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魔法地獄界隈  作者: 晶ノ
魔法学校入学編
1/49

終わり

初めて投稿します、お手柔らかに

この世界では、ほとんどの人間が魔法を使える。

それは希望であると同時に、暴力だった。


正義のために魔法を使う者もいれば、

欲望や支配のために、その力を平然と濫用する者もいる。


善と悪の境界は、すでに曖昧だった。

誰もが魔法を持ち、誰もがそれに呑まれていた。


1992年、日本にひとりの少年が生まれた。

風間風太。

世界が、まだ彼の存在を恐れていなかった頃の話だ。



風太は、生まれながらにして異常だった。

赤ん坊の頃から、周囲の空気が微かに震えていた。

両親は、ただ笑って「すごい子だ」と喜んだが、

魔力量はすでに大人を凌駕していた。


3歳で初めて魔法を発動。

その時点で、政府機関の魔法観測衛星が彼の存在を“例外”として記録していた。


そして1999年、7歳の誕生日を迎える直前。

風太は念願だった魔法小学校への入学を控えていた。



「…ついに魔法学校に行けるんだ…!」


東京都渋谷区。

風太は古い地図を片手に、入学式の会場へと向かっていた。

その目は、子供とは思えないほどまっすぐに未来を見ていた。


この世界の魔法使いには、階級がある。


最高ランク「C」は、世界に6人。

最下位の「S」は、魔法を持っているだけの凡人。

その数、約50億人。


風太の夢はひとつ。

「Cランクの魔法使い」になること。

つまり、世界で最も危険な存在になること。



「…ここで、合ってるはずなんだけど」

細い路地。地図を確かめながら、風太は立ち止まった。


人通りはない。

周囲は静まり返り、異様なほどに風の音も消えていた。


その瞬間。


――ガサ。


茂みの奥から、小さく何かが動く音。

風太が反応するより早く、複数の気配が周囲を囲んだ。


「……!」


逃げようとした瞬間、何かが背後から風を裂いた。


心臓に、冷たい鉄の感触。

続けて首元に鋭い刃。


風太は声すら出せないまま、その場に崩れ落ちた。


血の匂いが、春の空気を塗り替えていく。


犯人たちは一言も発さず、そのまま闇へと消えた。

あまりにも唐突に、あまりにも無意味に。


風太の人生は、終わった。



それはただの殺人ではなかった。

あの少年が「存在してはならなかった」ことを、世界が証明した瞬間だった。


そして――

30年の時が、静かに流れた。


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