9話:心地良い目覚め
時刻は午前10時。
数分前に右腕の痛みと言うか、痺れで目が覚めた。
ちょっと位置をずらしたおかげで、今は特になんともない。
俺の腕の中には、子供のような寝顔をしたユウがいる。
ちょっと視線を下に移動させると、大人な部分が丸見えだ。
いつもなら寝てるとかお構いなしにヤりたくなるんだけど、何故かそんな気にならない。
このままずっと抱き締めていたい、そんな風に思ってしまう。
なんか俺、ちょっとおかしいよな。
ユウを抱き寄せ、体温を感じる。
「ぁったかぃ」
デコを胸にグリグリ押し付けてくる。
髪の毛がくすぐったいっての。
「わりぃ、起こしたか?」
「うん、起こされたぁ」
更にグリグリしてくる。
ごめんな、と頭を撫でてあげる。
「ユウさ、髪の毛キレイだな」
「そかな?アリガト。ってかさー、頭撫でるの好きだよね」
「ん?なんで」
「だって、昨日寝るまでずっと撫でてたじゃん」
寝る前の記憶とかもうありませんけど。
ま、確かに撫でるの好きだけどさ。
「なんか、撫でられてると落ち着くね」
グリグリを止めて俺を笑顔で見上げてくる。
こいつ、ほんとに可愛いな。
「そろそろ起きるか。腹減ったわ」
下着・ジャージ・ロンTを装着して台所へ向かう。
「なー、カップメンしかないけどどうする?どっか食いに行く?」
「行くー。けど一回部屋に帰りたいな」
そりゃスッピン+昨日と同じ服は嫌だよな。
とりあえず出かける準備すっか。
「んじゃちょっと待ってな」
Gパンに履き替えてジャケットを羽織る。
適当にワックスを付けてスタイリング開始。
鏡と睨めっこしながら髪の毛をいじってると、ユウが覗き込んできた。
「なんか、ホストっぽいね」
言われたくない言葉TOP3に入るコト言われたし。
少しだけムッとしながら、ボリュームを抑え目にする。
「こんなんで宜しいですかね?お嬢様」
「別にさっきのままでもよかったのにぃ。でもこっちのが好きかも♪」
トップを軽く寝かして前髪を横に流す感じ。
軽く毛束の向きをランダムにして…と。
どうやらユウはナチュラル系が好きみたいだ。
「んじゃ、ユウんち行こうか」
「んー…」
なんか返事が微妙…。
部屋を教えたくないとか、そんなとこか?
「あー…一人で帰るか?」
「ぇ?なんでよー」
「いや、場所知られたくないのかなって思って」
「そんなわけないじゃん。そんな事気にしてないよ♪」
「んじゃどうしたんだよ?」
黙って玄関に歩いていくユウに付いて行く。
「また足痛くなるかなって思って」
きっと部屋まで距離があるからだろう。
もう歩きたくないと視線で訴えてくる。
「はぁ…判ったよ。ちょっと待ってろ」
一度寝室に戻りキーを掴んで玄関へ。
「乗っけてってやるよ」
喜ぶユウを見ながら、髪の毛セットした意味ないし。
なんて思っていた。