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恋愛トレード  作者: yuri
2/14

Trade.2


「ユイ、いる?」


放課後。低めの優しい声が響く。

ざわざわしていた教室が一瞬静かになった。


「あ、ちょっと廊下にいるの、『王子様』じゃない?」

「きゃー!高柳くん、やっぱイケメン!」

「うわ綺麗ー。脚ながー」


クラスメイトが、興奮したような囁きをもらす。

そんな中で、『王子様』はもう一度私の名前を呼んだ。

「あ、いた。ユイ、帰ろう」

そう、廊下から、私をまっすぐ見つめていたのは。


「……ミナトくん」


何人もの女の子をとりこにした、『王子様』スマイル。


「わ、ユイ呼ばれてるよっ!

王子様のお出迎えだねっ、優しいー、さすがあ」

「もう、そんなんじゃないってば。……私先に帰るね。じゃあまた明日ね、ミユ」

「はーいっ!ばいばい、気をつけて帰るんだよー?」

「ありがと、ミユもね」


ミユと、新しくできた何人かの友達に手をふって、教室を出た。


ミナトくんと並んで廊下を歩く。


……背がまた高くなった、かも?

私も163センチと、女子としては背の高い方だけど。それでもプラス15センチくらいはミナトくんの方が高い。


彼の横顔をそっと盗み見る。

スッと高い鼻、切れ長の涼しい目。

人形のように整っている。

そして、しなやかな体つき。

高級な猫みたいだと、いつも思う。


高柳湊。

学業優秀、スポーツ万能な生徒会長。

今日の入学式では式辞を読んでいた。


私はそのミナトくんと、中3のときから付き合っている。


「ミナトくん、迎え、ありがと。……A組の感じはどう?」

「もとから仲いいやつが結構同じクラスにいた。

まあ、俺は器用だからどこでもうまくやれるけどね。

俺のことよりユイだろ。B組はうるさい奴が多いらしいし」

「うん、すごいにぎやか。でも楽しいよ。新しく友達もできたし」

「友達?誰?」

「んーと、須藤みゆきちゃん。

ちっちゃくて明るくて優しいの」


ふーん、と相槌をうつミナトくん。

要領もよくて、大人うけもいい。

穏やかで、誰にでも優しい。

でも真面目過ぎなくて、冗談もちゃんと通じるから、友達もたくさんいる。

そんな完璧なミナトくんだけど、ひとつだけ欠点がある。


「まあ、気をつけなよ。ユイは人を見る目がないからね。ちょっと優しくされると、コロッとだまされるから」


……気を許した相手には、毒舌。

どこが『王子様』なの!

見た目だけじゃない、ホントに!

人のこと言えないけど。


「だまされませんよーだ。

ミユはいい子だもん。

ミナトくんみたいに意地悪じゃないし」

「俺の意地悪はユイ限定だよ。

ユイは特別。よかったね」

「なにそれ全然嬉しくない……」


すねてうつむくと、ぽんぽんと軽く頭を撫でられた。

あたたかい大きな右手が、そのまま私の左手をとらえる。

……恋人つなぎは、いまだに慣れない。


「ほら、信号変わる」


校門を出た私たちは、そのまま横断歩道を走った。

ミナトくんは自然に私の速度に合わせてくれる。

口は悪いし、二重人格だけど、やっぱり優しい。

にまにま。

ゆるむ頬がおさえられない。


「ところでユイ、部活決めた?」

「へ?」



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