ヴィラの幹部
ミラウが口を大きく開けて笑う
「何がそんなに面白いんや……?
それにあのガキ……うちの生徒と大して歳、変わらんやないか……」
八村の声は低く震えていた。怒りと警戒、そして不安。
「おい、ミラウ。そろそろこいつらを狩るぞ。時間がない。」
「はーいわかったよー。殺せばいいんでしょー?」
ミラウが軽い口調でステッキを振り上げる。
空気が一瞬、ざらついた。
周りに浮かんだ魔法陣が、まるで悪魔の瞳のように蠢く。
「うーん、適当に……ビーム、放ちたいからぁ。いっけー、ビーム!」
次の瞬間、視界が白く染まった。
魔法陣から放たれた光線は、地面を焼き、金属を溶かし、
人間なら骨も残らない。
八村は反射的に瑠美と吾郎を抱え、横へ跳んだ。
爆風。熱。砂塵。耳鳴り。
肺が焼けるように痛い。
「ええか……俺が“逃げろ”言うたら、絶対に逃げるんや。分かったな?」
八村の威圧的な警告に 頷くしかない
その時——背後に、気配。
振り返ると、そこにアーヴァントとミラウが、
いつの間にか立っていた。笑っていた。
「あ、そういえば思い出した〜。
ボスに頼まれてたんだよね、“瑠美と吾郎”を殺せってさ。」
瑠美と吾郎の胸が一瞬で凍りついた。
心臓が暴れだす。呼吸が乱れる。
全身が震えて止まらない。
——その名前が、すべての記憶を呼び戻す。
「お前ら……まさか……“ヴィラ”か?」
吾郎の声は震えていた。恐怖ではない。怒りに。
アーヴァントは肩をすくめ、口の端を吊り上げる。
「正解。俺は“ヴィラ”の幹部、アーヴァント。
ミラウも、同じくな。」
「ちょっと〜!バラさないでよ〜!秘密にしてって言ったじゃん!」
その瞬間、瑠美の視界が滲んだ。
両親の笑顔、血の匂い、叫び声。
「ヴィラ」という名が、心を裂いた。
息ができない。胸が苦しい。
過去の音が蘇る。
「助けて」という声。
——でも、もう届かない。
吾郎が瑠美の背中を擦る。
震える手で、ただ必死に。
「……落ち着け、瑠美。大丈夫だ。今は俺と八村先生がいる。」
少しだけ、呼吸が戻る。
少し涙を流しそうになる。
「お前らの……ただの殺戮衝動で……一体何人、死んだと思ってんの……!」
瑠美の叫びは震え、そして爆ぜた。アーヴァントが笑う。
「悪い。殺した魔法使いは覚えてない。
覚えるの、苦手なんだよな。」
「こいつ、急に叫び出したんだけど〜。うるさいね〜?」
吾郎が前に出る。拳が震えていた。
「クソッ……先生、こいつらは相当なやり手です。どうします!?」
八村の声は冷静だったが、その目は獣のようだった。
「仕方ない、戦うか。さっきも言ったが……逃げろ言うたら、絶対に逃げろよ。」
「はい……分かりました、先生。」
その瞬間、瑠美と吾郎の瞳が変わった。
怒りでも恐怖でもない。
それは——殺意と狂気。




