16.ユリからの『秘密』のお願い
――プルルルルルル!
廊下を歩いていると、突如〈通話〉魔法を受信した際になる音が鼓膜を揺らした。
これは、お互いの魔力の波長を知っている者同士でなければ使えない魔法だ。
……この波長から察するにユリだろうか。
俺が筋肉パワーという名の魔力を与えているから、俺の魔力の波長を知っているのだろう。
「俺だ。どうした」
「あの……少しお願いがありまして。部屋まで来てくれませんか? 私の部屋は寮の一階、入り口前の一号室です」
「ああ。別に構わないが」
その後はすぐに切って、寮へと向かった。
寮は三階建てで、下から順に一年、二年、三年となっているらしい。
一号室のドアをノックすると、すぐに開いてくれた。
「すみません、急に」
「いや、いいんだ。それでどうしたんだ?」
「あの、みんなには秘密にして欲しい頼みなのですが……」
それほど言いにくいお願いなのだろうか。
別に俺でも構わないが、それなら女の子同士の方がいいんじゃないかな。
まあ、せっかく俺にお願いしてくれたのだ。
話だけでも聞こう。
「私、一度でいいからダンジョンに潜ってみたいんです」
「ほう。しかし、女の子一人で行くのは危険だな」
「そうなんです。それにここの学園、生徒の安全のため、許可なくダンジョンに入るのを禁止にしていまして」
「ああ。だから秘密にして欲しいと。そして、俺に付いてきて欲しい感じか?」
ユリは首肯する。
しかし、ただダンジョンに潜りたいというわけではないだろう。他に理由があるはずだ。
「で、どうしてダンジョンに潜りたいんだ?」
「これを完成させるのに、魔石が必要なのです」
そう言いながら見せてきたのは、ブレスレットだった。
ぶら下がっている部分には、ちょうど魔石が入りそうな穴が開けられてある。
「私、物作りが趣味でして。それで、一度でいいから魔石でブレスレットを作ってみたかったんです」
魔石とは、魔物を狩ると稀にドロップする宝石のようなものだ。質屋で売れば高く買ってくれるし、自身の武器や防具にエンチャントすればバフ効果が付いたりする。
「いいぞ。とりあえず、近くのダンジョン探しだな。ちょっと待ってろ」
〈地図作成〉を発動し、近くのダンジョンを確認する。
ダンジョンにも種類があって、砦のようなものから洞窟のような形をしているものまで様々ある。
ここから少し離れた森の中にあるダンジョンは地下型のものらしい。
「よし、見つけた。今何時頃だ」
「ええ!? どうやって見つけたんです!? それよりも……ええと、午後七時過ぎです。今から向かうには少し遠い場所なんですかね?」
「いや、すぐ行ける。今日向かうか?」
「ガルドさんがよろしければ!」
俺は頷いた後、手のひらを虚空にかざす。
「〈空間転移〉」
詠唱をし、転移魔法陣を生み出す。
それを見たユリが慌てた様子で、
「ええと、これってなんですか?」
「転移魔法だが。ここをくぐれば、すぐにダンジョン前へ行ける」
「ええ!? なんですかその便利な魔法!?」
確かに、これは上級魔法の中でも最上級に近いものだから知らなくても無理はないな。
「まあ、大丈夫だから」
「ガルドさんが言うなら……」
言いながら、俺たちは魔法陣をくぐった。
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