3話 子育て開始
「いらっしゃいませー、ご注文はなんでしょうか?」
「ラーメンいっちょー!」
「宅急便でーす」
「なので、ここの答えは46です」
日本に来てしばらく経った。いろんなバイトを頑張った結果、相変わらずボロ家住みだが、冷蔵庫や電子レンジ、ケータイ、食器、テーブル、椅子と家の中は充実してきた。また、日本では貯金をするのが普通らしく、私たちも必要なもの以外は買わずに貯金するようにしていた。
ミアは人の笑顔を見るのが好きだったので接客業をずっと続け、店長に昇進。私の仕事は教師だ。お金が溜まり始めて美少女を育てるゲームを遂に買った翌朝、徹夜明けの頭で閃いた。
「家庭教師なら合法的に美少女に近づけるんじゃね?」
それから私は猛勉強(一瞬で全記憶)し、ほどなくして家庭教師になった。その後、集団塾講師も兼務した。
塾講師を始めて2ヶ月ほどが過ぎたある日、仕事から帰った私は唐突にミアに対しこう言った。
「子供を実際に育てたい」
「え?」
ミアは驚いていた。
「両親が事故で亡くなったり、両親から虐待を受けていて保護されている子たちが児童養護施設にいるらしい。子どもを産めない夫婦はそこの子たちを引き取って育てることができるのだとか」
「なるほど」
日本では虐待による保護件数が増えてきているが、保護される児童養護施設が足りないため、子どもを育てたい家庭に預けられるシステムがある。それが里親制度だ。
「塾講師をやっていて、子供たちの成長を見ていて、本当に楽しい。他人の子だから上手くいかないこともあるから、実際に私たちの子供として育てたいんだが」
「いいんじゃない?」
ということで集団塾の春季講習を急遽キャンセルしてもらい、里親の登録をしに行った。
「身元がはっきりしない人は登録できません」
(やっちまえ!)
(らじゃー)
早くも自重が無くなってきたが、仕方ない。美少女のためだ。てか、ちゃんと戸籍あるのに祖父母の存在やら女同士やらなんやら色々言われた。一応姉妹ということになっているんだがな。
研修を経て経済状況や里子(引き取る子供)の希望条件などを伝えた。私たちは男性がいない女性カップルとして登録したため(1人ではほぼ引き受けられない)女児しか選べなかったが、生後半年未満の身寄りのない子とした。
そうして我が家には4人の女の子が住むようになった。
長女は肌が白かったので純白を意味するアルヴィナと名付けた。愛称ヴィーナ。
次女は献身的な女の子にと願いエリザベータと名付けた。愛称エリー。
三女は賢明になってほしいと願いソフィアと名付けた。愛称ソーニャ。
四女はかなり暴れる子だったため平和を象徴するイリーナと名付けた。愛称リーナ。
子供たちが我が家に来てすぐに家も引っ越し、私は仕事をやめ、子育てに注力するようになった。
長女のヴィーナには不安すぎて能力に頼ってしまったこともあったが、できるだけ普通の子育てに近い形で育てていった。
ただ、ゲームとは違い、娘たちの大切な人生がかかっているので、私たちは彼女たちが将来困らないように、真剣に、それはもう真剣に育てた。
ヴィーナはお嬢様と呼ばれる人たちと同じように育て、エリーはスポーツに興味を持ったためそれを後押しし、ソーニャは読書から経済に興味を持ち、リーナはパソコンに興味を示した。
4人とも運良くかなりの美少女に育ち、スキルもどんどん伸びていった。
双子でも大変と言われる子育てを4人も同時にするのは本当に大変だったが、あっという間に時間が過ぎていき、気づけば15年経っていた。
そこで気付いた。
「あ、学校通わせるの忘れてた」