第四話:自分の幸せ
パラレルワールドを移動して2日が経った。
昇は仕事があると言って何処かに行った。
明日は遊園地に行く予定。
ピリリッ♪
メールだ。遊園地に一緒にいった友達からだ。
―明日は遊園地だからね!
―時間は8時厳守!遅れたら・・・ふふ・・・
前に送られてきた内容と同じ。
昇は言っていた。
「普通に前と同じ行動をとることを忘れないでください。
不必要なことをすると、運命が大きく悪転するかもしれませんので。」と。
だから私は明日8時に遅れていかなければならない。
散々怒られるのは分かっているのに。
遅れた罰ゲームがジェットコースターだったんだし。
私は前と同じようにメールを返す。
―了解★!
―絶対遅れないよ!!
絶対遅れるんだけどもね。
「あ、遅れないとその場で死ぬみたいなので気をつけてくださいね?」
昇の声。
もう、驚けなくなってしまった。
「遅れないだけで?」
「それが、遅れずに集合場所に行くと、
あなたの頭上に飛行機の小さな破片が物凄いスピードで落ちてきて、
ちょうどど真ん中を貫いて死にます。」
どれだけ運が悪いんだ私は・・・。
「あと、7時50分までにこの家を出ないと無差別強盗殺人で死にます。」
「逆に私すごくない?」
「はい、相当強いです。幸の気が。
美紀さんは幸の気が普通の人の10倍はあるのですよ?これも手違いで。」
「へぇ・・・。」
「・・・ま、不幸の気も普通の100倍あるのですが。
ちなみに幸の気に手違いが生じていなければ、
生まれて30秒で死ぬ予定でした。
ま、ここまで生きてたのも奇跡なんですよね。」
そういって昇は笑った。
いや、笑えないって!
「ほら、そろそろ寝たらいかがですか?」
あ、本当だ、もう10時を過ぎている。
特にやることもないし寝ようか。
「あんたはどうするの?」
「寝顔を観察・・いや、テレビでも見ています。」
「や、帰れよ。」
「そういわずに・・・ぶっちゃけ今日は帰るところがないです。」
「何でだよ。天国にでも行きなよ。」
「天国に行くと通行料取られるので嫌です。どうせここにまた来なきゃいけないのに。」
通行料って・・・そんなのあるんだ。
「じゃあ、分かったよ。適当に見てていいよ。」
「ありがとうございます。お詫びに一緒に寝ます。」
「サラッと今何か変なこと言わなかった?」
「気のせいです。」
・・・やっぱりダメだコイツは。
「おやすみ。」
「はい。」
あぁ、明日が終われば、またこういう風に普通に眠れるのかな?
死と直面したりしない。
普通に暮らす。例えちょっと不幸だっていい。
ただ普通に友達と話して、ただ笑っていられるのなら、
私はそれでいい。
明日が終わったら、もう昇には帰ってもらおう。
別に宝くじを当てなくてもいい、大統領にならなくってもいい、
もちろん世界征服なんてしなくてもいい。
ただ、普通に暮らせればそれが私にとっての幸せなんだ。
幸せは相対的、そんなこと言っていたけれどもそれは違った。
ものは思いよう。
人によって、ものを食べることに幸せを感じることができる人もいれば、
今日を生きることそのものに幸せを感じる人もいる。
私は・・・今まで通りが一番幸せだから。
そんなことを考えながら私は眠りについた。
次回、最終回となります。
非常に短い小説でしたが、
ここまで読んでいただきありがとうございました。