表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
パラベル!  作者: 甘味
3/5

第三話:少しの工夫と大きな変化

「・・・・・・さん・・・・美紀・・さん・・・」


声が聞こえる。

うぉ・・・気持ち悪い・・・。


「大丈夫ですか?」


声の主は昇だった。


「だ・・・大丈夫じゃない・・・。ってか・・・ここ・・・どこ?」


そこは見覚えのないところだった。


「ここは・・・暴力団のアジトです。」



「えぇ?!何で落ち着いてるの?!早く逃げよ」


私が走り去ろうとすると、昇が服を引っ張り引き止めた。


「いいんですか?いや何、ここでは危険な目には遭いませんよ。」


・・・ここではってのが少し引っかかるんだけども・・・。


「さて、とりあえず初めに・・・美紀さん、

あそこに見える車の鍵を抜いてきてください。」


む・・・あ、ホントだ。

黒く光る車にキーがつけっぱなしだった。

アレは・・・暴力団様のお車なのでは?



「大丈夫です。今すぐに行けば。

それとも、3回のチャンスのうち1回を早くも無駄にしたいんですか?」


う・・・行くしかないのか・・・。

せっかくのチャンスなんだもん・・・確実に行かなきゃ・・・


でも怖い〜!!・・・


心を決めて、私がそろそろと行こうとすると、

また昇が私を引きとめた。


「何?」


「これを被ってください。」


黒い・・・顔マスク?

これじゃまるで犯罪者じゃ・・・。


「はい、では行ってきて下さい。」


「う、うん・・・。」


何だろう・・・すごくいやな予感が・・・


車に近づく。

キーを取ればいいだけなんだもんね・・・うん・・・。


キーを抜いた。


「おんどりゃあ!!われぇ?!何さらしてくれてんねん!!?」


・・・え〜・・・・。


予感通りに強面のお兄さん登場。


「あ、え・・・えと・・・。」


もう半泣き状態。涙目で昇のほうを見ると、

口パクで、「走って逃げて!」と、無茶を言うな。


「あ!!アレ!!」


子供でも騙されない古典的なやり方で気をそらし、

私は全力で走った。


後ろから声が聞こえる。

「え?何々?何あんの?・・・っておぉい!お前、待てやごらぁ〜!」


・・・騙しが通じた?


少し離れたか、後ろを振り返る。


・・・遅い・・・この人遅いよ・・・

特に何の部活に所属しているわけでもない、

苦手なことは運動と言える私よりもはるかに遅い。


・・・正直小学生よりも遅いだろう。



私は足を休めずに、何とか・・・と言うか悠々と男を振り切った。



「おぉ〜、お疲れ様でした〜。」


昇の声。いつの間に逃げてたんだこいつ・・・。


「ハァ・・ハァ・・・で・・・このキーを・・・どうするの・・・?」


「え?キーですか?

う〜ん・・・交番にでも届けましょうか?」


「え?このキーをとったことには意味ないの?!」


「あぁ、はい、まぁ、キー自体に特に意味はないです。」


「え〜!?じゃあ、今散々怖い思いしたのは?!」


「いや、それは、少し意味があります。

後でのお楽しみですよ。」


そういって昇は不敵な笑みを見せた。



「さて、次は・・・」


パンパン!


昇が再び手を叩いた。


また景色がゆがむ・・・けど、別にさっきほど気持ち悪くない。

どうでもいいけど、遊園地で友達と乗ったコーヒーカップを思い出した。



「・・・はい、着きました。」


次の瞬間、私はさっきとはまったく違う場所にいた。


「え?」


「あぁ、今のは3回に加算されませんよ。ただの瞬間移動です。天使なら誰でもこの能力を持ってます。」


「へぇ〜・・・、で、今度は何をするの?」


「え〜っとですねぇ〜、・・・これを。」



昇は私の目の前に札束を出して見せた。


「これを持って・・・このお店の中に入りましょう。」


昇が指を刺した先には、いかにも高そうなお店があった。


「ここに?何か食べるの?」


「いえ、少し裏工作を・・・」


そういって昇はニヤリと笑った。・・・何をする気だろう・・・。


私と昇はお店に入った。


「いらっしゃいませ。ようこそおいでくださいました。

予約は取ってありますか?」


丁寧、それでいて威圧感のある声で黒服の店員・・・と言うより、用心棒的な顔つきの男の人は言った。


「いえ。」

昇が答えた。


「当店では、予約のないお客様は一切お断りしているのですが。」


「へぇ・・・では、ほんの気持ちですが・・・。」



そういって、昇は先ほど持っていた札束の一部を用心棒に手渡した。

一部と言っても、数十万単位。


札束を目にした瞬間、用心棒は顔を緩め言った。

「どうぞ、こちらです。」


「いえ、今日は食事目的ではないのです。

今日の7時、こちらのお店によく来ている『組』の予約が入ってますよね?

その予約を取り消していただきたいのです。」


「え?いや、それはいくらなんでも。」


「・・・へぇ〜・・・。」



昇は深くため息をついて、再びお金を取り出した。


「・・・これで、どうかな?」「分かりました。」


用心棒は即答した。お金の力ってすごい・・・。



「さぁ、美紀さん、もう出ましょうか。」


「あ、あぁ、はい。」



店を出ると昇は深くため息をつき言った。


「疲れました〜・・・。交渉って疲れるんですよ?

なめられたらおしまいですからね!

思ったより少なくて済みましたよ、

ま、こんな紙切れどうでもいいんですけどね。」


そういって昇は笑って札を破り捨てて見せた。


「え!?もったいない!!」


「人間、金に操られるようじゃおしまいですよね〜。」

昇はニヤニヤと笑いながら言った。


「う・・・。」

よし、だいぶ前からわかってたけど、こいつ相当意地悪だ。



「さて、やることは一通り終わりましたが、どうしましょうか?

普通に3日過ごしていただくのなら、今この場で、

この世界のあなたではないあなたを、先ほどまでいた世界に送っておきますが。」


「あぁ、うん、そうして。」


パン!


「はいできました。」


早いね。人消すのってこんなに簡単なの?


「ってか・・・あっちの世界に飛んだ私はどうなるの?」


「まぁ、訳も分からぬうちに即死でしょうね。

まぁ、いいじゃないですか、ここにいるあなたとは関係ない。」



まぁ・・・そりゃそうだけどさ・・・



今、もう一人の自分が確実に死んだ、

そう考えると、

何ともいえずいやな気持ちになった。



評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ