不細工は、
不細工は、いじめられる存在だと思っている。
実際に、僕は不細工ではないからいじめられていないが、クラスメイトのDくんは不細工だからいじめられている。
10点満点で表そうか。僕の顔は7点くらいだ。それに比べて、Dくんの顔は3点程で、お世辞にもかっこいいとは言えない。しかも、人前で話すことが苦手で、滅多に喋らない。だから嫌われているのだろう。
ある日の授業中のことだ。
先生が「この問題を解いてくれ」とDくんを指名した。人前で喋れないDくんは、目線をノートに落としたまま黙り込んでしまった。
その度に、辺りからはDくんを馬鹿にするような小さな笑い声が聞こえる。僕も薄ら笑みを浮かべて、彼を蔑むような目線を向けた。先生は「まだ解き終わってないのかな?」と、別の人を指名しても、Dくんの目線はノートを向いていた。
Dくんは運動が得意ではなかった。だが、Dくんが跳び箱を失敗しても、縄跳びで引っかかっても、徒競走で転んでも、誰も彼を笑わなかった。
誰も彼を見ていないのだ。きっと、見たくもないのだ。理由は明確で、Dくんは不細工だからだろう。普段は誰も彼のこと気にかけもしないし、彼が困っていても誰も気づかない。つまり、彼には友達がいなかった。
「Dって、ちょっとかわいそうじゃない?」
そう言ったのは、僕の友達のAだった。彼はDくんが教室で笑われることに対して、不快感を覚えているらしい。
「苦手なことは誰にでもある。それなのにDだけ笑われるのはおかしい」
彼の顔は6点だ。僕は耳から入ってくるAの話を反対側から流していた。
僕にはDくんの考えがまるで理解できない。人前で喋ることが恥ずかしいと思うことはあっても、黙り込んでしまうのは意味がわからない。むしろ、人前で話すべき場面で黙り込む方が恥ずかしいに決まっている。できないことを頑張る人よりも、最初からできている人の方が当たり前に優れているのだ。だから僕はDくんが間違えているとしか思えない。そして、その間違えている人を擁護する奴も、同様に間違えているのだ。
「俺、次にまたDが笑われるようなことがあったらみんなにブチギレるわ」
そう言ってAとの話は終わった。僕は、Aとはもう2度と口を聞かないことを誓った。
その2日後、またDくんが当てられた。いつものようにDくんは俯いたまま黙り込んだ。
十数秒程度で静寂が過ぎ去り、代わりに嘲笑や軽蔑が混じる声が教室を包んだ。
みんながDくんを馬鹿にしている中、Aが勢いよく立ち上がった。
「お前ら良い加減にしろよ!」
突然の怒号に、クラスが一瞬にして静まり返った。Dくんは驚いた様子でAを見つめている。
「そんなに人を馬鹿にして、笑って、何が楽しい? お前らも苦手なことぐらいあるだろ! 自分が苦手なことを笑われてどんな気持ちか考えたことあるのか!」
Aの言葉は教室中に響き渡り、隣のクラスの授業が聞こえるほどに静かだ。
「ちょっと冷静になれよ! 人を馬鹿にすることになんの意味がある? そんなに誰かをいじめたいのか?」
クラスの全員がAの方を見ていた。Aは構わずに説教を続けた。
授業終了のチャイムが鳴り、ようやく落ち着いたのか、Aは黙って廊下に出て行ってしまった。
もちろん、Aはいじめの標的にされ、一週間後には学校に来なくなった。
今日も教室では、Dくんを笑う声が聞こえる。




