28話 到来
「……そうか。わかった。ありがとう」
ピッ
「どうだった?」
「所有者はここ最近に引っ越してきた6人家族のようです。一括で購入したわけではなく、海側の土地から少しずつ買い足していったとか」
私は北海道電気の部長である佐藤真司。電話をかけていたのは部下である課長の岡田で、北海道庁の友人にある家族について聞いてもらったのだ。
「土地の総額はいくらになる?」
「帳簿価格では軽く10億を超えている、と」
「10億以上、か。普通の家庭ではないな」
事の発端は社員からの「『電力はいくらまで買い取ってもらえるのか』という奇妙な質問があった」という報告だった。
その相手はまだ女学生の声だったというので、それだけならば、学生がレポートを書くために連絡してきた、という可能性もあっただろう。だが彼女は、そのまま電力の供給停止の手続きをして、電話を切ったらしい。
本気で電気が余っているのかどうか判断がつかず、上司の俺に報告をよこしたというわけだ。
だが、調べれば調べるほど謎が深まっていった。
東京から北海道にやってきたが、購入した土地は所有企業ごと購入、売りに出ていた土地だけでなく、近隣の地主からことごとく買い漁った土地は海から山まで自然豊かな土地。そして、新たに5人が住み始めた。
電気利用に関しても不可解な点がたくさんあった。工場つきの土地を買ったため電力使用量が多くなっているのはまだ納得できるが、日に日に増え、最近では工場10個分を超える電力使用量を使っていたのに突如電気使用を停止、それに加えて電気が余る、という謎事態。
「うーむ、一度視察に行ってみるのが良いかもしれんな」
次の日の昼、俺と岡田は視察に例の土地まで行った。のだが、
「これは……自衛隊の基地か?」
「それか、宗教団体のアジト、ですかね」
森の中の道路を抜けると、そこに出てきたのは厳重な金網によるゲートだった。
「これ、本当に個人の土地なのか?」
「11人しか住んでいないはずですが……」
「いやいや、広すぎるでしょこれは。なんのためにこの土地を買ったんだ?」
それもそのはず、その土地はただの何もない平野だった。
「本人に聞いてみますか?」
ゲートの隣にインターホンがあるのに気づいた岡田は鳴らそうとするが、
「いや、今日のところは引こう。もう少し探索して帰ろうか」
今回は視察だけにした。アポ無しだしな。
「そうですね。それにしても、ゲートから建物までかなり遠いですね。地図上では海沿いにありますけど」
「あれは、確か輸入に頼っていた工場だったからな。その周辺に作ったんだろうよ」
昔はたくさん電気を使ってくれていたんだが、年々使用量が減っていっていて、会社の業績の悪化が目に見えていたんだよな、そういえば。
「建設会社どこなんでしょうね。聞いてみましょう」
「あぁ、頼んだ」
なんとなく手がかりを探そうと金網沿いを少し歩いていたら、
「これ、なんだ?」
「炭化した葉っぱみたいですが……もしかして」
岡田はそういうと、車からゴム手袋を取り出して葉っぱをいくつか掴み、金網に投げた。
ジジジジジジ
「これは、やはり電気だな」
「え? まさか、金網に電気を流しているのか?」
「そうみたいです。一応上の針の部分だけみたいですけど、近づけば最悪即死ですね」
「変なことしなくて命拾い、ってか」
岡田は現場上がりの人間だ。電気に関しては俺よりもよく知っている。
「ますますここが怪しくなってきたな。なにか守らなければいけないものがあるのか」
「と、いう感じだな」
私たちはゲートに設置してあるカメラを通じて一部始終を見ていた。
「この後どうなるんですかね、私たち」
「なにも心配はいりません。誰であれ、私たちの聖域を邪魔させはしません」
ヴィーナは、力強くそう言った。
頑張って終わるまで投稿します!




