絶望の朝
新しい朝が来た。
絶望の朝だ。
今朝、男爵が宿に訪れて俺に言った。
「出来の悪い娘だが、しばらく預かってくれないか」、と。
そうなのだ、あのバイオレンス娘が戻ってきてしまったのだ。
斬られた方の元帥さんの家からは、悪事の証拠が大量に出てきてしまったため
バイオレンス娘の方は無罪とまではいかないが、かなり減刑されたようだ。
「しかし、なんでまた俺に…」
男爵に問いかけるも
「商売をしている友人がおらんのだ、みな貴族であるからな」、と返されてしまう。
更正させるためにも、娘に世間の厳しさを教えてやってほしいと頼まれてしまった。
世間の厳しさなど、俺は微塵も感じたことがないし
むしろ、俺の商売は比較的楽な部類であると確信している。
それに、仕入れ方法を知られてしまうことが一番怖い。
独自のルートで仕入れているとは言っているが、実際は能力を使っている。
これを知られてしまうと、元の世界の知識や技術
それどころか、重火器なども取り寄せが出来てしまう。
それを売れと脅されたところで、脅威でもなんでもないのだが
それでも、この街は意外と住み心地がいい。
できれば離れたくない。
だから俺はここで言っておく。
「男爵様、失礼ながら俺はあなたの娘を信用できません。 仕入れのルートを知られたくないのでお断りしたいです」
「なっ! 貴様!!」
バイオレンス娘が講義しようとするが、男爵様が下がらせる。
「うむ、そう言うと思っておった。 だが、この馬鹿娘を家から通わせる形にしてはどうだろうか?」
なるほど、完全に放任するわけではなく
バイオレンス娘の手綱をとりながら、毎日の変化を見て行くつもりなのであろう。
「わかりました、それならば引き受けましょう。 しかし、手をあげられそうになった場合には相応の処置をさせて頂きます」
「むう、まあ仕方がないのう。 主とバカ娘を見ていると実際に事が起きそうで恐ろしいが…」
それはそうだ。
無関係であるはずの人間に傷をつけようとしたのだから信用できるはずがない。
逆恨みもしてくるしね!!
「当然のことですが、そこのバイオレンス娘がちょっかいを出してきた場合は男爵様との縁もおしまいとしますので、注意しておいてくださいね」
在庫をどうこうする心配が今はないため、男爵様との関係は一方的なものになっている。
このお願いもそうだが、このバイオレンス娘が何かをした場合
俺はちょっとしたことでも許すつもりはない。
一方的に切りかかってきたのは向こうで、謝罪も受けていないのだから当然だ。
男爵様は顔を青くし、バイオレンス娘は何かを呟いて死んだ目をしている。
俺は悪くない!
悪くないぞ!!




