お金
「そんな所で何をしているのですか?」
水面に浮いていることをスルーして投げかけられた言葉なので、少し驚いてしまった。
「魚を釣っているんだ」
「魚を釣る…ですか? 釣るってなんですか?」
魚を釣っている人を見かけないと思っていたら、魚釣りというものが存在していないらしい。
「漁の一種だな。 細い紐に針と餌をつけて、ほら。 こうやって釣るんだ」
「へー、面白そうですね。 僕でも出来ますか?」
「道具があれば出来るんじゃないか?」
入手は無理だろうけど…。
「ふむ、その道具を売ってもらうことはできますか?」
俺に売ってもらおうってか、なるほど。
「売ってもいいが、あまり数がないからな。 高くなってしまうが大丈夫か?」
「ええ、多少高いぐらいならば大丈夫です」
見た目は細めの青年だが、いい所の子息か何かなのだろか…。
「この釣具一式で金貨二枚だ」
取寄せ価格は九百八十円だがな。
「なんだ、思っていたよりも安いですね」
安いのか?
「餌はその辺の虫でも捕まえて針に刺すだけだ。 簡単だろ?」
ふむ、と青年は少し考えてから
「その虫はいくらで売っていただけますか?」
と、ゴカイの入っている木の入れ物を指差した。
「これが欲しいのか? そうだな、高いものでもないしサービスしといてやるよ」
「わー! ありがとうございます! それと、僕もあそこまで行くことは出来ますか?」
随分と図々しい奴だな。
だが、ポチと喋りながら釣りをしているだけなので、大して困ることもない。
「まあ、来れるだろうな。 一緒に釣りでもするか?」
「はい! 有難うございます!」
それから青年と少し話したのだが、彼は貧乏貴族の子息だった。
しかし、財政をひっくり返すような大きな問題を凌ぎきり
破産ギリギリの状態から富裕層へと戻ることが出来たのだとか。
それでも、貧乏時代に育った彼は贅沢になれることが出来ずにいた。
それを見かねた父親から、金貨をやるから使い方を覚えて来いといわれたらしい。
その金貨の使い道を考えていたら、水面で何かをしている人がいたのだから興味も出てくる。
そうして、話しかければお金を使うことが出来る相手と気付いてしまった。
わたりに船とはこのことだ。
青年は、一も二もなく飛びついた。
青年にしては珍しい、興味を引くような物が
自分の買える範疇の値段を表示されたのだから、即断で購入してしまった。
釣りをしていた男の横には、小型の小さな犬がおり
その横のタライの中には、小ぶりの魚が泳いでいるのだった。
青年は考える。
どうすれば、もっとお金を使わせてくれるのかと…。




