Trade.1
「ね、椎本ユイさん…だよね?」
くりっとしたドングリみたいな大きな目。
小さな鼻に、サクランボ色の唇。
ふわふわのキャラメル色の髪を、肩のあたりでくるんとさせている。
わたあめみたいな、女の子。
これが、ミユの第一印象。
「そうだけど…」
ああ、もう。私の馬鹿。
どうしてこんなぶっきらぼうな言いかたしかできないんだろう?
せっかく話しかけてくれたのに。
高校生になって、初めて迎える四月。
入学式が終わったあと、教室に戻って先生を待っていた。
話しかけてくれた、その女の子は、私の後ろの席に座っていた。
「よかった!
…ごめんね、突然。
あたし、須藤みゆき。
ミユって呼んでね。」
「うん、ありがとう。
私のこともユイって呼んで」
「いいのっ?!」
ミユは弾んだ声で私の手をとり、大きな目をキラキラさせた。
……なんだろう、これは。
おばあちゃんちのモモ(柴犬♀、3歳)を思い出す……。
「椎本さん、じゃなかった、ユイ!あのね、あたし、中学の頃からずっとユイと話したいと思ってたのー!」
「え、嬉しいけどなんで」
「だって、ユイ、中等部の頃から有名じゃん!氷の女王とかいわれてさー!美人だしスタイルいいし色白いし!
間近で見るとホントきれー。睫毛長いよマッチ何本乗るの?!
それに、なにこの手!指が長くてスベスベだあーっ!」
スリスリスリ。
ふっくらした頬を私の手に押しつけられた。
「あ、ありがとう…?」
「声も綺麗だよー!」
…うん。かなりテンション高い。
だけど、不思議といやじゃなかった。
くるくる変わる表情は、見てて飽きない。
素直な言葉は、スッと心に響いて。
私たちの学校は、中高一貫校だ。けれど生徒数が多いから、高校に上がって初めて同じクラスになった子も多い。
須藤みゆき、ミユのことは私は知らなかったけれど、どうやら向こうは私のことを知っていてくれていたみたい。
……氷の女王って何……。
『あのこと』も噂になってるんだろうなあ。
……考えるのやめよ。
今はミユと話してるんだから。
気が強そう、と言われる見た目に反して、私はものすごく人見知りだから、新しいクラスで友達ができるかドキドキだった。
ミユとは仲良くなれそう。
高校生活、楽しみたいな。楽しめるといいな。
先生がくるまで、私は夢中でミユとお喋りに花を咲かせていた。




