30話 見学
「車はそのままで大丈夫です。こちらに乗ってください」
「これは?」
「敷地内用の自動運転車です」
「ん?」
「いまなんと?」
「自動運転車です。運転手なしで、勝手に運んでくれます。まあ、なにもない土地なので」
いやいやいやいやいや、そういうことじゃない。
スピードはかなり出ているのだが、案外、というかかなり乗り心地が良かった。外気とは触れているが、道路のでこぼこは完全に衝撃吸収されており、まったく揺れない。ガル◯ンのダージリンみたいだ。
少しずつ近づいてきたが、予想以上に大きかった。隣にはビルもあるし、例の工場もある。あのビルに住んでいるのかな。
「着きました。さあ、こちらに」
「今日はありがとうございました。電力買取に関しては、量が量なので上に掛け合ってみますので、また連絡します」
「面白いものを見せていただきました。ありがとうございました」
「いえいえ、よろしくお願いします」
「もうわけがわからんわ」
「あぁ、そうだな。とりあえず、帰ろうか」
発電所だけじゃない。ロボットの数々、そしてなによりロボットというより女の子に近く、顔もほぼ同じ3人。
俺らは先ほど見たものをいまだに受け入れられなかった。
「あの人が信じてくれますかね」
「さぁ。無理なんじゃないか?」
「ですよね……」
「何を言っている? お前はバカなのか? んな訳があるか。冗談もほどほどにしろ」
「ほんとなんですって」
「いい加減にしろ。仮に本当だったとしても電力を買うのは無理だ」
「わかりました。お時間いただきありがとうございます」
「無理だったわ。買取も拒否だと」
「まあ、そうですよね。しかもあの人は官僚の天下りですし」
「とりあえず、上司へ報告はした。あとは、道庁にいるお前の知り合いには共有しておこう」
「了解です」
それから2時間後、先ほど報告した支店長から呼び出された。
「水道局から要請があった。お前たちの責任で、今回の件を処理してこい」
「「わかりました」」
完全に責任放棄だった。
「水道局は事態を重く受け止めたようですね。大丈夫でしょうか」
「とはいえ、自由に動けるようになっただけまだマシだ」
電気の送電は電線だけだからそこまで問題はない。だが、水道管の設置にはかなりの費用と時間がかかる。認識の違いがあるのは仕方ないのかもしれない。
「それにしても、道庁まで出てくるとは。どうなるのやら」
「平穏に終わってくれればいいんだが」
と、完全に俺はフラグを立ててしまったのだ。




