復讐の魔女
最終回。
「スーリヤ、お前はもうここで終わりだ」
スーリヤの首元に吾郎の岩魔法によって具現化された、
槍のような物の鋭い切っ先がスーリヤの胸元に向けられた。
スーリヤは動ける体力もなく、身体中から血が吹き出して息が荒い。
ただ地面に膝をつき、虚ろな目で地面を見下ろしていた。
瓦礫の上で、ボロボロになった人形のように。
―――
一方、その頃瑠美はディスペアとの戦闘で徐々に追い詰められてきている。
最初こそ有利だったものの、途中から押され始めてきている。
バキッ……!!!
捻られた腕が、悲鳴を上げる。
(このままじゃ……私は復讐を出来ずに死んじゃう……)
拳を強く握り締め、手に血が滲む。
すると、瑠美の脳裏に記憶が流れ出した。
最後心の底から笑った時の自分の笑顔、そして家族の笑顔。
それがあの日、失ってしまった。
死んでしまっては、復讐を成し遂げられない。
「ここで、あんたを殺す……!!!」
瑠美の怒声が響き、ディスペアの耳に届いた。
ディスペアは狂ったように笑ったあと、スっと無表情になる。
「散れ」
シュッ………
ディスペアの発言が終わる前に、瑠美の肩に小さな穴がぽっかりと空く。
「っ……」
肩の穴からは、血が吹き出した。黒色のローブが赤色に染まる。
肩が焼けるように痛く、手のひらで肩をぐっと抑えた。
「俺は2種類の魔法を扱える。火魔法と斬撃魔法だ」
ディスペアがまるで死刑判決のような宣告に告げると、瑠美は目を細める。
「2つの魔法を使えるなんて、やっぱりあんたは規格外の魔法使いなんだね」
ディスペアはつまらなさそうに鼻を鳴らした。
「皮肉のつもりか? くだらない」
言い放った後ディスペアは冷たい表情で、魔力をためた手のひらを向け吐き捨てた
「死ね」
ディスペアが炎と斬撃が混ざった渦のようなもの放った。
瑠美は繰り出された魔法を交差した腕で受け止めようとしていた。
「くっ……!!!」
ディスペアが魔力を込め2つの魔法を混ぜたものが瑠美を襲う。
交差した腕の骨が悲鳴のような音が鳴り、皮膚が焼けるように痛む。
―――
ズサッ……!!!
吾郎の岩魔法で具現化させた槍が、スーリヤの胸元を貫いた。
「……無様な最後だな、スーリヤ」
時が止まったように、スーリヤは固まる。
やがて、スーリヤの体が塵のように散っていく。
「少年と戦えたこと、悪くなかった」
最後にそう言い残し、完全に姿が見えなくなった。
「瑠美の元に向かうか……」
―――
「どうした? 綾瀬瑠美。復讐するんじゃなかったのか?」
ディスペアは手のひらから火の玉を具現化し、瑠美に向かって振り投げる。
ブフォン……!!!
瑠美は跳ねるように火の玉を避け、手をかざしてビームのような雷魔法を放つ。
しかしディスペアは雷魔法を斬撃魔法を手のひら放ち、切り裂いた。
シュッ……
いつの間にか瑠美の前にディスペアが立ち、見下ろされる形となる。
「お前との殺し合いは、もうつまらないな。ここで死ね」
ディスペアは瑠美の顔の前にまで手のひらをかざし、
斬撃魔法を放とうとした。
その時、瑠美の前に現れた吾郎が岩魔法の槍をディスペアの太腿に突き刺した。
ディスペアは地面を蹴って宙を舞い、後ろに後退した。
「待たせたな、瑠美。ここからは俺も加勢する」
吾郎は瑠美の隣に立ち、槍を構える。
「……ここであいつを殺して、ヴィラを壊滅させる。私達のように同じ目に遭う人を増やしちゃいけない」
瑠美は全身に雷を纏い、体からビリビリと閃光のオーラが浮かび上がる。
瑠美のその言葉を聞き、吾郎はフッと笑った。
「そうだな、ここで終わらせよう。復讐を」
吾郎は岩魔法で生成した道を走り、瑠美はまるで音速のような速度でディスペアとの間合いを詰めた。
「貴様らの本気、見せてもらう……!!!」
ディスペアは火魔法と斬撃魔法の掛け合わせの魔法を、間合いを詰めた瑠美に放とうとした。
「させるかっ……!!」
すると、いつの間にかディスペアの頭上にいた吾郎が槍をディスペアに振り下ろした。
ディスペアは口元にうっすらと笑い、吾郎に火魔法を放つ。
シュッ……
次の瞬間、ディスペアの腕が飛び跳ね血が吹き出す。
「何っ……」
「余所見しすぎだよ、ディスペア!!」
瑠美は手のひらから雷魔法を放っており、ディスペアの腕に魔法を放っていた。
「いつの間に……」
ディスペアの声に焦りが混じり始めると、ディスペアの背後を取っていた吾郎が槍でディスペアの心臓を貫いた。
「今だ、瑠美!!!」
吾郎は瑠美に向かって叫び、槍を引き抜いて横に飛ぶと瑠美は両手の手のひらからビームのような雷魔法をディスペアに向けて放った。
「散れっ……!!」
瑠美の放った雷魔法のビームがディスペアの全身を包む。
「……ここで、終わりか」
雷魔法から放たれたビームが収束すると、ディスペアの体は灰のように散っていった。
「やったんだ、私達で……」
瑠美は地面に膝をついて、目から一筋涙が零れた。
吾郎は瑠美の元まで歩み寄り、しゃがんで目線を合わせた。
「帰ろう、遥斗を連れて」
瑠美はこくりと頷くと、吾郎は瑠美に肩を貸して歩いた。
――
ディスペアを倒し、時が流れ7年が経過した。
ヴィラは壊滅し、世界では魔法犯罪は少しずつ減少傾向にあった。
街の復興は進み、ヴィラが壊滅して3年後には復旧した。
瑠美、吾郎、遥斗は魔法学校を卒業して、それぞれ別の道を歩んでいた。
瑠美は今や「雷神の魔女」と呼ばれ、世界最強の魔女として恐れられていた。
それでも本人は、そんな呼び名をあまり好んではいなかった。
吾郎は、最強の魔法使いとして慕われていた。
彼が任務に赴くときは、いつも周囲の魔法使いたちが安堵の表情を浮かべる。
「吾郎さんがいれば大丈夫だ」と。
瑠美は卒業したあと、世界を旅していた。時には人助け、時には魔法犯罪者を排除。
遥斗は魔法学校で先生を勤めており、お調子者の先生として校長によく叱られていた。
そして7年後の3月、瑠美は海外から東京空港に着く。
「……久々に、吾郎に会いに行こうかな」
瑠美の瞳は相変わらず深く澄んだまま、どこか遠くを見つめていた。
ただ、その唇の端に浮かぶ小さな笑みは、7年前にはなかったものだった。
ここまで読んでいただき、本当にありがとうございました。
これにて本作は完結です。
拙い文章でしたが、少しでも楽しんでいただけたら嬉しいです。
またどこかで新しい物語をお届けできる日を楽しみにしています。
またいつか新しい物語をお届けできる日を、皆さんに少しでも楽しみにお待ちいただけたら幸いです。




