表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
思考封印迷宮ーー言葉で降りる冒険譚  作者: 颯音ユウ


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

10/13

9話 常識が裏返りました


「……見えるものは普通だ」


「普通に見えるのが一番怖いわ」


「怖いの方向性が変だろ」


「……変なのは、結果です」


「結果?」


「触る前に言って」


「……石を蹴ります」


「蹴るなよ」


「——蹴りました」


「……跳ねた」


「跳ねたのに、足元に戻ってきた」


「え」


「……反射じゃない。法則が逆です」


「逆?」


「……鑑定します」


「頼む」


「……反転の気配。属性の流れが逆です。

 ここは——」


「言い切るなよ」


「言い切りません。……“たぶん”」


「たぶんも怖い」


「でも、言います。言わないと、迷います」


「……風、出すわ」


「短く」


「——風」


「……当たった」


「当たったのに、押した感じがしない」


「押したのに、引かれた?」


「そう。……逆よ」


「じゃあ、炎は」


「——炎」


「……冷っ」


「冷たい?」


「熱いはずが、冷たい。……反転ね」


「氷は?」


「——氷」


「……熱い」


「熱いって、何だよ」


「……氷寄りなのに、熱が来た」


「嫌すぎる」


「つまり、属性が逆になる」


「逆になるなら、相性も逆だ」


「……強化は?」


「試すなよ」


「試す」


「レイ、やめ——」


「——瞬強!」


「……」


「……あ?」


「どうした」


「力、抜けた」


「抜けた?」


「強くしたのに、弱くなった」


「……強化が弱体になる可能性が高いです」


「可能性じゃなくて、今そうなった」


「……はい」


「——じゃあ、今までの手札がそのままじゃない」


「嫌だな」


「嫌でも、言えば備えられる」


「備える前に、来る」



「……来ます」


「何が」


「床の反射が増えます。……ぬるい、銀」


「銀?」


「……来た」


「床から?」


「床が鏡みたいに——」


「違う。鏡が“増える”」


「……反射スライムです。触ると——」


「触ると?」


「……持っていかれます。足を取られます」


「それは前も——」


「前のは鏡面でした。これは、“反射”です」


「違いが分かんねえよ」


「分かるわ。こっちは“返す”のよ」


「返す?」


「攻撃を返す、ってことか」


「……そうです。受けたものを“返す”」


「じゃあ、物理で切ればいい」


「切る」


「レイ、行け」


「行く!」


「斬閃!」


「……当たった!」


「当たったのに——」


「戻ってきた!」


「うわっ!」


「……刃の勢いが、返ってます」


「返すって、そういう——!」


「レイ、腕!」


「平気——」


「強化するな!」


「してねえ! ……してねえのに痺れる!」


「……反射は“力”を返します。力の向きが逆です」


「つまり、攻撃した分だけ食らう?」


「そういうことかよ!」


「……違います。食らう、ではなく——」


「どっちでもいい! 危ねえんだよ!」


「レイ、落ち着け」


「落ち着けるか!」


「……ミレイ。“返す”って、物理も含むのか?」


「はい。斬撃も返ります。……今の反動がそれです」


「じゃあ、俺の腕の痺れは、

 俺の斬りが返ってきたってことか」


「その通りです。力の向きが逆に戻りました」


「最初にそう言ってくれよ」


「……すみません。返りの“強さ”までは

 掴み切れてませんでした」


「レイがドジなだけよ。気にする必要はないわ。

 いま起きたことだけ揃えましょ」


「おい、」


「揃える?」


「斬った。返った。

 痺れた。——ここまでは一致してる」


「一致してるな」


「なら、対策も作れます。

 返りを弱める手はありますか」


「……反射面を曇らせるのが一つね。

 像が鈍れば、返りも鈍りるわ」


「曇らせる、ってどうやる」


「氷寄りで結露……のはずですが、

 この層だと熱が出ます」


「熱でも曇るわ。揺らせば、像が崩れるもの」

「……実際にやってみるわ」


「——氷」


「……熱が走った」


「床が揺れた。反射が、ぼやけたわ」


「ぼやけたなら、効いてる」


「はい。輪郭が出ました。核が見えます」


「核、どの辺?」


「左です。反射が歪んでいます」


「——なら、核だけ狙う」


「レイ、短く。押し込むな」


「短くって、どうやって——」


「突きでいい」


「突き……得意じゃねえ」


「得意じゃなくても、今はそれ」


「……分かったよ」


「突き!」


「……止まった!」


「返らない?」


「……返りが弱いです。曇ってます」


「今だ。もう一回」


「突き!」


「……割れた」


「割れた音が嫌だ」


「嫌でも、減った」


「……反射スライム、溶けました」


「よし」


「よし、って言うな。次が来る」



「もう来てるわ」



「……石像」


「魔像か」


「……相性返し魔像です」


「名前が嫌だ」


「嫌でも当たってます」


「返すの、好きだなこの層」


「返される側は嫌いだよ」


「……鑑定します」


「今度は、断言なしで頼む」


「はい。条件付きで言います」


「条件付き?」


「今見た現象が前提です。——ここは“相性が逆”」


「分かってる」


「分かってても、迷います」


「だから言う」


「……魔像は、受けた属性に対して

 “有利”を返します」


「有利を返す?」


「火を当てたら、火に強くなる?」


「……逆です。火を当てたら、

 火に弱くなるように見せて、

 実際は“氷”で殴ってきます」


「ややこしい!」


「要するに、相性を裏返して来る」


「……なら、単発で決めない」


「エルナ、複合か」


「複合よ。風・炎・氷。どれが返っても、

 残りが当たりになるわ」


「当たりを残す、って言い方が賭博だな」


「賭博じゃない。配分よ」


「レイはどうする」


「強化しない」


「偉い」


「偉くねえよ。怖いだけだ」


「切るなら、短く。返りをもらわないように」



「……来ます」


「魔像、動いた」


「動き、硬いわ」


「硬いなら崩し——」


「崩しは返る」


「——じゃあ、崩しじゃなくて“ずらし”だ」


「ずらし?」


「風で軸をずらす。倒さず、狙いを外す」


「いいわ」


「——風」


「……押したのに、引かれた!」


「逆!」


「分かってる。逆でも、ずれる」


「ずれた。魔像の足が外れた」


「……次、炎」


「——炎」


「冷たい!」


「冷たい炎って、もう嫌だ」


「嫌でも、当たった。魔像の表面が——霜?」


「霜が出たわ」


「……氷」


「——氷」


「熱い!」


「熱で霜が溶けた。……今、表面が脆い」


「脆いなら、そこだけ」


「レイ、短く」


「分かってる!」


「斬閃!」


「……返り、来る!」


「来たら言え!」


「腕、痺れた!」


「今なら手当て——」


「手当ては後! 今は倒す!」


「……倒す、焦ると落ちます」


「落ちない! ……でも、言う。焦ってる!」


「——起きたことを言おう。いま、何が効いた」


「……熱い氷が、表面を脆くした」

「冷たい炎が、霜を出した」

「風が、足をずらした」

「俺の斬りは、返ってきた」


「返りは弱かった。……曇りが残ってた」


「——なら、曇らせる。ミレイ、策はあるか」


「……床の粉です。白い粉が落ちてます」


「粉?」


「踏むと舞います。……反射も相性も、鈍ります」


「迷宮の埃が味方になるのかよ」


「味方になるのは、使った時だけよ」


「——使う。舞わせよう」


「……踏む」


「舞った」


「視界が白い!」


「白いけど、良い白だ」


「……魔像の輪郭が鈍い。返りが弱いです」


「今だ。短く、当てる」


「複合で削るわ」


「——風」

「——炎」

「——氷」


「……表面、割れた!」


「レイ!」


「斬閃!」


「……崩れた」


「崩れた音が、普通だ」


「……反転、まだ続いてます」


「続いてても、掴んだ」


「掴んだって言うな。掴まれる」


「掴まれない。……今度は、こっちが掴んだ」



「……ミレイ」


「はい?」


「鑑定、便利すぎないか。ずるいだろ」


「ずるくありません。……観察の言語化です」


「言語化、強いわ。羨ましい」


「……次も、観察したことだけを条件付きで言うつもりです。短く、確実に」


「短くでいい。長いと迷宮が喜ぶ」


「……はい」



「……階段」


「次だな」


「次は、何だ」


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ