16話 クローン人間①
「クローン人間をつくること自体は技術的には問題ありません。ただ、それらを成長させる方法がなく、労働力にするには十数年は必要になりますので、成長促進器を作らなければなりません」
私たちは、何よりも労働力の確保、すなわちクローン技術の確立が最優先事項と定め、耕太郎を中心として会議を開いていた。午前中に、報告会兼方針決めの時間を取ることにした。意思疎通、報連相は団体行動に必須だからね。
「ロボットじゃダメなん?」
エリーから質問が飛ぶ。ヴィーナ、佐野夫妻の3人は解散のお話しするために会社に向かったためここにはいない。
「クローン人間は一体作るのに18万円と言われています。ロボットに比べて費用の面でも破格だし、使い道も多様。何より、人型のロボットよりも一緒に過ごしていて違和感がありません」
確かに、ロボットよりも人間のほうが心理的に受け入れやすいのはあるかもしれない。
「クローン羊の『ドリー』によってクローン技術は人間に転用可能と言われており、中国が実験にゴーサインを出したことで、足踏みしていたアメリカなどが追随しています。デザイナーズベビーの技術を組み合わせれば、画一のクローン人間を作り出すことは不可能ではありません」
「確か今って、人口子宮のところで止まっているんだったよね」
ソーニャ知識幅広すぎ。医学もいけるんすか。
「羊の人口子宮は完成しているけど、人間のはまだです。というのは、倫理的な問題で、受精卵を研究利用できるのが受精後14日までなんだ。日本の順天堂大学の研究チームが、ヤギの胎児を合成羊水に満たした容器の中だけで成長させたのは2002年のこと。人間の場合は、へその緒から栄養を注入して育てる方法が既に提唱されているから、その方法を使おうと思う」
「倫理的な部分をどうするかだなぁ」
「そんなものは完全に無視して、やってくれればいい。倫理的に、とかは国同士の足の引っ張り合いでしかない。どうせどの国も隠れてやっているだろう。遺伝子情報は、私やミアのを提供しようか」
「私は人間ではないですが、それくらい簡単に作り出せますしね」
「わかりました。人工子宮についてはそれでいくとして、労働力として利用できるまでに成長させるのは、培養器が必要と言われています。これは、研究を進めていかないとなんとも……」
「人間の成長って要は細胞分裂だから、分裂を活性化させれば成長するとおもう。ただ、身体能力は成長途中にどれだけ負荷をかけられたかどうかで決まるから、ただ培養器にいれるだけじゃなくて、圧力や運動もさせていくといいかもしれないね」
自分の体の成長をよく理解していたエリーが、成長促進の方法を提案する。確かにその方法なら可能かもしれない。
「1ヶ月で15歳くらいまでは成長してほしいなぁ」
スケジュール管理しているヴィーナも要望を伝えた。確かに、それくらいのペースで成長してくれると、うまく回せるようになりそう。
「わかりました。肉体に関してはエリーさんの方法を取り入れようと思いますが、あと、記憶や知識などはどうしましょうか」
たしかに知識などの情報を1から教えるのはかなり厳しい。
「脳をネットワークに接続できないのかな」
「一時期、脳の電子回路について研究してたんだけど、いまはまだスキャニングの技術が細胞や電子レベルまで届いてなくて。それができれば、神経回路について解き明かせて、電脳チップを埋め込んで、ネットワークに繋げることくらいはできると思うよ」
優佳は昔から興味のあること全てに手を出そうとする子だった。私が塾講師時代も、平安時代の法律とか、産業革命とか、中学受験で出題されないことばかり覚えるくせに、江戸時代の画家は全然覚えてくれなかったなぁ。
「それならあるけど」
「え?」
英語ですが、神経回路マップの研究をしている記事を見つけました。現在、遺伝子についてはほぼ解明されているといっても過言ではないですが、神経回路については電子を読み取れないため、まだまだ研究途中です。スキャニングの技術が上がれば可能なのですが、それを物語内ではエリーがぶっ壊しましたね。
https://neuroscienceblueprint.nih.gov/human-connectome/connectome-programs




