3話:騒がしい昼休み
周囲が慌ただしくなった気配を感じて目を覚ました。
タップリ30秒数えてから目を開けてみる。
休み時間なのだろうか、クラスメイトの大半が既に教室から姿を消していた。
「なぁカズヤ。悲しい事実に気付いたんだけど。」
「へ?どしたん?」
俺と同じく寝ていたカズヤをいつものように優しく起こす。
「いやいつもはヒドイ起こし方しか・・・・ひぃっ!」
上着の内ポケットから、懐刀ならぬカッターを取り出した瞬間静かになった。
その様子に満足した俺は悲しい事実を奴に告げる。
「カズヤ。あの壁にくっついてる丸い物体を見てみろ。」
「丸い物体て。」
そう呟きながら丸い物体を見たカズヤは、いつものアホヅラをよりいっそうアホヅラにしながら震えだした。
やべ、きもいな。
「やべ、きもいな」
「なんで二回言うんすか!?」
「一回目は心の中で呟いたつもりだった・・・・」
「バッチリ聞こえてましたよ!!」
なんか、こいつのテンションについてけない。
なんで寝起きでこんなに元気なんだよ。
「ちょ、どこ行くん?」
「丸い物体見たろ?急がないとやべー。それに、おまえの相手してると疲れる」
「時計って言おうよ・・・ってかさり気なくヒドイコト言われてるし」
つか、アホの相手してる暇ないんだよな。早く行かなきゃ授業までに帰ってこれないし。
「とりあえず、オレはいつものとこ行くから」
「オニーサンも好きっすねぇ」
こいつのにやけ顔むかつくな。って元々がにやけてる風だから仕方ないか。
「んじゃ、また後でな」
返事を待たず廊下に飛び出る。
こりゃ走らないとやべーな。
階段を飛び降りながら下駄箱を目指す。
俺の教室は三階にあるから、階段がちと多い。
ドリャアっと声にしながら豪快に飛び降りていく。
「キャァッ」
「おわっと」
デタ、ありがちなパターン。
つか、昼休みみたいに人が多い時間にこんな降り方してたらぶつかるよな。
下級生か?顔がガキっぽいし。
「大丈夫か?」
手を差し伸べつつ謝罪の言葉を。
「サイテー」
「スマン・・・ってサイテー?」
見事にカブったっつうか、サイテーってなんだよ。
「なんて降り方してんの?サイテー」
また言われた。
「ぶつかったのは悪いけど、サイテーは言い過ぎじゃね?」
「サイテーな人にサイテーって言って何が悪いの」
言って当然みたいな顔がむかつく。
が、俺には時間がない。
一応謝ったし、もういいよな?
じゃ。と言って再び階段を降りる。
上の方からサイテーって言葉が聞こえた気がする。
なんだよあの女、ちゃんと謝ったじゃんよ!次会ったら逆に謝罪してもらうからな。
ブツクサ言いながら下駄箱に到着。靴を履き替えて学校の外へ。
道路挟んだ正面にある民間の隣にある路地に向かう。
「この道たまに蜘蛛とか居るから嫌なんだよね」
独り言を呟きながら路地を抜けると正面にコンビニがある。
ここが俺の目的地。
「いらっしゃいませー」
入り口で雑誌を整理してるニーチャンがやる気のない声を出す。
あんな声なら出さない方がマシだな。
適当に飲み物と弁当を持ってレジへ。
「こんちわっ」
レジで後ろを向いてゴソゴソやってる店員に声をかけた。