胸の奥で鳴った音
両手に雷を纏う。
静電気が皮膚を刺し、痛みが神経を焦がす。
それでも、瑠美は一歩も退かない。
「遅い」
アーヴァントの声が耳元で囁く。
次の瞬間、彼の姿が掻き消えた。
壁を蹴る音が連続し、残像だけが空間を走る。
視界が揺れる。目が追いつかない。
瑠美は奥歯を噛み、雷をさらに強く放出した。
頭がクラクラする。それでも負けるわけにはいかない。
心臓が破裂しそうな程 強く打たれる
「そこ…!」
瑠美は手のひらを突き出す。
雷が弾け、空気を焦がした
腕が焦げる程痛む
稲妻が一直線に伸び、アーヴァントの影を貫こうとする。
だが、鋭い金属音が響いた。
アーヴァントは特級呪具を振り抜き、稲妻の軌跡を真っ二つに裂く。
光の粒が弾け、黒煙が舞い上がった。
「ここで終わりだな お前も」
首筋に冷たい刃物の感触が触れ 息が止まる
一瞬の静寂次いで、金属音が散った。
アーヴァントの頬に赤い線が走る。
彼はわずかに目を見開き、すぐさま後方へ跳ぶ。
周囲を見渡すその眼差しは、氷のように冷たかった。
「……どこのどいつだ?」
焦げた匂いが漂う。
空気がビリビリと震え、肌を刺す。
――雷。
「これで終わり」
その声と同時に、光が弾けた。
勝利を確信した、その瞬間だった。
首筋に、重い衝撃がのしかかる。
「――っ!?」
喉が潰される。息が、出ない。
視界が滲み、世界が遠ざかっていく。
「馬鹿が。すぐに気付いたぜ 」
アーヴァントの声が耳元で冷たく響く。
「この綺麗な顔、もう見納めだな」
冷たい金属の感触が、首筋をなぞった。
その冷たさが、背骨の奥まで響く。
だが、その瞬間。
足元から異質な震動が走った。
「……岩……?」
アーヴァントの言葉が途切れる。
次の瞬間、。
岩塊が弾丸のように突き上がり、アーヴァントの顎を強烈に撃ち抜く。
鈍い音が響き、空気が震えた。「瑠美……大丈夫か……?」
低く、かすれた声が聞こえた。
「遅れてすまん。ミラウは八村先生がなんとかしてくれている。もう心配はいらない」
「吾郎……?」
焦げた匂いがまだ残る中で、瑠美はゆっくりと吾郎の顔を見上げた。
その瞬間 胸の奥が、静かに鳴った。
それは魔法でも、雷でもない。
忘れていた“鼓動”のような、温かい音だった。




