蟹と海老
冒険者ギルドは広場の近くにあるため、迷うことなく辿り着いた。
ギルドへ足を踏み入れると、何人か見慣れたお客さんがこっちを見ていた。
「よお! 夕方も楽しみにしてるぜ!」
酒を片手に肉を齧っていた男が声をかけてくれたので、俺も軽く手をあげておく。
「すみません。 ギルドの仕組みはわかりませんが、魔物の素材は買い取っていただけますか?」
カウンター越しに受付さんへ質問する。
「はい、大丈夫ですよ。 冒険者登録はなさいますか?」
「ああいえ、登録はまだ考えていません。 買取だけお願いします」
「わかりました! では、あちらの部屋で見せていただいてもよろしいですか?」
受付さんの問いに頷いて答える。
「それでは行きましょうか」
部屋はなかなか広かったが、少し生臭い。
「匂いがちょっとキツイですが、ちょっとだけ耐えてください」
「素材はここに出せばいいですか?」
「はい、ここに出しちゃってください!」
あ、どうしよう。
仕舞ってある魔物って大体生きてるやつだった…。
「あの、ここで解体するって事でいいんですかね?」
「はい、魔物は大体こちらで解体されますね」
「床に血がどばーってなっても大丈夫ですか?」
「ああ、そんなことですか! 構いませんよ」
よかった、それなら遠慮しないでここで〆よう。
魚の魔物は大きすぎるが
一度海底に潜ったときに、手当たり次第に捕まえた魔物がいたはずだ。
「では早速」
そう言って光る蟹や海老を半分だけ取り出し、真っ二つにする。
血が出るかもしれないとは思ったが、元の世界と同じで血は出なかった。
「これは…。 ジュエルクラブですか!? それにジェードまで!!」
「そんな名前だったんですね…。 海底で遊んだときに捕まえてきたんですが、売れるかわからなかったもので…」
「海底で遊ぶ!? 命をドブに捨てる気ですか!! なにやってるんですか!!!」
めちゃくちゃ怒られた。
「大丈夫ですよ、これでも強力な能力がありますから」
「それでもです! はあ、わかりました…気をつけてくださいね」
「あはは、善処します。 それで、これらの買取は大丈夫ですか?」
「ええ、問題ありません。 ただ、非常に珍しい物ですから…。 代金は明日でも構いませんか?」
明日の予定は特に決まっていないので大丈夫だと伝える。
「あと、お願いがあるのですが…」
「お願いですか?」
「はい、お願いです。 先程聞こえたのですが、広場で美味しい物を売ってると噂の店の方ですよね?」
「俺の店かはわかりませんが…、広場の中心でしたら俺かもしれません」
「ということは! ホットドッグもポップコーンもあなたが?」
「ああ、それなら俺の店で間違いないですよ」
「では改めてお願いです! ホットドッグとポップコーンを売ってください!」
「えーっと…、理由を聞いても?」
「はい、実は…」
単純に仕事の時間帯で買いに出られないとの事だった。
「んー、本当は出来立てが美味しいんですけど…。 それに、受付さんが買いに来れないということは他にも?」
「はい、私を含めて全部で十人くらいいます」
仕方がないか、ここは市販のポップコーンとホットドッグで我慢してもらおう。
「では、夕方の営業が終わったらギルドに持ってきますね」
「ありがとうございます! 遅くなりましたが、二番受付を担当しているフィーラと申します! よろしくお願いします!」
「はい、こちらこそ」




