初戦力
「戦士?」
「そう、私達の世界では毎年、聖戦をするのだけど、そこに相応しい人を選んで参戦してもらうの」
「……」
「質問はある? 後、別にため口でもいいわよ。固いの好きじゃないし」
質問の許可が下り、考えて言った。
「……それに俺が選ばれたって事?」
「ええ、腕も悪くなかったしね」
そう言われ、捲は少し得意げになる。
「聖戦は何処で行われる?」
「一言で言うなら雲の上、この世界の言葉で言うなら異世界って所かしら」
「……」
異世界と言われ、考え込む。
「……大丈夫よ、終わったら元に戻して帰すから」
「……それでもな」
「それにね、優勝すると何でも願いが叶うのよ」
「願い……」
「後は、副賞ね」
「何でもありだな」
聖戦の魅力を必死に語るヴァルキューレに対して、慎重になっている捲。
「うーん……」
「人生最大の大勝負よ! 天才だったら飛び込むしかないでしょう!」
「て、天才って……」
満更でもないと笑顔で頭を掻く。
「世界レベルの戦いで貴方の力を皆に見せつけるの! いいでしょう?」
「まぁ、確かに……」
「よし、言ったわね!」
肯定の言葉を聞いた途端、ヴァルキューレは立ち上がり、捲の手を掴むと、部屋の外へ連れ出す。
「ちょ⁉ ちょっちょ⁉」
「気が変わる前に行くわよー!」
彼の腕を引いて、廊下を歩き、階段を降り、玄関の前に立つ。
「ここを開ければ……」
「準備をする時間をくれ!」
大声を出され、
「……確かに気が早かったかも、ここで待ってるから出来たら行って頂戴」
「分かった」
彼女から踵を返して、自室へ戻っていく捲の姿を見て声を出す。
「何でも持っててもいいわよー!」
「分かったー!」
階段を上がり、自室に戻った捲は早速、タンスに手を伸ばす。
「恥ずかしくない服装がいいな」
そう言って、着ていたジャージを脱いで、白のTシャツに黒のズボンを穿き赤色の上着を羽織った。
そして、壁に掛けてある赤のナップザックを手に取り、その中に替えの下着、手回し懐中電灯を放り込み、カードケースにデッキを入れた物も入れて背負う。
次に彼が向かったのは、台所。
ここで炊飯器を開いて、しゃもじで白米を掬い、手の上に乗せると、両手で丁寧に力強く、三角形の形になるように握る。
これを三つ作ると、全てに満遍なく塩を塗しラップを巻いた。
完成したそれを袋に入れ、ナップザックに入れる。
そして、ヴァルキューレに声を掛けた。
「お待たせ」
「何を持ってく事にしたの?」
「替えとか、デッキとか、食料とかかな」
「珍しいわね。聖戦って聞いて、武器を持ち出す人とかいるのに」
「カードゲームの結果を見て俺を選んだんでしょ? だとしたら、カード関連の事だと思って。それに、本当に戦争をするのなら強そうな人に声を掛けると思ったからかな?」
「……その通り! でも、デッキはいらないかな?」
「……そうなのか?」
「うん。必要だったら絶対に持ってきてって言うしね」
「ああ……そうか」
ヴァルキューレの言葉に納得した捲は、「確かに……」と頷きながらカードケースを取り出す。
「では……準備はいい?」
「ああ」
「それじゃあ、行きましょう!」
ヴァルキューレは、玄関のドアノブを掴み、捻る。そして、豪快に開けた。
「ようこそ、ヴァルハラへ!」
「これは…!」
捲の視界に広がるのは、石畳の道にレンガの壁をした家、正に誰もが想像するような中世の光景が広がっていた。
靴を履き外へ一歩踏み出す。
「本当に異世界だ……」
数歩歩いた所で、ドアが閉まる音が聞こえ振り返ると、そこにはもう何もなかった。
「上も見てみて!」
ヴァルキューレに言われ、捲は空を見上げる。そこには青空が広がり、雲以外に何かが浮かんでいるのに気が付き質問をぶつける。
「あれは?」
「島じゃないかしら? ほら、離れない様に鎖でつないであるし」
「鎖の島?」
「まぁ、これは今度話すとして。早速、総合受付所に行きましょう! ついて来て」
彼女に言われ捲は素直に指示に従い進んで行く。
数分後、ヴァルキューレに連れられある大きな施設の前に立つ。
『総合受付所ミズ』
そう書かれた施設に入って行くと、新規参加の札がぶら下がった窓口まで連れていく。
ヴァルキューレは窓口に立つと叫んだ。
「新規参加者、連れて来てわよ!」
「ヴァルキューレさん、静かにしてください」
呆れた顔で背中に白の羽をはやした少女がやって来る。
そのまま、三人は窓口越しでのやり取りを始めた。
「新規さんですね、初めまして私はここの担当をしています……まぁエンジェルと呼んでください」
「分かりました」
捲が返答するとエンジェルは、一枚の紙とペンを取り出し、二人の前に出す。
「では、早速ですがこれの必須項目の記入をお願いします」
「はい」
名前、生年月日、住所等を書きこむと、エンジェルに返した。
「四条捲……はい、確かに受け付けました」
「ありがとうございます」
書類に目を通して、不備が無いのを確認すると、印鑑を押して、机の中に大事そうにしまう。
エンジェルは改めて捲を見て、説明を始めた。
「ここでの貴方の目的は、世界をまわり、聖戦にて大きな結果を残す事です」
「はい」
「その方法は、各場所で行われている戦に勝って下さい」
「はい」
「そこで手に入る勝者の証を十個手にしたときにまた詳しく話します」
「今は、言ってくれないんですか?」
「申し訳ございません。規約なもので」
「そうですか」
「また、全てが終わった時、貴方を元の世界に戻す事を約束しましょう」
捲は黙って聞く。
「説明は以上です。何か質問はございますか?」
「いえ、特に無いです」
「では最後に、こちらのカードから好きなものを選んでください」
そう言って受付嬢は、窓口下から三枚のカードを出して、裏返した状態で並べる。それを見た、
「これは?」
「引いてみてのお楽しみ」
ヴァルキューレは笑顔で捲の横顔を見つめ、捲も少し迷って真ん中のカードを引いた。
「これだ!」
引いたカードには、左上、右下に2のマーク、左手に銀の盾を装備した銀色の甲冑のイラストが描かれている。
「お! 格好いい!」
「リビングアーマー! それが、貴方の初めての配下です」
「リビングアーマー?」
捲が手にしたカードを見つめているとエンジェルが説明を始める。
「リビングアーマーは強固な鎧に、主への絶対忠誠を持っていますよ。ここから、どう鍛えていくのかは、あなた次第です。ちなみに中に人はいませんよ」
エンジェルの説明を聞くと、今度は疑問を当てる。
「それで、どうすればいいんですか?」
「これを召喚、呼び出す事を念じつつ……」
エンジェルは言いかけて辺りを見渡し、窓口の傍、誰もいない空間に指を指す。
「そこに投げてください」
「分かりました」
カードを親指と人差し指で挟んで投げた。
ピッという小気味のいい音と共に、カードは飛んでいき宙で止まると光りだす。
すると光は徐々に片膝をついた人の形をしていく。
光が消えると同時に浮いていたカードは、捲の手に戻っていき、彼も上手くそれをキャッチする。
片膝をついた人物は、正にカードに書かれていたリビングアーマー。その異形だった。
「私はリビングアーマー、貴方様の盾となりましょう……」
「ああ、よろしく!」
現在の手持ち
リビングアーマー ランク2




