5話 移住1ヶ月
ようやく移住してから1ヶ月が経ち、無事家も完成して生活が落ち着いてきた。
地下だということをできるだけ感じさせぬよう、地下1階と2階部分の半分を吹き抜けにし、リビングにした。地下2階フロアにダイニングキッチンやお風呂などの機能と、私とミアの寝室、そして内階段を登った地下1階フロアに娘たちの個室を作った。ちなみに地上階はまだ何もない。
「さて、今後どうするかだが、今まで何をやってきた?」
L字のソファーに6人座りながら、成果を聞いてみた。ちなみに前の壁は両面とも薄さ5mmの有機ELのディスプレイになっていて、今の時間帯の夜を演出している。これによって地下にいつつも地上にいる感覚にさせてくれていた。月や星の位置も現時刻通りにプログラムされている。
「私たちはいろんなモノを作ってみたな。ドローン作ったり、3Dプリンターでヴィーナの銃も作ってみたり。射撃場の設営もやっていたからまだ全部の機械を把握できてなくて、少しずつ作りながら覚えていくよ」
エリーとリーナはせっせと今まで考えてきたモノを作っているらしい。射撃場も完成していた。
「銃を作るのは一応違法なんですけど」
「あ、そうなの? じゃあどっか隠しとこ」
ヴィーナに注意されるが、あまり取り合わないエリー。こんだけ敷地が広ければ警察も探せまい。
「ここは海には近く、鉄などの金属は手に入りやすいですが、食料品などの調達をもう少し改善したいですね」
「電気の使用量もかなり大きくなってる。あの活火山も買っちゃって、地熱発電できないかな」
ヴィーナとソーニャはそう現状を分析する。確かにそうだな。自ら発電できたらそれはとても良い。
「発電所くらいいけるんじゃない? 送電線も設置して、どんどんインフラ整えていこう!」
「リーナ、さすがに発電所は無理だろ」
「ちょっと待ってね、はい、設計図。いけそうじゃない?」
「いや待て待て待て待て。さらっと何やっちゃってくれてんの?」
「設計図もらってきただけだけど」
「だけって何!?」
「いつも渡してる設計図もだいたいもらったやつだよ? 何を今更驚いてるの?」
「え……」
エリー、もっとお姉さんらしくリーナの暴走を止めてくれ。
「活火山を使って発電所を作るとなると、国から睨まれることになりそうですね」
電力などのインフラは民営化されたとはいえ、まだまだ公権力が及んでしまう。勝手に発電、しかも火山を使ってとなると、すこし危ないかも知れない。
「確かにな。そうなると防衛手段も必要になってくるか」
「それなら今あるドローンを改造すればすぐできるけど」
「あなたたちこの1ヶ月何を作ってきたの……」
ミアはため息をついた。エリーとリーナは予想以上に暴走していたようだ。まあ他人に迷惑をかけないならどれだけやっても良いのだが。
「とりあえず、プラントビルを作りつつ防衛手段の拡充をした後に地熱発電所に取り掛かりましょう」
「そうだな。その方向で」
「防衛手段を本格的に揃えるなら自分たちだけの人工衛星も打ち上げたいですね。今あるやつを利用するのはバックドアとかがあっていざという時怖いので」
「それはさすがに我々でやるのは目立ちすぎるな」
「北海道にロケット飛ばすベンチャーがあります。そこと共同でやるよう話をしてみましょう」
「あぁ、頼んだ」
あれ? 本格的に防衛手段を揃える必要あったっけ? まあいっか。あるに越したことはない。
「じゃあ今後はそんな感じでやっていきましょうか」
ゆるやかに、私たちの開拓生活は進んでいった。