ミユが唇に手を当てて同意する。


「俺も他の部活の手伝いで忙しいから、それでいい」


ミナトくんに続けて、私も口を開いた。


「私も、週に何度か部室で楽しくお喋りとかできたらなって」

「でもそれだと、申請許可が降りないぞ。大体それ、何部だよ」


おお、マキ先生が今日初めてマトモなことを言っている。


うーーーん。


「よし、こうしよう。

部活名は、恋愛科学部」


「「「「は?」」」」


おお、キレイにハモった。

マキ先生、貴方は何を言っているの?


「いいか。

生きづらいこの時代。

俺たちが生きぬく上で、

1番大事なものは何か?」


ぽかんとしている私たちに構わず、先生はズビシ、と人差し指を突きつける。


「金か?

仕事か?

地位か?

名誉か?

いや、そうじゃない。

そんなセコいもんじゃない。

大事なのは……」


マキ先生はそこで口を切り、私たちの顔を見渡した。


「コミュ力だ」


「コ、コミュりょく……」

「そうだ、コミュニケーション能力だ。

どれだけ人の心を掴めるか?

それがカギなんだ。

コミュ力こそが社会をつくる」

「はあ……」

「お前らは高校一年生だが、これからどんどんいろんな人に出会う。交際の範囲は広くなるだろう。そこで役立つのがコミュ力。それを恋愛科学部で鍛えるんだよ」

「なんでコミュニケーションが恋愛関係限定なんだよ」


このホスト教師、リントの的確なツッコミも涼しい顔でスルーである。


「それで、恋愛科学部は具体的に何をするんですか」

「簡単なことだ。

恋愛を科学するんだよ。

恋とは何か?

相手との付き合い方は?

どうすれば上手く恋愛できるのか?」


マキ先生はニヤリと笑う。

そんな顔も無駄にセクシーだ。


「お前らは、それぞれ付き合ってるんだろ?

ふた組のカップルが、部活の間は一部屋で過ごすわけだ。

ここで実験だ。

お互いの恋人を交換してみたら、一体なにが起こるのか?

恋愛科学部、今月の課題は『恋人トレード』!」




「結局恋愛科学部になるなんて」


学校からの帰り道。

私は肩を落とした。

マキ先生に言いくるめられた形で、私達は恋愛科学部に入部することになった。


「ワケガワカラナイヨ……」

「ユイ、宇宙人になってる」


隣を歩くミユが困ったように眉を下げた。

男子二人は部の代表者として書類を出しに行くから、私たちは先に帰らせてもらったのだ。


マキ先生の「恋人交換」発言。

ありえない、と私は思った。

同意する人なんて絶対いないだろうと。


だけど。


「いいかもな」

「うん、いいかも」

「やってみよう」


なんと、私以外の人はみんな乗り気だったのだ。

ノリが悪いと思われるのもイヤで、私も渋々頷いた。


「ずーっと取り替えっこするわけじゃないよね?」

「もちろん。期間は一ヶ月。

その後、簡単なレポートにして俺に提出だ」

「げっ!」


レポートときいてリントはイヤな顔をしたけれど、ミユに睨まれて慌ててふつうの顔に戻った。



その後、みんなで話し合って決めたこと。


「恋人トレード(交換)」は学校にいる間だけ。

手をつなぐのはOK。

ただしキスはしない。

部員以外には、秘密にする。


「遊びとはいえ王子様と付き合えるー♪」

ミユはそんなふうに浮かれていて。私も楽しみなフリをした。


けれど。


辛くないの?

さみしくないの?


私が、他の男の子の隣にいるんだよ。


ミナトくんは、他の女の子にその優しい目を向けるの?



ミナトくん。

私は貴方がわからない。



「いやになっちゃったのかな、私のこと」


曲がり角でミユと別れて、家まで走った。

自分の部屋の中でひとり呟いて。


一ヶ月だけの、ガマンだ。

私はポスっと枕に顔を埋めた。


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