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転移少女は果てへと至るか  作者: 雰音 憂李
ⅲ もう一人の『私』

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28_特派

2025.11.6 一部表現等追加・修正しました。

「閣下、先程第八師団の方より、報告が届きまして。

 彼の少女……ルナ様曰く、恐らくはレイと呼ぶ少女であろう……とのことなのですが、彼の少女が、栄州は境町の周辺にて発見されたとのことです。

 ……これから、どのようになされるのでしょうか? ルナ様は、彼の地へと向かいたいと仰っておりますが……」

 これまで話し合っていた内容を、特対の副長であるベルゲングリューン大尉さんがカゲトに伝える。

 あくまで彼らからすれば、私は客人の一人でしかない。だからこそ、その報告は半ば他人行儀な形であった。

 カゲトはその報告を聞いて、私の心配をしてくる。


「ルナ、大丈夫なのか……? あれがあったのは、まだ三日前のことだっただろう。もう、動いても大丈夫なのか?」

「それに関しては、学院の医務局の先生達も、もう大丈夫と言って下さいましたし、問題ないと思いますよ。

 それに、翌日には身体を動かせるようになってましたから」

 カゲトの心配を払拭するためにか、先生が助け船を出してくれた。私も大丈夫だと示すために、全身を使って訴える。

 しかし、カゲトの心配は尤もなことだった。先生の屋外での実戦授業の中で、私が魔力切れを起こして倒れたのは、僅か三日前。


 それでも、私がレイを探さないわけにはいかなかった。


「ならばいいのだが……とはいえ、どちらにしても、その少女の判別ができるのはルナかリカくらい、か。……連れて行くしかないか?」

「それに関しては、ルナさんは希望していますし……そうなれば、師匠も半自動的に付いて行くことになるでしょうから」

 マリさんの提案に先生が手を挙げる。

「……ちょっと待って。マリ、私が付いて行く理由は?」

「ルナさんの保護者が付いて来なくて、そのせいで、彼女が無理しても知りませんよ?」

「……それも、そうね。今のルナじゃ、ねえ……? まだルナは未熟だもの、ねえ」

 マリさんに諭されて発した先生の声には、呆れが混じる。


 彼らは様々なことを言い合いながら、今回の件に関して、色々と決めていくうちに、フロイント中尉さんが手を挙げた。

「では、ここの対策室はどうしましょうか?」

「ここは陛下と我々をつなげる場所になるだろう。誰かは必ず置いていく必要がある。その上、今回ばかりはすぐに戻ってこられるとも分からぬ。

 万一のことに備え、今陛下の元へと行っているリーツ中尉以外にも、ここの要員は必要だろう」

 カゲトがそう言うと、すぐにベルゲングリューン大尉さんが、手を上げて意見する。

「であれば、私は残りましょうか。閣下が居られずとも指揮を執れる人間は、少佐殿以外では、私しか居らぬ故」

 大尉さんの意見はカゲトがすぐ承諾するが、それによって、もう一つ問題が生じていた。


「であれば、リーツ中尉はともかくとして、我々もどちらかが残った方が良いでしょうか?」

「確かに、複数残ってくれていた方が助かるが……今回の捜索は、人海戦術に頼らねばならぬ可能性まである。

 ……悩むな。人数は欲しいが、これ以上下手に割くのもまずい」

「であれば、こういうのはどうでしょう。シュポーア中尉かフロイント中尉のどちらかには来て頂く。

 その上で、現地に到着した後、二、三日かけて見つからない場合、現地の師団に協力を仰ぐ……どうでしょうか?」

「まあ、それが最善の策だろうか……あそこは第八師団だったか。師団長が面倒な奴だというのが少々気がかりではありますが」

「でしたら、交渉のために、私が参りましょう。あの師団は私の原隊ですし、知っている者が多いので」

 シュポーア中尉がカゲトの懸念に対し、交渉役を買って出る。カゲトもならば、と連れて行くことを決めた。


「……それでは、シュポーア中尉は我々に同行を、ベルゲングリューン大尉とフロイント中尉は留守をお願いしたいです」

 マリさんの言葉に、その場にいた全員が承諾する。


 そうして、ほとんどのことが決まり、唯一決まっていないことを先生が聞く。

「……それじゃ、いつ行くの? 私たちは、どうやっても一度、家に戻らないといけないんだけど。

 今日から向かうの? ……それとも明日?」

 それに答えたのはカゲトに同行することが決まったシュポーア中尉さんだった。

「栄州に入るまでにもかなりの距離がある。今日から向かっても、遅くはないだろう」

「むしろ、発見されたのは、この報告が届いた数日前になりますので、既に遅いかも知れないです。

 今までのことを踏まえれば、彼女が何かを察して、逃げている可能性もあるかも知れないですよ」

 シュポーア中尉さんの言葉に、大尉さんが追随するが、カゲトは彼らの言葉を聞いても尚、俯いていた。

「だが、陛下の許諾が無い限り、すぐにとはいかぬ。運良く、リーツ中尉が許可を頂いてきてくれれば良いが」


 最低でも四〇〇キロメートルもあることを考えると、彼らがそう急くのも仕方が無いと思う。

 尤も、大尉さんの言うようなことが起きないこともあり得る。

 ……だが、レイは今日まで本能的に逃げているのだ。私たちがそこへ行くのをあざ笑うかのように、別方向へと向かっていてもおかしくない。

 色々と各自で考え始めていると、対策部のドアが開け放たれる。


「先程、第八師団からの報告を陛下へと報告致しました所、『一両日中に出立すべし』との勅許を賜りました。

 よって、閣下ら出立する面々には、今すぐ準備をお願いして頂きたく思います」

 大汗をかきながらも、満面の笑みでリーツ中尉はそう告げる。

「そうか……良く伝えてくれた、ベレント。

 ならば、只今より出立の準備を行い、明日には出立しよう。リカ達も一度戻って支度してくれ。明日は下屋敷から馬車を回すから、七時には待っていて欲しい」

「カゲトはどうするの?」

「俺は正式に陛下へと今回の件を伝え、その後に支度する」


 私が何気なく聞いて、カゲトが返事を返したが、リーツ中尉さんが、ある種衝撃の発言をする。

「差し出がましく、大変恐縮なのですが……閣下はすぐに向かうだろうと思い、本日中に出立するだろうと伝えてしまっております」

「……そうか。しかし俺が改めて、直接伝えた方が良いだろう。

 尤も、これは俺自身のことであって、貴様等には関係の無い話だ。号令の後、各自出立の準備をしていてくれれば良い」

 帝国内の『特殊事象』に精通した眼前の将軍は、わざとらしく見える程に改まってものを言う。

 普段は見たことのない軍帽を深々と被り、彼は高らかにこう告げる。


「これより、栄州は境町へと特派致す。目的は、“三人目”の事例と思しき少女の保護。貴様等の御協力、宜しく願う」

読んでいただき、ありがとうございます。


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