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34話 真意


「まさかあの提案を即決するとはな」


 この任務の命令が下った後、会社には必要がある時以外は寄らなくて良いことになっていて、俺の車で岡田を拾って一緒に行動するようになっていた。基本は部下が運転するものだろうが、会社にもどこいくにも俺の家の方が遠かったので、必然とそうなっていた。


「もともと興味はありましたからね。独り身だから身軽だし」


「今まで仕事一直線で、若くして課長まで上り詰めたのに、未練はないの?」


「むしろ、課長になって、部長と行動を共にするようになってから楽しさを知ったんですよね。それまでは生活するのに精一杯で、お金が第一だったんです。でも、ある程度満足に生活できるようになったし、部長のすぐそばまでこれたから、昇進じゃなくて、最近知ったワクワクの気持ちを優先したいなと。生きるのに精一杯だったのが、その域を達成できたからこその、楽しさ追求なんでしょうね」


 岡田の入社面接をしたのは俺だった。鬼気迫る表情の奥に、いろいろな感情が見えた。他の面接官の反対を押し切って採用し、自分の部下にした。あれから10年ちょい。気づけばこいつは、自分の真後ろまで登り詰めていた。

 まさか、こいつにとってそこがゴールだったとは思っていなかった。


「でも、部長こそいいんですか? 勝手に決めちゃって」


「お前ひとりでいかせるのは怖いしな。まあ、それだけじゃないけど」


「というと?」


「娘がな、旦那とトラブっててな。今はウチにいるんだが、どうも怖いみたいで。その点、あそこなら絶対部外者は入ってこないだろ? 家族同伴OKと言われたから、娘と生まれたばかりの孫もつれていこうかな、と」


「でも、これから自衛隊とことを構える可能性が高いんですよ?」


「それ、お前だって答え出てるだろ? 『勝つのは絶対あの家族だ』って」


「ま、そうなりますよね。確実に」


 そんなことを話しながら車を走らせ、岡田の家に着くと。


「ありゃ? 引越しか?」


 家の前に大きなトラックが止まっていた。


「もう夕方というかよるですから、夜逃げの方が近いのでは」


「実際夜逃げに近いですよね」

「自分のことは棚に上げるんだ」

「こんばんは」


 そこには、双子の姉妹と20代半ばの女性がいた。


「岡田さんですね? 引っ越しの手伝いをしにきました」


 そういえば、さっき電話で「あとで車を派遣する」と言っていたっけ。それがもう着いているのか。


「佐藤さんの方にも、別のメンバーが向かっていますので、そちらに向かわれたほうが」


ブーブーブーブー


 着信は妻の明恵からだった。


「着いたようですね。では、また後ほどお話ししましょう」


「じゃあ部長、また後で」


「あぁ。皆さんよろしく頼む」




「はい、もしもし」


「やっとでた。いろいろ話は聞いたけど、引っ越すのは事実なのね?」


 うちのカミさんはかなり物分りが良い。こんな突然のことにも驚かずにいてくれる。


「あぁ。帰ったら説明するから。あと10分くらい」


「わかった。待ってるわ」


 

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