暴かれた血の名
「吾郎、遥斗を玲於を連れて 寮に先に帰ってて……私はするべき事がある」
その一瞬、吾郎の胸に小さな恐怖が走る。彼女がどこか“別の顔”になっていた。
「いや……俺にも、やるべきことがある」
吾郎は低く言い返す。視線をそらさず、瑠美の覚悟を受け止めるように。
「おい遥斗、玲於を連れて帰れ。衿は——悪いが、自分で寮に戻ってくれ。場所が分からん」
遥斗は無言で頷き、気を失った玲於を背負い上げる。
その背中が闇に溶けていく。衿もまた小さく息を吐き、一人で歩き出した。
3人の姿が見えなくなった瞬間——
瑠美と吾郎は、血にまみれた八村のもとへ駆け寄る。
「……まだ、間に合う」
瑠美が膝をつき、八村の胸に手を当てた。指先に微かな雷光が走る。
「……」
瞬間、紫の閃光が走り、八村の体が大きく跳ねた。
心臓が再び鼓動を打ち始める。
「っ……う、あ……」
八村が息を吐き、薄く目を開けた。だが、身動きが取れない。
両腕と両脚が、岩の触手のようなものに絡め取られていた。
「目を覚ましたか」
吾郎が低くつぶやく。
その声には、安堵と怒りが入り混じっていた。
「正直に白状しろ。……貴様、テリヤだろ?」
吾郎の声が低く、鋭く響く。
「魔法使い狩りのひとり。死刑囚——そうだな?」
その言葉に、八村の顔から血の気が引いた。
一瞬の沈黙ののち、かすれた声で答える。
「あぁ そうや 整形してバレんようにしてたんやけどな……」
瑠美の瞳が、細く光る。
彼女はゆっくりと八村の腹を踏みつけた。
ゴリッ、と骨が軋む音。
「スーリヤとは、一体どんな奴なの?」
感情のこもらぬ声。その冷たさが、かえって恐ろしい。
八村は苦しげに息を吐きながら、それでも笑った。
「正直に言うと……あいつはボスの側近や、幹部の中でいっちゃん強い。圧倒的やで……」
吾郎が腕を組み、低く続ける。
「魔法犯罪人撲滅委員会から連絡が来ている。俺たち魔法使いは、ヴィラの基地に突入する。」
八村は驚きに目を見開き、そして小さく笑った。
「ははっ……そうか。正直に言うで、俺、ヴィラまじで大っ嫌いやねん。
今度こそは裏切らん。……頼む、俺を仲間にしてくれ」
瑠美の足が震える。
「お前みたいな……家族を…感情を…沢山の人を奪ったゴミクズなんか…仲間にしない……!」
声がかすれ、息が詰まる。
怒りか、悲しみか、自分でもわからなかった。
吾郎が静かに歩み寄り、肩に手を置いた。
「落ち着け 瑠美 元ヴィラの者がこちらにつけば有利になる」
その声には、冷静さと、どこか瑠美を守る優しさが混じっていた。
瑠美は唇を噛み、拳を握る。
雷光が指先をかすめたが、やがて静まる。
「分かった 取引成立だ 一時的に仲間になれ
その代わり ヴィラの撲滅と 裏切り行為だけはするな 分かったか?」
「あぁ、分かった 今度こそ 仲間になるで…」




