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不細工は、

作者: パパノタマ
掲載日:2026/10/23

不細工は、いじめられる存在だと思っている。


 実際に、僕は不細工ではないからいじめられていないが、クラスメイトのDくんは不細工だからいじめられている。

 

 10点満点で表そうか。僕の顔は7点くらいだ。それに比べて、Dくんの顔は3点程で、お世辞にもかっこいいとは言えない。しかも、人前で話すことが苦手で、滅多に喋らない。だから嫌われているのだろう。


 ある日の授業中のことだ。

 先生が「この問題を解いてくれ」とDくんを指名した。人前で喋れないDくんは、目線をノートに落としたまま黙り込んでしまった。

 その度に、辺りからはDくんを馬鹿にするような小さな笑い声が聞こえる。僕も薄ら笑みを浮かべて、彼を蔑むような目線を向けた。先生は「まだ解き終わってないのかな?」と、別の人を指名しても、Dくんの目線はノートを向いていた。


 Dくんは運動が得意ではなかった。だが、Dくんが跳び箱を失敗しても、縄跳びで引っかかっても、徒競走で転んでも、誰も彼を笑わなかった。

 誰も彼を見ていないのだ。きっと、見たくもないのだ。理由は明確で、Dくんは不細工だからだろう。普段は誰も彼のこと気にかけもしないし、彼が困っていても誰も気づかない。つまり、彼には友達がいなかった。


「Dって、ちょっとかわいそうじゃない?」

 

 そう言ったのは、僕の友達のAだった。彼はDくんが教室で笑われることに対して、不快感を覚えているらしい。


「苦手なことは誰にでもある。それなのにDだけ笑われるのはおかしい」


 彼の顔は6点だ。僕は耳から入ってくるAの話を反対側から流していた。


 僕にはDくんの考えがまるで理解できない。人前で喋ることが恥ずかしいと思うことはあっても、黙り込んでしまうのは意味がわからない。むしろ、人前で話すべき場面で黙り込む方が恥ずかしいに決まっている。できないことを頑張る人よりも、最初からできている人の方が当たり前に優れているのだ。だから僕はDくんが間違えているとしか思えない。そして、その間違えている人を擁護する奴も、同様に間違えているのだ。


「俺、次にまたDが笑われるようなことがあったらみんなにブチギレるわ」


 そう言ってAとの話は終わった。僕は、Aとはもう2度と口を聞かないことを誓った。


 その2日後、またDくんが当てられた。いつものようにDくんは俯いたまま黙り込んだ。

 十数秒程度で静寂が過ぎ去り、代わりに嘲笑や軽蔑が混じる声が教室を包んだ。

 

 みんながDくんを馬鹿にしている中、Aが勢いよく立ち上がった。


「お前ら良い加減にしろよ!」


 突然の怒号に、クラスが一瞬にして静まり返った。Dくんは驚いた様子でAを見つめている。


「そんなに人を馬鹿にして、笑って、何が楽しい? お前らも苦手なことぐらいあるだろ! 自分が苦手なことを笑われてどんな気持ちか考えたことあるのか!」


 Aの言葉は教室中に響き渡り、隣のクラスの授業が聞こえるほどに静かだ。


「ちょっと冷静になれよ! 人を馬鹿にすることになんの意味がある? そんなに誰かをいじめたいのか?」


 クラスの全員がAの方を見ていた。Aは構わずに説教を続けた。

 授業終了のチャイムが鳴り、ようやく落ち着いたのか、Aは黙って廊下に出て行ってしまった。


 もちろん、Aはいじめの標的にされ、一週間後には学校に来なくなった。


 今日も教室では、Dくんを笑う声が聞こえる。

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