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第6話 お尻がたいへんなことになりますから

「姫――ロシナ・ガウラ様はこの国の王女としてお生まれですの。わたくしは王宮付きの呪術師の家系の生まれでして、生まれたときからロシナおねえさ――ごほん。ロシナさまにお仕えしてまいりましたわ」


 ジュジュはこう話した。


「それはそれは麗しいお姫様としてお育ちになられたのですが、ひとつ問題がございましたの」


「問題?」


「スキル鑑定を行ったところ……姫はなんと、SSSクラスの騎士であることが判りましたの」


「な……! この国のお姫様が、SSSクラスの騎士!?」


「そうですの。彼女はそのことを知るととってもお喜びになりましたわ。ですが……まわりがそれを許しませんでした。ロシナさまの父君であらせられる国王陛下も、女王様も、臣下のだれもが、ロシナさまが冒険者になることをお許しになりませんでした」


「それで、あきらめたのか?」


 ジュジュはゆっくりと首を振った。


「あきらめられるほどの方でしたら、こんなことになっておりませんわ。なにせSSSクラスの騎士ですから、力で敵う者はおりません。冒険者になりたいロシナさまは王宮内を暴れまわりましたわ……もちろん字義通りの意味ではございません。具体的にいうと、国王様が『こいつに負けたら冒険者になるのをあきらめろ』とおっしゃってつれてきた武芸に秀でたものを片っ端から倒されたのです」


「そ、それはすごいな」


「で、国王陛下もさすがに折れまして作戦を立てましたの。題して『これからどこかの国の王子様に嫁入りする娘が、家出でもして冒険者になられたら貰い手がなくなって困る。それらしい冒険をさせて、満足してもらおーっと』作戦ですの」


「わかりやすいけど長い!」


 ついつっこんでしまった。

 

 もしかしてこの国の王はテンションが軽いのだろうか。


「それで、幼い頃からのつきあいであり、いざとなればSSSクラスの騎士である彼女を呪術でおさえることのできるわたくし、SSSクラス美少女呪術師のジュジュ(それ毎回いうのか?)が同行し、ロシナさまにてきとーな魔獣を倒していただいて、冒険をひとつこなしてもらったところですの。それで満足して大人しく首都に戻られると思ったのですけど……」


「逃げられたと」


「ああ~くそったれですわ! それもこれも、わたくしの大事なお昼寝タイムのあいだに従士がちゃんと見張っていなかったから!」


「お子様か」


「寝る子は育つのですわ。わたくし、いずれ美少女から美女へとレベルアップする予定ですので......それで、あなた」


「ミレートだ」


「ミレートさん。ここまで王族の内情をお話したうえで『ではさようなら』というわけにはいきませんわよね?」


 ……はあ。そうくると思った。


「俺に、逃げた姫様を捕まえろって?」


「ええ。お話が早くて大変助かりますわ」


「でも、それならジュジュが行けばいいんじゃないか? なんたって、SSSクラスなんだろ?」


「あなたもそうですわよね?」


「―――――――――!!」


 ……驚いた。魔力の漏出をここまで抑えているのに、見破られるとは。


 美少女呪術師ジュジュ……SSSクラスなのは本当のようだ。


「あの森は、たしか『狼の森』ですわね?」


「あ、ああ」


「もしも、万が一、姫様が下賤な獣に不意をつかれ、傷の一つでもあれば……そのときは」


 ジュジュは声を潜め、真剣な顔になる。


「そ、そのときは?」


「――わたくしがめちゃくちゃ怒られますわ!!!!!!!」


「……は?」


 ジュジュはさきほどとは打って変わって取り乱した。


「この国のお姫様に、かすり傷ひとつでも作ってごらんなさい! 同行していた奴らはなにをしていたんだって怒られますわ! たぶん王宮お抱えの呪術師長であるおじいさまに、お尻を何万回と叩かれてしまいますわ!!! そんなの、恐ろしくって恐ろしくって……そうなったらわたくし、死んでしまいますわ!!!!」


「あ、あの、ジュジュ?」


「ですから!!! これは渡りに船!!!!」


 ジュジュの小さな手が、ありえないほどの力強さで俺の肩をつかむ。


「いいですの、ミレートさん。ロシナさまをみつけたら、わたくしがすぐに呪術で『拘束』を施します。そしたらすぐに、すぐにあなたはロシナさまの服をはぎとり、傷の有無を確認して回復術をかけてくださいまし!!」


「い、いやそんなことしたら俺が不敬罪で殺されるだろ!」


「この際あなたの命はかまいませんわ!」


「俺が構うわ! 少し冷静になれ!」


 どれだけ呪術師としての格が凄くても、やっぱり見た目通りの精神年齢だ。


「わかりました。すこし冷静になります」


 と思ったら、すん、と大人しくなった。


「とにかく、私はあの森のなかは不案内です。そしてそれはロシナさまもおなじはず。野生の猿のような勘の鋭さがあることは否めませんが……あなたという道案内がいれば、きっと森を抜ける前に追いつくことができるはずですわ」


「たしかに、『狼の森』は依頼で何度か入ったことがある。道案内は大丈夫だ」


「そう。では、急ぎましょう」


 従士に縄を解かせ、俺を立たせると、ジュジュは手を伸ばしてきた。


「よろしくおねがいいたしますわ、ミレートさん」


「あ、ああこちらこそよろしく」


 考えてみれば、冒険者ギルドからの依頼以外でこうして誰かからクエストを依頼されるのははじめてだった。


 もしかすると、と思う。


 俺はようやく、俺の好きなように、人助けができるのかもしれない。


 俺はジュジュの手を握った。


「ロシナさまがうっかり転んでひざをすりむいてでもいれば、わたくしのお尻がたいへんなことになりますから……」


 つかんだ手に、ぎゅぅぅぅうっと力がこめられる。


 ……なんだか、嫌な予感のするクエストの始まりだった。





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