半額
「こんにちはー」
衛兵さんに声をかけ、男爵様に取り次いでもらう。
暫く待っていると、玄関から男爵様が現れた。
「おお、主か。 娘はしっかり働いておるか?」
「やる気がなさそうにしていたので、少し注意したら泣いて逃げていきましたよ…」
注意したのは少しだから嘘は言ってない。
「なんと、折角の好意を無駄にしてしまって申し訳ない。 これは儂も腹を括らねばならんな…」
「その辺りはそちらの裁量でお願いします。 所詮俺は部外者なので」
「ふむ、それならばしっかりと裁くことを約束しよう。 態々来てもらってすまない」
「いえいえ。 俺もあと数日でここを発とうかと思っていたので、その報告のついでですよ」
「そうか…、また来ることがあれば寄ってくれ。 なにか用意しておこう」
「はい、楽しみにしています。 また出立前に挨拶にお伺いします」
「ああ、待っておるよ」
報告も終わったので、夕方の紙芝居の準備を始める。
量り売りの屋台を準備していると、子供達が集まってきた。
「どうしたんだ? 紙芝居はまだ少し時間が掛かるぞ?」
俺がそう言うと、子供達は首を振った。
「ん? 紙芝居を見に来たんじゃないのか?」
しかし、この問いに対しても首を振る。
どういうことだ?
「あ…あの」
悩んでいると、後ろにいた少し背の高い女の子が口を開いた。
「どうしたんだ? 出来れば教えて欲しいのだが…」
無言で集まられても怖いだけだ。
「あのね、この子達は先にお菓子を売ってほしいんだと思うの。 いつもは紙芝居の後の楽しみなんだけど…」
ふむ、どうしたものか。
紙芝居に飴は付き物だが、大人しく聞いていた子にあげるご褒美の様なものだと思っている。
俺はたいして拘りは無いので、売ってもいいとは思うのだが…。
紙芝居の途中で、カリコリと音を鳴らされるのも嫌なので考えてしまう。
「んー、紙芝居の間は食べないって約束できるか?」
俺の言葉に、今度は子供達が頭を抱える。
「この子達、紙芝居を見ながらお菓子を食べたかったみたいなんです…」
わからなくは無いが…。
「よし、量り売りは今日までにしよう」
子供達が絶望的な顔をする。
「明日からは別のものにするが、そっちもお菓子だから安心しろ。 それに、今日は量り売りの最終日だからな、特別に売ってやるよ。 いつもの半額でな!」
その言葉を聞いた子供達は、目を輝かせて喜んだが
その後ろで保護者達が大はしゃぎしているのを見て、俺は何とも言えない気持ちになった。
甘いものが浸透していないので、わからなくも無いが
子供の手前、少しは落ち着いて欲しいものだ。




