表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
パラベル!  作者: 甘味
5/5

最終話:幸せはいつも感じ方次第

午前7時。私は自然と目が覚めた。


「・・・起きましたか。」

「うわわ!!!」

昇は私の目の前でジッと私を見ていた。


「・・・寝顔・・・見てたの?」

「え、あ、いや、見てないですよ。昨日のは冗談です。」


嘘っぽい・・・。


「それより、早くご飯を済ませたほうが良いのでは?」

「あ、あぁ、そうだね。」


「未熟ながら、勝手に作らせていただきました。」


テーブルの上には、まさに朝食!と言った感じの、

味噌汁やら卵焼きやらが置いてある。

やばい、めちゃめちゃ旨そう。


「ホントにあんたが作ったの?」

「あ、はい、まぁ。一宿の恩義ってやつです。

台所を見たところ、インスタント食品やらしか食べていないようでしたので。」


「仕方ないじゃん!・・・料理なんてやったことないし・・・。」


「それで一人暮らしですか?まぁ、どうぞ、食べてください。」


「うん、じゃあ、いただきます。」


卵焼き・・・む、やばい、程よく甘い。すごい。


「美味しい・・・。」

「喜んでいただけたのなら幸いです。」

あぁ、やばい。こいつ、天使なんてやめて定食屋やればいいのに。


「いや、あくまで天使は人間じゃないですから。」

あ、心読まれた。うっかり忘れてた・・・。


「さ、早く行きましょう。強盗が来ますよ?」


あぁ、そうだ、危ない。


「え、てかお前も来るの?」

「それはもちろん。ご安心ください。美紀さん以外の人間には見えないようにします。」


「あぁ〜、天使ってそういうこともできるんだ。」

「エリートですからね!」


昇は自信満々に言った。

私は、家の鍵をしっかりと閉めて、遊園地まで向かった。


そして、8時15分に丁度到着。友人2人は当然の如く到着していた。

「あ、美紀〜!!!何で遅れるの!!!」


「ごめんごめん・・・。あ、あの、バスが遅れちゃって・・・。」


「バスなんて乗らないでしょ!」


前と同じやり取り。


「まったく・・・コレは罰ゲームだね〜?」

「だねだね★!」

「美紀の苦手なジェットコースターの刑だ〜!」


「え?いや、無理だよ〜・・・。」


「ま、まぁ、ジェットコースターはラストにしようよ♪」

「え〜、ま、いいけど・・・。」


私たち3人はその後、

コーヒーカップやら観覧車やら、

ゴーカートやらメリーゴーランド・・・

一通り乗った。


「さて、次は・・・ジェットコースターだね!!」


「え〜・・。」


前と同じ反応をした。


「ほら!早く早く!!並ぼう♪」


今日はだいぶ空いていたが、

ジェットコースターってのはやはり混んでいるものだった。

30人程度が並んでいた。


並び始めて5分程度経ったときだった、


「おらぁ!!てめぇら!!!手をあげろやごらぁ!!!」


この声は・・・あの時の・・・。


「ふぅ〜、やっと来ましたか。」


昇が言う。

私は小声で聞いた。

「どういうこと?」


「3日前に戻って色々やりましたよね?

それで彼は組をクビになったのです。

組の車のキーを盗まれたり、組の会合の予約が取り消されていたり・・・

彼は元々下っ端だったので、即切られたのです。

で、やけになってこういう犯行にでたのです。」


「そんな・・・」

これって、私のせいなんじゃないの?


「おい!そこのお前!!手を上げろやぁ!!」


そっか、あそこで顔マスクをしたのもこういうこと・・・。

私は黙って手を上げた。


「おい!そこのお前!こっちきやがれ!」


「え!わた、私?」

「おら、早くこい!!」

「きゃあ!!」


私の友達が引っ張られる。


「お前は人質になってもらう!

おいてめぇら!携帯持ってるやつ!!全部出せやぁ!!」


人々は携帯を取り出し、自分の前に置く。


「おらぁ!!他に持ってるやついねぇだろうな!!!

持ってるやつがいやがったら、その場でこいつは殺してやるからな!!!」



え・・・?


「昇・・・大丈夫なんだよね?」


「はい?大丈夫?そんなわけ無いじゃないですか。

あの娘はここで死にますよ。」


「・・・は?」


「美紀さんは運命ってものをいまいちわかっていないようですね。

この時間に誰かが死ぬというものは決まっていることなのです。

誰かが死ななくなるならば、誰かがやっぱり犠牲にならなければならない。

当たり前のことですよ?

その運命を変えることこそ罪なのです。」


そういって昇はニコっと笑った。


おい・・・笑えねぇよ・・・

聞いてねぇよ・・・

「それってさぁ、私が殺すのと同じなんじゃねぇの?」


「全然違います。罪にもなりませんし。

常に人間は気付いていないだけで、誰かの犠牲の元で成り立っているのです。」


それはそうなのかもしれないけど・・・。


「犠牲なしでは幸せになんてなれない。

逆に言うなら幸せになるためには犠牲が必要なのです♪」


何で笑ってるんだよこいつ。

犠牲なんて言葉、何で平気で使えるんだよ。


私のせいで・・・殺すなんて・・・

できるわけないじゃねぇか!!!!


私は、男に向かって走った。


「てめぇ!!動くんじゃねぇ!!」


そういって男は銃を取り出した。

あ、ここで私が死ねばすむんだよね。


バァン!!!!


「・・・え?あ、アレ?生きてる・・・」

まさか他の人に当たった?!


後ろを振り向く、周りの人も無事。


「何で弾がでねぇんだよ〜!!!!」


私は男に向かってぶつかっていった。あんなに足が遅いんだ。力だってない。

男は私の体当たりを受けて倒れた。


パン!


手を叩く音。その音と同時に男は動きを止め、

周りの人の悲鳴は止んだ。


「ふ〜・・・まったく、やっぱりしでかしてくれましたね〜♪

まったく美紀さんは予想を裏切らない・・・。」


「え?」


「こうしてくると思ったんですよね。

まぁ、うまくいってよかったです。」


「え?何が?いや、全然状況が掴めないんだけど・・・。」


「昨日の夜、色々と頑張ったんです。

男の銃がモデルガンになるように♪

これで誰も死なない、万々歳じゃないですか?」


「は?だって、さっき運命がどうって・・・」


「・・・私を誰だと思っているのですか?運命を曲げるくらい簡単ですよ?」

そういって昇は笑った。


「これでもうここは大丈夫です♪

私はもう、帰っていいんですよね?」


寝るときの心、読まれてたんだ。


「うん。・・・・・・ありがとう♪」


「では、失礼しました〜。」


パンッ!


手を叩くと同時に昇は消え、時間が動き出した。


私が押さえつけているのに乗じ、

並んでいた男達が犯人を完全に押さえ込み、

無事事なきを得た。


男も結局何もしなかったから、軽い罪で済んだらしい。



これで・・・何もかも元通りなんだ。


私は相変わらず不幸なままだけど、

ものは思いよう。今の私は色んなものに幸せを見出せる。

それは、1回別の世界で死んだからこそのこと。


昇には感謝しなきゃいけない。

私に間違って不幸の気を多く入れてしまったことも。

だって、普通の人ならわからないよね?

生きてること自体の幸せって。


「ですね。」


「って、昇?!何でいるの?!」


「え、いや、えっとですねー。

クビになっちゃいました★テヘッ!」

「や、テヘじゃないでしょ!?何で!?」


「いや、まぁ、いいじゃないですか。過ぎたことは。」


そういえば昇は言っていた。

「運命を変えることこそ罪」・・・って。

私のせいなんじゃん、クビになったのって。

気なんて・・・使わなくていいのにね♪


「これからどうするの?」

「どうしたらいいと思います?」

昇は笑顔で聞いてきた。

「・・・うちに来る?」

「マジですか?」


「ただし!毎日私にご飯作ってね!」

「それでいいのなら、いくらでも作りますよ?」


別に、私のせいだから来て欲しいってわけじゃない。

ただ・・・ちょっとだけ、

ほんのちょっとだけ、こいつと一緒にいたいって気が起きただけ。


「よし!じゃあ、帰ろっか!!」

「はい!」


私はこれから毎日幸せな日々を送れるみたい。

・・・だって、一食のご飯にだって幸せは篭ってるんだからね!

これで最終話であります。


以上で「パラベル!」は完結ですが、

同じく私の執筆中である、「あおしろ」も

よろしくお願いいたします。


ここまで読んでいただきありがとうございました。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ