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恋愛トレード  作者: yuri
12/14

Trade.12


「そっか。山下さんが」


私の話をきいたミナトくんは、難しい顔をして顎に手をやった。

バスケ部の活動が終わったあと、私たちはふたりで学校近くの喫茶店に入った。

優しい顔のマスターが、美味しいコーヒーをいれてくれるお店。

付き合いはじめた時からよくここで過ごしたけれど、こうやって二人きりで向かいあうのは久しぶりだ。


「それはミユちゃんが危険だな。

わかった。

なんとかしよう」


「私にも協力させて。

待ってるだけじゃいやなの」


そう告げると、ミナトくんはすこし驚いたような顔をして。


「ユイ、成長したよなあ」

「もう何なの、同い年でしょ」

「そうだけど。

こういうこと、ひとりで抱え込まずに俺に相談したし、えらいえらい」

「むう。バカにされてる気がする」


口を尖らすと、ミナトくんは私の頭をぽんぽんと撫ぜた。


「ミナトくんのそれ、癖だね」

「え?」

「頭ぽんぽんするの。

もしかして、無意識?」


ミナトくんは私の問いに、ふわりと笑みを浮かべ。

私の頭に置いた手を、そのまま髪にすべらせて。


「今だけ、恋人トレード、ナシでいいかな」


私の髪にそっと唇を寄せた。


「好きだよ、ユイ」

「だめ、ミナトくん……まだ、トレード中。浮気になっちゃうよ」

「ユイとなら浮気して、何もかも捨ててもいいかな」


冗談とも本気ともつかない調子で、ミナトくんはそう言った。


私は、ミナトくんが好き。

胸が苦しくて、切なくて。

恋は甘いだけじゃない。

苦しいこと、苦いことのほうがよっぽど多い。

だけど恋をせずにはいられないのは、目の前の貴方が愛おしいから。大切だから。


今すぐ、その腕のなかに飛び込んでしまいたい。


そんな衝動を必死に押さえた。


胸につかえていることがある。

リントにキスされたことだ。

突然過ぎて動けなかったとはいえ、拒否することもできたのに。

友達に嫌われるのがいやで、私はリントのキスを受け入れてしまったんだ。


大好きなミナトくんにこのことを黙っているのはとても苦しくて。

吐き出してしまいたかった。


「ミナトくん、あのね……」


意を決して、私が口を開いたそのとき。


ミナトくんと私のスマホが同時に震えた。

「リントからだ」

「こっちはミユからみたい」


いやな予感がする。



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