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恋愛トレード  作者: yuri
10/14

Trade.10



月曜日。

昨日のダブルデートの疲れがまだ残っていた私は、学校に来てから熱が出てしまった。

保健室のベッドに横たわり、白い天井をぼんやりと眺めていた。


「椎本さん、すこし席を外すけど大丈夫?」


保健室の先生が私に声をかけた。


「大丈夫です。ちょっと寝てれば治りますから」


微笑みをなんとか浮かべて、答えた。先生は、つらくなったら職員室に電話してね、と何度も言い、出て行った。


「ふう」


私はため息を吐く。

すこし寝なければと思った。


「起きてるのね」

「きゃっ?!」


いきなり声をかけられて驚いた。

カーテンの影に人がいる。


「だ、誰……」

「そんなに震えないでよ。

あたしよ。

山下咲」


バカにしたように唇の端をつりあげて。

その人物は名乗った。


「咲……」


山下咲。

中等部のときに、女子テニス部の部長をやっていた。

テニスがうまくて、快活で。

リーダーシップももちろんあって。

勉強もできる。

クラスでも中心人物だった。


そんな咲が流した噂だからこそ、皆が信じてしまった。

私はすぐに孤立した。

クラスでも、部活でも。

悲しかった、苦しかった。

違う!と泣き叫びたかった。

けれど、そんな勇気もなくて。


「いやなこと、思いださせたかな」


咲は腕を組み、私の様子をうかがっている。


「何しに、来たのっ……」

「ああ。勘違いしないで。

あんたをどうこうしようとか、もう考えてないから。

あたしは確かめにきたの」

「……何を」

「高柳くんのこと」


咲はミナトが好きだった。

それがすべての元凶。

けれど、私はミナトくんだけは渡すつもりはない。


「咲は、まだミナトくんが好きなの?」

「そんなことどうでもいいでしょ」

「よくない!だって私は……」


ミナトくんの彼女だもん、と続けようとして、ぐっと言葉を飲み込んだ。

『恋人トレード』は部員以外には秘密。それが約束だ。


いきなり黙りこんだ私を見て、咲が勝ち誇ったような顔をした。


「やっぱり噂はホントだったんだ。あんたは高柳くんと別れて、中島倫人と付き合ってる。

それで、中島と付き合ってた須藤みゆきが、高柳くんと付き合いはじめたって」

「……」


噂が広まるんじゃないかなあ、とは思っていた。

私はともかく、学校でミナトくんは目立つ。

ミナトくんほどじゃないけど、リントはその不良めいた風貌で知っている人は多い。そして当然、その幼馴染みで彼女のミユもそこそこ知られている。


「高柳くんにふられて、傷ついた心を中島に癒してもらったんでしょ?

そのご自慢のお綺麗なお顔で。

どうやってたぶらかしたの?」

「そんなこと、してないっ……」


カッと頭に血が上るのがわかった。

そのとき、ガラリとドアがあいて。


「ユーイっ!お見舞いきたよー大丈夫かあ?

絶叫系そんなにキツかったあ?」

「 熱出たってマジ?」


いつのまにか休み時間になっていたらしく、ミユとリントが保健室に入ってきた。


「……ふん」


咲は悔しそうな顔をして、さっと保健室を出た。

去り際に、ミユをじっと睨んでいた。


「ちょっと、今の、女テニの元部長じゃない?」

「え、マジで? ユイちゃんへーき?やなことされてない?」

「平気だよ」


そう答えた私は、なんとか笑えていたと思う。


私は確信した。


次に狙われるのは、ミユだ。



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