プロローグ
衝撃の事実が発覚してしまいました。
兄さんは妹である私のことが好きなのです。
LIKEではなくLOVEの意味で。
いくら血の繋がっていない義理の兄妹とはいっても、妹を一人の女として見るなんて、兄さんはとんだ変態です。
前から何となくそうじゃないかと思っていたのですが、今日それが確信に変わってしまいました。
ついに私は見てしまったのです。
兄さんがシスコンである動かぬ証拠を。
――時は遡ること10分前
家に誰もいないことを確認してから兄さんの部屋に入った私は、いつものように兄さんの部屋を物色していました。
いや、これは決して私が変態だというわけではありません。
これにはちゃんと深い理由があるのです。
兄さんと私は腹違いの義理の兄妹なので、私に変な気を起こさないように監視が必要なんです。
もしも兄さんがその熱いパトスを持て余して私の下着なんて盗んでいたら大変ですからね。
そうなったら私が兄さんに食べられてしまうのも時間の問題です。
そうならないようにあらかじめ監視しておくことは妹の仕事。
決して変態的な理由で捜索している訳ではないのです。
本当ですよ?
それにいつも兄さんはやたらと私に優しいんです。
うっかりしているとつい兄さんを好きになったしまいそうになりますが、ずばりそれが兄さんの作戦でしょう。
そうやって少しずつ外堀を固めていって私にその気にさせるつもりに違いないです。
もう完全に私のことを狙ってますね。
だからなおさら監視に気を抜けません。
なにがともあれゴミ箱の中まで確認したのですが何も異常を見つけられなかった私は、諦めて兄さんのベッドに飛び込んで兄さんの匂いを堪能していたのですが、その時ベッドと壁の間からベッドの下に何かがあるのが見えました。
そして私はそこで兄さんが完全なシスコンである決定的な証拠を見つけてしまったのです。
――『俺の妹がこんなに美人のはずがない』、『俺が好きなのは妹だけど妹ではないのかもしれない』『お兄ちゃんだから愛があってもダメです』……
そう、そこに隠されていたのは大量の妹もののラノベと漫画、ゲームそして薄い本でした。
あぁっ! いけません兄さん!
これはもう言い逃れできないでしょう。
兄さんは妹を恋愛対象として見ている変態なのです。
私のことが大好きな変態シスコン野郎なのです。
真凜、このままでは兄さんにオトナにされてしまいます♡
でも、兄さんだったら……いいかも♡
*
最近妹の様子がおかしい。
やたらとベタベタ俺にくっついてくるし、距離感が今までと比べて明らかにおかしいのだ。
今までもかなり仲は良かった方だとは思うが、それとは遙かにレベルが違う。
何を考えているのかわからなすぎて怖い。
ご飯を食べてるときはなぜかチラチラ目配せして謎にウインクしてくるし、リビングで一緒にテレビを見てれば俺の肩に頭を乗せてくる。
最近は意味も無く俺の部屋に入り浸ってることも多いし本当にどうしたんだ?
しかも高校生にもなって夜に『一緒に寝よ?』なんて言うし、『お風呂一緒にはいろ』なんて言われた日はマジでビビった。
なんか学校で嫌なこととかあったのだろうか……
なんだか本気で心配になってくる。
ストレスで幼児退行してるとかだったらマジで笑えないぞ。
はっ!? もしかして俺に甘えてくるのは真凜からのSOSサインなんじゃないか?
言いにくい悩みがあるから遠回しに俺に助けを求めているのかもしれない。
あるいは心のよりどころとして俺に甘えているのかもしれない。
もし本当にそうだったとしたら、俺が真凜の最後の希望だ。
こうなったら遠慮無く甘えさせてあげよう。
甘えられるのは別に構わないし、すこしでも真凜の心の支えになってあげられるならこれ以上兄として誇らしいことはない。
そしていつか、悩みを解決してやれたらと思う。
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