攻撃開始
「さて、まずは魔力について話すわ」
八村はタバコをテーブルに置いてある灰皿にポイッと捨てた。
「魔法使いにおいて、魔力は大事というのは基本中の基本。まぁ、流石に知ってるやろうけど。」
瑠美は「魔力が大事なのは流石に知ってます」と返答した。
「魔力っていうのは、遺伝による魔法使いの親からにも左右される。そして、遺伝でなくても生まれつき体内には魔力が多少秘められてる。でも、一部魔法を使えない魔法使いもいるけど、そいつらは体術を鍛えとる」
瑠美はこくりと頷き、八村は話を続ける。
「まず、魔法を使える魔法使いは生まれて7年経過したら、魔法を使いこなすように学校に行かなければならへん。そして、詠唱を唱えて魔法を使う者もいれば、唱えずに使える者もいる。最初からじゃないけどな。
でも、最初から詠唱を唱えず、生まれた頃から使えた"異例の"の奴もおったけどな」
「……その、異例って?」
瑠美からの質問に、八村は懐からスっと写真を取り出して一人のの少年の写真をテーブルの上に置いた。
瑠美は一体いつから持ってたのだろうと不思議になるが、そんなことを考える暇はない。
「風間風太、生まれた頃から魔法を扱い、膨大な魔力量を纏ってたやつや。並の大人の魔法使いを超えてたんや」
「風間風太……教科書に乗ってました。それと、亡くなったことも」
瑠美は目を細め、自身の胸の辺りに手を添えた。
八村は「そうや」と相槌を返し、話を続けた。
「こんなに膨大な魔力があるのは普通じゃない。"異例"なんや。魔力にも制限がある、1日の内に何度も魔力を消費したら体力切れになり動けんくなる。でも、こいつは多分一気に魔力を消費しない限り魔法を使える」
「でも、何で魔法犯罪人に殺されたの?そんなに凄い人ならば、気付けたんじゃ」
瑠美は顎に手を当て、八村の目を見つめた。
「不意打ちもあるやろうけど、1番の要因はヴィラが作ったとされる、一時的に意識を失わせる魔法具"パスアウト"によるものや。パスアウトは対象に向けてナイフの切っ先を向けると、気配を感じさせれなく出来て魔力を無くすことが出来る」
瑠美はまるで、死んだ魚のような目で八村の目を睨みつけた。
「一時的に意識を失うって、どういう事ですか?」
瑠美の目を受けて、八村の背に少し冷たい汗が1滴流れる。
「確かに、亡くなったとされて処理されてる。現場には、血だらけの遺体があった。でも、それが本物の風間風太の遺体かって言われれば違う。あれは、風間風太に似て作られたマネキン人形や」
瑠美は「えっ……」と声を漏らした。
「本物の風間風太はヴィラが自分達の基地に持ち帰って、記憶を消失させた。
そして、ヴィラのボスになるように調教された」
瑠美は口を震わせて、怯えた子犬のような眼差しで「それって、つまり……」と八村に向けて話す。
「そうや、今のヴィラのボスは、風間風太。つまり、まだ生きてるって事や。俺も3年前に1度しか見た事ないんやけど、あの人を何人も殺している冷酷な目は、幹部や組織員から全員に恐れられている。俺もその内の1人やった。」
完全に脳裏にら焼き付いた、家族を殺された光景。ヴィラによって平和ではなかっけたど、幸せではあった日を打ち砕かれたあの日を思い出した。アーヴァントの前に立っていた、青髪の長身の男の人。
「……その人の髪色は、青色ですか。」
低く、魂が抜けたような声で八村に質問すると、「そうや、青色のや」と返した。
家族を奪った張本人、生まれた頃から魔法を扱え、ヴィラによって殺されたとされていた魔法使い風間風太。
そして、ヴィラのボスとして、まだ生きている真実に瑠美はただひたすら殺意を覚えた。
「風間風太は、気に入らなかったら幹部でも殺す。もしかしたら、今もうおらへんかもな。だから、そいつと戦うかもしれへん前に、魔法を完璧に使いこなせるようにする。なんだか君は、風間風太のようにとんでもなく才能に満ち溢れてる気がするんや。いや、それ以上に」
「そんな簡単に言うなっ……!!」
八村の一室に怒声が轟いた。声を荒らげ、身体を震わせる年相応の少女が八村の前にいた。
「いや、簡単やで。君、あんま訓練してへんやろ?」
瑠美は「はい……」と相槌を打った。
八村はニヤリと笑い、ソファから立ち上がり瑠美の前に立ち、肩にそっと手を添える。
「俺もヴィラ好きやないから、倒すんやったら協力する。ちょっとトレーニング室行こうか」
八村は肩に添えた手に力を込めた。
すると、視界が白色に染められ、瑠美は眩しく目をぎゅっとつぶった。
しかし、何も起きないことに違和感を覚え、目を開けるとそこは道場のような場所にいた。
「俺のワープ魔法でここへ来た。今からダミーの魔法人形が君を襲うから倒してな」
八村がパチッと指を鳴らすと、ダミーの魔法人形が地面から這い出てきて、瑠美の背後にサッと回り込んで、
ダミー人形の振り上げた足が瑠美の腹部に突き刺さり人形とは思えない信じ難い威力に、体が吹き飛び弾丸のような速度で瑠美は背後の三十メートルほど離れた後ろの壁に激突した。
瑠美はぎりっと歯噛みして、足元にビリビリっと稲妻が走り、雷魔法を纏う。
地を蹴って音速のような速さでダミー人形の元に飛び出して行った。
音速のような速度でダミー人形に迷わず、手のひらから稲妻をダミー人形に向けて放ち、稲妻が一閃しダミー人形の胸を貫いた。
その光景を二十メートル離れた場所から見ていた八村刃は思わず「おぉ……」と声を漏らした。
その後も瑠美は何度も何度もダミー人形を倒して、1日を終えまたトレーニング室に行きダミー人形を倒してはの毎日を過ごした。
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あれから、約2週間が経過した。2週間前ほどとは比べ物にならないほど魔力量が増幅し、格闘面においても成長した。Kクラス、特級に並ぶ程になった。
「瑠美、君の欠点は魔力が多くなかった事と、戦闘面における隙や焦りが弱点やった。今は殆ど改善されてるで」
八村先生が自室のベッドに座っている瑠美の隣に座った。
「ありがとうございます、先生。」
すると、瑠美のスマホがブーッ、ブーッと鳴った。吾郎からのようだ。
瑠美はスマホを手に持ち、通話ボタンをスワイプすると、息を荒らげ、焦りの混じった声で吾郎が話した。
「大変だ……! ラルクがスーリヤによって破壊されてきている……。周りは炎に包まれて、容易に移動が出来ない。すぐに帰ってきてくれ!」




