第二十一章「折れた剣と沈黙の天秤」
【ノクス共和国・ヴァルス地方】――乾いた赤土の大地と、黄昏に染まる風の町。ここは、かつて周辺諸国から独立を勝ち取った老兵たちが築いた自立国家であり、今は雇われた外資の兵士と腐敗した官僚によって実質支配されていた。
GodSlayerとLethal Weaponの今回の任務は、ノクス共和国の情報局が密かに手を組んだ"処理部隊"の壊滅だった。問題なのは、その処理部隊が民間人やジャーナリストを拉致・拷問・処分する裏の処理専門集団だということ。そしてさらに悪いことに、今回の標的に、かつて二人が一時的に行動を共にした傭兵――《アリアス》の名前があった。
「また知り合いか……最近やけに多いな」GodSlayerは低く呟く。
Lethal Weaponは眉をひそめながらも、浮かない顔で手元の資料を眺めていた。「あの人、昔は現地の子どもたちに絵本読んでたのに……どうしてこんなことに」
「地獄からでも天国は想像できる。だが、それは自分がより地獄にいることを実感させることにもなる」GodSlayerの言葉は、皮肉でも警句でもなく、ただの実感だった。
風化した岩肌の谷間にある地下施設。旧政府の通信基地だったが、今は血と悲鳴が沁み込んだ拷問の館だった。
二人は夜間、無音の装備で地下通気口から侵入。赤外線ジャマーを使用し、死角を渡り歩いて処理部隊の中枢に到達する。
そこでは捕らえられた記者たちが逆さ吊りにされ、電気棒で延々と暴行されていた。中には目を潰された者、舌を切られた者もいる。誰一人、まともに声を上げることすらできなかった。
「っ……!」Lethal Weaponは声を漏らしかけるが、唇を噛み締めて踏みとどまる。
GodSlayerが視線を向けた先――処理を指揮しているのはアリアスだった。
髭を生やし、皮ジャンを纏ったその姿は以前と変わらなかったが、その眼だけが違っていた。まるで魂の抜けた、使い捨ての器のような虚無をたたえていた。
【交戦:かつての同志】
GodSlayerはアリアスの背後を狙っていた。が――Lethal Weaponが銃を下ろした。
「……私が行く」
通気口から身を滑らせ、拷問室の中心に降り立ったLethal Weapon。
アリアスが振り返る。目が細まり、過去の記憶がかすかに蘇ったのだろう。「……君か」
「どうして……こんな仕事してるの? 子どもたちに読んでたあの絵本は、全部ウソだったの?」
しばらくの沈黙の後、アリアスは静かに口を開いた。
「俺はもう選べなかった。拒めば、俺の家族が焼かれた。仲間が撃たれた。……どこで間違えたのかもわからないまま、ここにいた」
Lethal Weaponの表情が揺れる。その瞬間、背後で警報が鳴った。
施設の外周警備が侵入を察知し、銃撃が始まる。GodSlayerは即座にスモークを展開、外部からの増援部隊を迎え撃つ。
拷問室でも混乱が起きた。アリアスが手を伸ばし、銃を手に取る……だがその動きは遅かった。
Lethal Weaponは一瞬目を閉じて、引き金を引いた。
弾丸がアリアスの胸を撃ち抜き、彼は崩れ落ちた。
「……ごめん」
嗚咽が漏れた。
GodSlayerが駆け寄り、彼女を抱き寄せながら応戦する。劣勢だった。
拷問室の記者たちの拘束を解いた後、爆破装置を設置。
GodSlayerが最後に自爆スイッチを握りしめながら確認する。「いいか?」
Lethal Weaponは頷く。「こんな場所、灰になった方がいい」
施設が火を吹き、爆風で空が紅に染まる。その中で神殺しと致死兵器は、また一歩、新たな地獄へと足を踏み出した。
この選択は間違いかもしれない。
それでも、誰かを救うためには討たなければならない時がある。
その罪を背負って、彼らはまだ歩き続ける。




