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なんかわからんけど転移したわ

気付いたら驚くほどに寒く、冷たい風がふいている場所に私は倒れていた。床が石畳のようなもので冷たい。起き上がろうにも体に力が入らず、助けを求めようにも喉がカラカラで声が出ない。周りに人の気配もない。自分はこのまま起き上がれず死んでしまうのだろうか。 

そもそも私は




どうしてここにいるのだろうか________

  

 





昨日は明後日から定期テストなのに平気でゲームをして勉強もせず、理由もない余裕を感じながら暖かいお布団に入ったはず。中学三年生という私にとっては大切なこの時期に発売するゲーム会社が悪い。特に頭が特別良いわけでも運動神経がいいわけでもなんでもない、陰キャと陽キャの狭間にいるような人間。


なのにどうしてこんな仕打ちをうけなければならないのだろうか。


親が私に呆れて寝ている間に運んで捨てた?

こんなことされるほど嫌われていない。むしろベタ甘だ。


誘拐されて捨てられた?

いやいや流石にないだろう。







……ないよね?





どうしよう。

だんだん頭がぼうっとしてきた。

ふざけたことを考えている余裕もなくなってきた。

瞼が重い。

ああ、そうだ。ちょっとだけ。そう、ちょっとだけ寝よう。

1時間もしたら元気に動いてここがどこだか調べよう。

あ、無理……おやすみ……




◇◇◇◇◇◇





周りが少し騒がしい。

うるさいせいで目が覚めてしまった。お布団が暖かい。それに、まだ早い時間だと思う。もう少しだけ寝ていよう…………って違う!!


勢いよく起き上がったら周りにたくさん人がいた。おじさんにおばさん。お兄さんお姉さんってぐらいの人はいない。

えっなんで?


「えっ……あ」

「アメリア!!嬢ちゃんが起きたぞ!」


1人のがたいのいい西洋人っぽいおじさんが奥の方にいるこれまた西洋人っぽいおばさんに向かって叫んだ。 よく見ると周りも顔の掘りが深い。


「ほんとかい?!」


アメリアと呼ばれていたおばさんは手に持ってるおぼんをガシャンと大きい音を立ててテーブルに置くとこっちに向かってきた。


「大丈夫かい?けがは?何処か痛いところはないかい?」

「えっと……」


何処にも痛いところはない。とりあえずベッドから降りて怪我がないか確認しよう。自分に掛かっている毛布をどけて降りようとする。



あれ……?

なんか小さくない?

自分は身長158とかそこらへんだけど中学三年生のか弱い女の子にしては身長高めだったぞ?周りより体ちょっと大きかったよ?

なのにこれはなんだ。

五歳くらいのぷにぷにとした柔らかく小さい腕。

指一本一本が短い。

なんだ? これは。

とりあえず鏡でも見せて貰おう。


「あ、あの。けがはないです。鏡。鏡を見せてくれませんか?」


なんだこの喋りにくい舌は。


「なんともないならよかったよ。それと鏡だね。」



おばさんはエプロンのポケットに入っている少しばかり古く、傷の入った鏡を渡してくれた。



「はいよ。」

「ありがとうございます。」


鏡に映ったのは、五歳くらいの幼女だった。


日本人を代表する黒髪ではなく、茶色が強い金髪に茶色の瞳。いつもと違う髪と瞳。

だけど、顔はいつも通り。

なんだこれ。

せめて顔ももっと美人にしてくれよ。まぁいつもの私も美人で可愛いけどね。ってそうじゃない。


なんだこれは?


私が鏡をみながら固まっていると、周りにいた人のなかにいたおじさんが私に話しかけてきた。

 

「どうしたんだ?なんかあったのか?」

「なんでもない……」


これからどうしよう。

なんで金髪になったの。

どうして幼くなったの。

なんでこんなところにいるの。

ここはどこなの。

この人達はだれなの。



家に帰れるの_______



疑問ばかりがぐるぐると頭を巡る。

不安が押し寄せてきて、涙が出そうだ。

見た目と一緒に中身も幼くなったのかな。


「お嬢ちゃん。名前は何て言うんだい?」

 

さっきのおばさんが、しゃがんで私と目線を合わせてくれる。優しい声。


「えと……あかり」

「アカリだね。じゃあ、アカリはいくつだい?」


優しい声のまま問いかけてくれる。

私は何歳だろう。見た目は五歳か六歳くらいに見えるけどあってるのかな。


「たぶん…ううん、わかんない」

「そうかい……。じゃあ、帰るお家はあるのかい?」



家?そんなの、そんなもの。



「わかんない……」


とうとう、目に溜まっていた涙が零れてしまった。


「お家も、自分の歳も、わかん、ない……お家に帰れるかも、ここが、どこかも、わかんない、わかんない……」


嗚咽に混じってわかんないと繰り返す。涙が溢れて止まらない。どうしよう。必死に袖で涙を拭いていると、おばさんが私の頭に手を置いた。


「大丈夫だよ。大丈夫。ちゃんとお家には帰れるよ。それまでここにいな。」


「うん……うん……」


おばさんが頭を撫でてくれる。暖かい。いいな、これ。

安心するなぁ……。

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