7話 挨拶
人工衛星打ち上げの日がやって来た。打ち上げ場所は北海道の南部にある大樹町というところで行うらしく、完全自動運転車で自宅から4時間かけてやってきた。一般道ではまだ自動運転で走ることが許されていないので、ダミーのハンドルをつけて走行した。
「ロケットの発射場は、ソーニャが投資した会社なんだっけ?」
「そう。民間のロケットを飛ばすとか最初は訳のわからないこと言ってるように聞こえたけど、将来的にはそうなってもおかしくない。宇宙の覇権はやっぱりアメリカとロシアだけど、まだまだ逆転することも難しくないと思う」
「なるほどな。将来性があった、って感じか」
将来性があれば、たとえそのプロジェクト成功しなくとも出資してくれる人はいる。特に理系起業家にその傾向が多い。
「その代わり、今回のロケット代はあちらが持ってくれることになってる。もちろん、人工衛星自体はこちらで作ったけど」
「ロケットの図面送ったら、びっくりしてたね。どうやってこの方法に辿り着いた!?って」
「そりゃアメリカのNASAとロシアのロスコスモスのサーバーをハッキングしたんだもん」
「リーナはほんとに危険を顧みないよな」
リーナ……やりすぎじゃないかな。大丈夫かな。まあ何かあっても全力で守るけど。ミアが。
「でも、北海道のこんなところで民間企業が宇宙に挑戦しているなんてすごいですね。なぜ北海道なのでしょうか。日本だとしても、沖縄などの南国の方が大気圏離脱しやすいですし、実際にJAXAは鹿児島の種子島に発射場を構えています」
「高度の必要な静止衛星じゃない限り、高度はそんなに関係ないらしい。ここにしたのは、元々防衛省が自衛隊機の実験に使っていた場所を払い下げたらしく、建設費用を抑えることができたっていってた」
「なるほどな」
「さ、そろそろ見えてきましたよ」
登り坂が終わると、前方にテレビで見たことがあるロケットが、既に発射場にセットされているのが見えた。
「まず、社長を紹介するからきて」
ソーニャに連れられて、発射場の近くの監視センターにやってきた。ソーニャとエリーは既に社長と会ったことがあった。
「こんにちは。社長さんに挨拶したいんだけど、いまいい?」
「少々お待ちください」
秘書の方からOKが出たので、モニター室に入っていく。
「こんにちは、佐野さん。今日はよろしくお願いします」
「いえいえ、こちらこそよろしくお願いします。今日は過去史上、最も成功すると確信できていますよ」
ソーニャは社長の佐野さんと挨拶をする。この人、どこかで見たことがあるような。
「こちらが私の家族で、一番左からイリヤ、その次がミア……」
「え……あの、入谷先生ではありませんか?」
「「「「「え?」」」」」