Trade.4
「話はわかった。協力するよ」
ふたりに紹介して、部活のことも説明して。
ミナトくんは笑顔で了解してくれた。
きゃー、王子様が笑ったあ、とミユは騒いでいる。
リントとミナトくんはもともとお互いの名前は知っていたらしい。
さっそくうちとけて、談笑している。
「ミナトくんは、他の部活からもお誘いあるんじゃないの?」
「んー、あるというか、ありすぎるというか……」
そう、文武両道なミナトくん。
いろんな部活からスカウトを受けているらしい。
サッカー部、野球部、陸上部、バスケ部、剣道部、弓道部。
美術部に演劇部に数学部まで。
何でもできるって逆につらいね。
「ひとつに決められないから、俺も迷ってたんだよね。
兼部もできるし、途中から入ってもいいんだけど、とりあえず明日までに入部届けは出さないとだし。だから、ちょうど良かった」
そんなこんなで、部員は四人確保した。
「あとは、顧問の先生だね」
「あ、それも俺に任せてよ」
ミナトくんは微笑みを浮かべた。
「アテがあるんだ」
その日の放課後、私たち四人は図書室を訪ねた。
高校の図書室はすごく広い。
メインカウンターの奥に、その先生は座っていた。
「マキ先生、ちょっといいですか」
ミナトくんが声をかけると、先生は顔をあげた。
私が何か言う前に、ミユが小さく声を漏らした。
「ほ、ホストだあっ!」
……うん、私もそう思った。
細身の黒いスーツに、金の時計。
ホストにしては(?)控えめに盛った茶髪。
甘くて中性的な顔立ちは、外国の俳優さんのナントカに似てる。
なんだっけ。えーと。
「新任教師の牧です。
図書室の管理してるよ。
まあ、国語も教えてるけどね。
百合のように清楚な君は1年B組の椎本さん。そしてコスモスのように可愛らしい君は同じく1Bの須藤さんだね?」
すっごいセクシーな声で囁かれた!
なぜか、男子は無視されている、というかむしろ、視界に入ってない……?
びっくりしていると、横からぐいっと引き寄せられた。
見上げると、何故か満面の笑みを浮かべたミナトくん。
「ミ、ミナトく」
「牧先生。俺は貴方に貸しがありますよね」
「チッ。高柳か。
入学そうそう脅しやがって、全くイイ根性してやがる」
「先生にちょっとオネガイしたいんですよ。きいてくれますよね?」
うわあー。なんかミナトくん機嫌悪いよ。
私にはわかる。
笑顔が、黒い……。
「あのね、マキ先生!
一生のお願いなの。
あたしたちの部活の顧問になってほしいの」
うるうる。
カウンターに乗り出して、ミユがちょこんと首を傾げた。
かなり可愛い。確信犯?
私も慌てて笑顔を作る。ミユほど可愛くはできないけど、いつもの仏頂面よりマシでしょ。
「先生、お願いします」
ニコッ。
せいいっぱい笑ってみた。
「………。」
「………。」
「………。」
「………。」
「………。」
あれ。
なんか変な空気……?
ミユはいつもより目を三倍くらいキラキラさせて。
リントはぽかんと口をあけて。
ミナトくんにいたっては、怒ったような、照れたような、複雑な表情で。
マキ先生は何故か鼻を押さえている。
みんな、私の顔を見つめている。
え、今の表情そんなにヘンだった?
「ユイちゃんの頼みなら何でもするよ……!」
マキ先生は無駄なフェロモンを撒き散らしながら、力強く頷いた。
「じゃあこの書類にサインを」
すかさずミナトくんが差し出した紙に、マキ先生は名前を記入した。
「マキ♡ツバサ(^ω^)」
すごいギャル文字だった。
そんなサインでいいのか。
てか、ほんとに教師?




