Trade.13
*
「リント!」
学校に戻ると、校門の前に顔を真っ青にしたリントがいた。
「ミナト、ユイちゃん。
電話でも説明したけど、ミユと連絡がつかないんだ」
「さっき、ミユから電話がきたの。咲…山下咲に連れ去られたみたい。
場所をきこうと思ったら、すぐ切れた。咲に携帯取り上げられたのかも。どうしよう……」
まさか、こんなに早く咲が動くなんて。
私のせいだ……。
何が何でも、今日はミユにくっついておくべきだった。
「後悔してても仕方がない。
先生……いや、警察に連絡を」
「待って!
ミユから電話!」
私はすぐに電話に出た。
「椎本ユイね?」
確認する声は……咲のものだった。
「咲、ミユをかえして。
これは犯罪だよ」
「犯罪?あんたたちの存在の方が犯罪でしょ。
高柳くんにメーワクばかりかけて。わからないの?
高柳くんにふさわしいのはあたし。あんたじゃない。ここにいる須藤でもない」
「そんなことはきいてない!
いいからミユを出して!声をきかせなさいよ!」
「ふうん……まあいいや。
お望み通り、きかせてあげる」
べり、と乱暴に何かを剥がす音がして、
「ユ……イ、来ちゃ、だめ……」
弱々しいミユの声。
「ミユ!ミユ、どこにいるの?
今すぐ助けに行くから!」
私の叫びに、咲の壊れた声が答えた。
「遊園地のお化け屋敷。
あんたたちが昨日行ったところ。
必ず高柳くんを連れて来てね……
警察や学校に連絡したら、須藤の命はないと思って」
*
私たちは遊園地に急いだ。
何をされたかわからないけれど、ミユはずいぶん弱っているようだった。
あの元気なミユが。
胸がズキズキと痛んだ。
遊園地に着き、お化け屋敷に入る。係の人はなぜか不在で。
三人で手をとりあい、中に入った。
「ミユ、ミユ!」
リントが叫んだ。
「思ったより早かったね」
咲が口を歪めて立っていた。
「ミユはどこ!」
私は必死で辺りを見回した。
すると、咲の後ろに転がっていたモノが動いた。
ミユだ。
ミユは足と手を縛られ、口にガムテープを貼られていた。
「ミユ!!」
リントがいち早く、ミユのそばに行こうとする。
が、それを見た咲は隠しもっていた包丁をミユの首に突きつけた。
「動かないで」
ぐっ、と足を止めるリント。
怒りに身体が震えていた。
「山下さん。
君が欲しいのは俺だろう?」
ずっと黙っていたミナトくんが声をかけた。
「高柳くん!!
来てくれたんだ」
咲が、嬉しそうな声をあげて答えた。
「高柳くん、いいえ、ミナト。
ミナトはあたしのモノだよね、
ずーっと騙されてたんだよね、
可哀想に。
でももういいの。
一緒になりましょう?」
目の焦点が合っていない。
狂ってる。
「やめて……ミナトくんに手を出さないで!」
私は思わず声をあげた。
咲がうるさそうに私に目をやろうとした、その瞬間。
「リント今だ!」
ミナトくんが素早く咲に駆けより、凶器をはたき落とした。
そのすきに、リントが咲のもとからミユを離そうと抱き上げる。
「!……このっ!」
咲は今度は私のもとに駆けてきた。身がすくんで動けない。
咲の手が私の首にかかろうとする、その瞬間……
「ユイ、無事?」
咲の手は私の寸前で止まり、そのまま崩れ落ちた。
首の後ろを叩かれ、気絶したらしい。
咲の後ろにいたのは、不敵な笑みを浮かべたいつものミナトくん。
「ユイ、相変わらず怖がりだね」
私は腰が抜けて、へなへなとその場に座り込んだ。




