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第20話 ギルドに戻れる……?

「――――!!」


 ロシナの真剣な眼差しに射抜かれ、俺は身動きがとれなかった。


 といっても、疲れ切って寝転んでいるだけなのだが。


「俺を――ギルドに戻してくれるってことか?」


「ええ。国王であれば、その力があるはずです」


「そりゃ国王の命令は、この国では神様のお告げみたいなもんだけど――……」


 すっかり霧の晴れた空を見上げる。


 ぽっかりと浮かんだ雲に朝陽があたり、白く焼けるように輝いていた。


 冒険者ギルドに戻れる――俺が?


 話の現実みのなさに、ぼうっとしてしまう。


 それは、望んでもない幸運だった。


 追放された人間が、もういちどギルドに戻ったという話は聞いたことがない。


 それを王様の力によって、なかったことにしてくれるというのだ。 


「いいのか、そんなこと……」


「あなたは私たちを危機から救ってくれました。この国にとってはもう英雄といってもよいでしょう」


「そりゃ大げさだよ。俺はただのはぐれヒーラーだ。あの戦いはみんなの力がなければ勝てなかった」


「それでも事実は変わりません。そして、私の感謝の気持ちも変わりません」


 ロシナは剣を脇に置いた。


「姫という身分は、高いようでそれほどの力はありません。まつりごとに参加できるわけでもなければ、自分の力で兵を動かせるわけでもない……国の飾りです」


「そんなこと……ロシナは立派な剣士だよ」


「ありがとうございます。やっぱりあなたは優しいおひとですね」


 屈託のない笑みを浮かべる。


「ミレートさん。私にできる精いっぱいの恩返しと思って、この提案を受けてくれませんか?」


「……ロシナ」


「あなたの役に立ちたいのです」


「……」


 ギルドを追放されたあの夜のことを思えば、迷うはずなどなかった。


 あの日の絶望は今でも思い出す。


 世界のためになると信じて冒険者ギルドでがんばってきた日々を、全否定されたのだ。


 お前なんてもう必要がないと、仲間たちに言われたときの暗い気持ちは忘れられるものではない。


 それが全部、なかったことになる――のか?


「でも、戻ったところで俺の回復術をまともに受けられる相手がいないんだ。やっぱり無理だよ」


「あなたがパーティを組むときに、レベルの高い相手を選べるようにする。こういう契約で再度ギルドに加入すれば、どうでしょうか?」

 

「でもそれは、冒険者ランクを最高位まで上げないとできない……もしかしてそんなことまでできるのか?」


「王の命であれば、できるはずです。それに、あなたにはそれだけの実力があるはずです」


「……」


「……どうでしょう?」


 少し不安になったのだろうか。眉を斜めに下げ、ロシナは俺を見つめた。


 ……こういう顔には弱い。


「……わかった。せっかく姫様がそう言ってくれているんだ。有難く受けるよ」


「本当ですか!?」


「ただ、ひとつだけ心配なことがあるんだけど......」


 ふだん包帯を巻いている右手を見せようと思ったのだが、


「ありがとうございます!」


 ロシナは年頃の女の子らしく、ぴょんぴょんとはしゃぎ始めた。


「よかった! 断られたらどうしようかと……ミレートさん! ぜひいっしょに、お城にいらしてください! きっと最高のおもてなしをお約束します!」


「おいおい、急に元気だな……」


「フェルとジュジュに、城下町の案内もしてもらいましょう! ああ、楽しみです……ミレートさんのことを、お城のみんなに紹介できるなんて……! 武運に優れて、知的で、勇気があってかっこよくて……きっとみんな先の戦いの話を聞きたがります!」


「言い過ぎだって」


 はしゃぎまわるロシナを眺めながら、そうか、と気づくことがあった。


 城の中では『お飾り』として身動きが取れず、外に出ても馬車の中に引き篭ってばかり。


 誰かのために生きたいと望む彼女にとって、ひとのためになにかをすることは、この上なく嬉しいことなのだろう。


「……ロシナ」


「はいっ!」


「……おいしい料理を期待してるよ」


「ええ! ぜひぜひ! ではミレートさん、もう一周走りましょう!」


「ああ…………あ?」


 自分の耳を疑った。


「いまなんて?」


「嬉しくって体を動かしたい気分なんです! さあ! いっしょに、気持ちのいい汗をかきましょう!」


「待て、ロシナ。待ってくれ。俺はもう体が…… 」


「さあさあ! 行きましょう!」


「待ってくれ、頼むから自分のペースでやらせてくれ、手を引っ張らないでくれ……!」


 満面の笑みで駆けるロシナと、死人の顔であえぐ俺が、美しい朝の湖畔の情景にとても浮いていた、と。


 あとでジュジュとフェルが言っていた。














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(山田人類)


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